[PM-2-1] MTDLPを活用した包括的なアプローチで職場復帰を果たした事例
ADOC2での合意目標の設定
【はじめに】
今回,急性硬膜外血腫と下肢の多発骨折により回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)に入院をした40歳代男性(以下,症例)を担当した.症例は下肢の関節可動域制限や筋力の低下,軽度の失語症を呈していた.病前,単身赴任で自衛隊のパイロットと教官として勤務しており,入院時より復職に対して強い希望が聞かれていた.今回,生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)と作業選択意思決定支援ソフト(以下,ADOC2)を導入し,「配置転換し,家族と同居のもと復職をする」と合意目標を立て介入を行なった.早期から目標を共有し復職プログラムを行ったことで復職に繋がったため,考察を加え以下に報告する.尚,今回の発表は本人と家族から同意を得ている.
【事例紹介】
現病歴はY日に歩行中,自動車と接触し急性期病院へ緊急搬送.急性硬膜下血腫に対して開頭血腫除去術を施行.また右脛骨顆間隆起骨折,右足関節内果骨折,右脛骨高原骨折が認められ,脛骨高原骨折と右足関節内果骨折にORIF施行された.Y+40日(以下,X日)にリハビリテーション(以下,リハ)目的で回リハ病棟へ入院となる.入院時,日常生活動作(以下,ADL)は軽介助を要していた.家族構成は妻と子供3人がおり,単身赴任のため別居となっていた.
【初期評価】
X~7日に初期評価を実施.ROM-T(R/L):膝関節屈曲75°/130°足関節背屈0°/20°,MMT(R/L):下肢3/5,FBS:16点,FIM:70/126点(下衣更衣4点,移動1点,表出3点),MMSE:27/30点,SLTA:語の列挙,書く項目にて減点,FAB:12/18点,類似性の理解,語の流暢性にて減点,MTDLP:満足度1実行度1.
【経過】
X日にADOC2を使用して家族同席の元,目標設定を行った.ADOC2にて「復職」が症例にとって一番優先順位が高い項目となった.その後,MTDLPを使用し「配置転換し,家族と同居のもと復職」の合意目標を立てた.X+2~18日の間にADLの自立とコミュニケーションを円滑にとるのを目的に,基本的プログラムとして関節可動域訓練や筋力訓練,言語機能訓練,応用的プログラムとしてADL訓練を実施.X+19日にADLが自立となった.その後は社会適応プログラムとして,屋外歩行訓練や公共交通機関訓練を実施する.X+81日に職場面談を実施し,失語症による問題点の共有をする.また,事務職への配置転換と自宅から通勤できる職場への転勤を提案する.X+82日から幕張式ワークサンプル(以下,MWS)のOAワークでのPC操作訓練,配属先候補への通勤訓練,職場で行う書類作成の模擬練習を実施.Y+113日に自宅退院.Y+116日から外来リハビリテーションに通院.Y+216日に復職となる.
【最終評価】
X+100~110日に最終評価を実施.ROM-T(R/L):膝関節屈曲130°/130°足関節背屈20°/20°,MMT(R/L):下肢5/5 FBS :56点,FIM:123/126点,MMSE:30/30点,SLTA:書く項目で減点があるも改善が認められる.FAB:18/18, MTDLP:満足度8実行度5.
【考察】
先行研究によると,復職を促進する要因としてホワイトカラーの職種であることや,セルフケアや歩行が自立していること,家族や同僚の支援が重要であることが報告されている.入院時より,早期にADLが獲得できたことや,職場面談で事務職への配置転換と自宅から通える職場への転勤を提案し,家族の支援が受けられる環境下になったことが復職に繋がった要因として考えられる.今回症例を通して,回リハ病棟でのMTDLPを用いた包括的なアプローチや復職に向けてMWSのOAワークが事務職への復職準備に有効であったことが示唆された.
今回,急性硬膜外血腫と下肢の多発骨折により回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)に入院をした40歳代男性(以下,症例)を担当した.症例は下肢の関節可動域制限や筋力の低下,軽度の失語症を呈していた.病前,単身赴任で自衛隊のパイロットと教官として勤務しており,入院時より復職に対して強い希望が聞かれていた.今回,生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)と作業選択意思決定支援ソフト(以下,ADOC2)を導入し,「配置転換し,家族と同居のもと復職をする」と合意目標を立て介入を行なった.早期から目標を共有し復職プログラムを行ったことで復職に繋がったため,考察を加え以下に報告する.尚,今回の発表は本人と家族から同意を得ている.
【事例紹介】
現病歴はY日に歩行中,自動車と接触し急性期病院へ緊急搬送.急性硬膜下血腫に対して開頭血腫除去術を施行.また右脛骨顆間隆起骨折,右足関節内果骨折,右脛骨高原骨折が認められ,脛骨高原骨折と右足関節内果骨折にORIF施行された.Y+40日(以下,X日)にリハビリテーション(以下,リハ)目的で回リハ病棟へ入院となる.入院時,日常生活動作(以下,ADL)は軽介助を要していた.家族構成は妻と子供3人がおり,単身赴任のため別居となっていた.
【初期評価】
X~7日に初期評価を実施.ROM-T(R/L):膝関節屈曲75°/130°足関節背屈0°/20°,MMT(R/L):下肢3/5,FBS:16点,FIM:70/126点(下衣更衣4点,移動1点,表出3点),MMSE:27/30点,SLTA:語の列挙,書く項目にて減点,FAB:12/18点,類似性の理解,語の流暢性にて減点,MTDLP:満足度1実行度1.
【経過】
X日にADOC2を使用して家族同席の元,目標設定を行った.ADOC2にて「復職」が症例にとって一番優先順位が高い項目となった.その後,MTDLPを使用し「配置転換し,家族と同居のもと復職」の合意目標を立てた.X+2~18日の間にADLの自立とコミュニケーションを円滑にとるのを目的に,基本的プログラムとして関節可動域訓練や筋力訓練,言語機能訓練,応用的プログラムとしてADL訓練を実施.X+19日にADLが自立となった.その後は社会適応プログラムとして,屋外歩行訓練や公共交通機関訓練を実施する.X+81日に職場面談を実施し,失語症による問題点の共有をする.また,事務職への配置転換と自宅から通勤できる職場への転勤を提案する.X+82日から幕張式ワークサンプル(以下,MWS)のOAワークでのPC操作訓練,配属先候補への通勤訓練,職場で行う書類作成の模擬練習を実施.Y+113日に自宅退院.Y+116日から外来リハビリテーションに通院.Y+216日に復職となる.
【最終評価】
X+100~110日に最終評価を実施.ROM-T(R/L):膝関節屈曲130°/130°足関節背屈20°/20°,MMT(R/L):下肢5/5 FBS :56点,FIM:123/126点,MMSE:30/30点,SLTA:書く項目で減点があるも改善が認められる.FAB:18/18, MTDLP:満足度8実行度5.
【考察】
先行研究によると,復職を促進する要因としてホワイトカラーの職種であることや,セルフケアや歩行が自立していること,家族や同僚の支援が重要であることが報告されている.入院時より,早期にADLが獲得できたことや,職場面談で事務職への配置転換と自宅から通える職場への転勤を提案し,家族の支援が受けられる環境下になったことが復職に繋がった要因として考えられる.今回症例を通して,回リハ病棟でのMTDLPを用いた包括的なアプローチや復職に向けてMWSのOAワークが事務職への復職準備に有効であったことが示唆された.