[PM-3-1] 役割・余暇の再開に対するMTDLP実践により脳卒中後うつが改善した事例
生活行為向上リハビリテーション実施加算の併用
<序論>脳卒中後うつ(以下,PSD)について,脳卒中治療ガイドライン2021では余暇活動への参加について推奨文が追加された.また,通所リハでは,余暇活動を含む生活行為の向上に焦点を当てた指導等行う生活行為向上リハビリテーション実施加算(以下,生活行為加算)があるが,算定率は極めて少ない.
<目的>今回,通所リハでPSDを呈する利用者に生活行為加算を活用し,役割・余暇の再開を目的としたMTDLP実践の結果,家庭菜園の再開とともにPSDが改善したため報告する. 尚,発表にあたり本人の同意とともに,当院倫理委員会の承認を得ている.
<事例紹介>70歳代前半男性,要介護2,主病名はラクナ梗塞である.生活歴は病前まで施設長とし住み込みで住宅型有料老人ホーム(以下,ホーム)に勤務し,経営の傍ら入居者と将棋の対局や家庭菜園等を担っていた.現病歴は,X年Y月Z日に発症後に回復期病棟を経て,注意障害と脳卒中後うつ症状を呈したが,独歩での入浴以外のADLが自立し,施設長を務めたホームに退院となった.退院直後より,施設内入浴の自立と抑うつに対する行動療法を目的とした通所リハが開始となった.A氏は失職による失望感があり,ホーム職員もA氏との関わりに戸惑い,ADLは過介助であった.そのためADL自立や役割・余暇の再開による抑うつの軽減を目的にMTDLPを導入し,生活行為加算を活用した訪問指導を頻回に行った.
<作業療法評価>生活行為目標は,「家庭菜園と犬の世話を再開し,ホーム職員や入居者と交流したい」が挙がった.心身機能面の強みは知的機能や病識,上肢機能が良好,阻害因子は移動の持久力低下や注意障害,抑うつ(JSS-DE:2.6)を認めた.活動・参加の強みは入浴以外のADLが独歩で自立,阻害因子は浴槽台がない環境での入浴に見守りを要し,階段昇降が不安定であった. 環境因子の強みは,ホーム内に手すりが完備され,洗濯や食事は施設サービスを受けていた.阻害因子はホーム職員や入居者との交流の減少や入浴の環境不備と過介助,畑が休耕地である事が挙がった.これらより,ホーム職員を交えたリハ会議において, 3ヵ月後の合意目標を「ホーム内庭の手入れをホーム職員の監視下で行う」とし,遂行度と満足度は共に1であった.
<作業療法実施計画>基本的訓練は,通所リハにてNsによる血圧等の管理を受けながら筋力体操等の自主訓練を行う,ホーム職員とは連絡ノートで生活状況等を共有する.抑うつに対しては定期受診にて主治医が面談を行い,通所リハではOTと介護士でレクを実施.応用的訓練では,通所リハにて園芸をOTや介護士と行う.社会適応訓練は,A氏とホーム職員に対して入浴や庭管理の再開に先立ち訪問指導を実施する.
<結果>合意目標は期間内に達成され,自己評価は実行度9,満足度7に上昇した.訪問指導は計6回実施し,ホーム内での入浴や階段昇降は自立,BI:100点,FIM:123点へ改善し,入居者との将棋対局等の役割再開への波及とともに,ホーム職員や入居者との交流も増加した.屋外散歩や食膳の準備・片づけを担い,抑うつ(JSS-DE:1.2)やFAI,老研式活動能力指標も改善した.
<考察>生活行為加算による積極的な訪問指導がA氏とホーム職員の思い描くゴールのギャップを埋め,目標達成に至った.長谷川らは「役割の再獲得を通して自己有能感を獲得し,病人役割の生活から脱して習慣や役割への参加に対する動機づけや意志を取り戻す」と述べ,MTDLPを用いた役割の再開はPSDの改善に寄与したと考える.
<目的>今回,通所リハでPSDを呈する利用者に生活行為加算を活用し,役割・余暇の再開を目的としたMTDLP実践の結果,家庭菜園の再開とともにPSDが改善したため報告する. 尚,発表にあたり本人の同意とともに,当院倫理委員会の承認を得ている.
<事例紹介>70歳代前半男性,要介護2,主病名はラクナ梗塞である.生活歴は病前まで施設長とし住み込みで住宅型有料老人ホーム(以下,ホーム)に勤務し,経営の傍ら入居者と将棋の対局や家庭菜園等を担っていた.現病歴は,X年Y月Z日に発症後に回復期病棟を経て,注意障害と脳卒中後うつ症状を呈したが,独歩での入浴以外のADLが自立し,施設長を務めたホームに退院となった.退院直後より,施設内入浴の自立と抑うつに対する行動療法を目的とした通所リハが開始となった.A氏は失職による失望感があり,ホーム職員もA氏との関わりに戸惑い,ADLは過介助であった.そのためADL自立や役割・余暇の再開による抑うつの軽減を目的にMTDLPを導入し,生活行為加算を活用した訪問指導を頻回に行った.
<作業療法評価>生活行為目標は,「家庭菜園と犬の世話を再開し,ホーム職員や入居者と交流したい」が挙がった.心身機能面の強みは知的機能や病識,上肢機能が良好,阻害因子は移動の持久力低下や注意障害,抑うつ(JSS-DE:2.6)を認めた.活動・参加の強みは入浴以外のADLが独歩で自立,阻害因子は浴槽台がない環境での入浴に見守りを要し,階段昇降が不安定であった. 環境因子の強みは,ホーム内に手すりが完備され,洗濯や食事は施設サービスを受けていた.阻害因子はホーム職員や入居者との交流の減少や入浴の環境不備と過介助,畑が休耕地である事が挙がった.これらより,ホーム職員を交えたリハ会議において, 3ヵ月後の合意目標を「ホーム内庭の手入れをホーム職員の監視下で行う」とし,遂行度と満足度は共に1であった.
<作業療法実施計画>基本的訓練は,通所リハにてNsによる血圧等の管理を受けながら筋力体操等の自主訓練を行う,ホーム職員とは連絡ノートで生活状況等を共有する.抑うつに対しては定期受診にて主治医が面談を行い,通所リハではOTと介護士でレクを実施.応用的訓練では,通所リハにて園芸をOTや介護士と行う.社会適応訓練は,A氏とホーム職員に対して入浴や庭管理の再開に先立ち訪問指導を実施する.
<結果>合意目標は期間内に達成され,自己評価は実行度9,満足度7に上昇した.訪問指導は計6回実施し,ホーム内での入浴や階段昇降は自立,BI:100点,FIM:123点へ改善し,入居者との将棋対局等の役割再開への波及とともに,ホーム職員や入居者との交流も増加した.屋外散歩や食膳の準備・片づけを担い,抑うつ(JSS-DE:1.2)やFAI,老研式活動能力指標も改善した.
<考察>生活行為加算による積極的な訪問指導がA氏とホーム職員の思い描くゴールのギャップを埋め,目標達成に至った.長谷川らは「役割の再獲得を通して自己有能感を獲得し,病人役割の生活から脱して習慣や役割への参加に対する動機づけや意志を取り戻す」と述べ,MTDLPを用いた役割の再開はPSDの改善に寄与したと考える.