[PM-4-1] 両側肘部骨折を呈した女性にMTDLPを活用し,役割である家事と畑を再開できた一例
【はじめに】今回,両側肘部骨折を呈した女性を担当した.外来リハビリテーション(以下外来リハ)にて,生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)を活用し,本人,家族と共有した.その結果,役割である家事と畑の管理を再開することができたので報告する.本報告に際し,本人から同意を得ている.
【症例】70歳代女性,夫と娘夫婦と同居.受傷前は家事と敷地内の畑の管理を担い,近隣の友人と家を往来するなど活動的であった.X日に敷地内で転倒,A病院を受診し,右肘頭骨折(X+8日骨接合術),左橈骨頭骨折(X+28日までギプス固定)と診断.X+11日に退院し,X+14日に外来リハを開始.受傷後,本人,家族は過用により回復が遅延すると捉え,家族は介助的で,本人も家事や畑に関わらず,自宅内で過ごすなど不活発な生活に繋がる懸念があった.X+28日に生活行為に意識を向けるためにMTDLPを導入した.
【作業療法評価】右肘関節屈曲125°,伸展-15°,左肘関節屈曲115°,伸展-25°,左前腕回内70°,握力は右15㎏,左7㎏,NRSは安静時2,動作時5.Quick DASH:機能障害68.2点,仕事93.8点であった.FIM運動項目:72/91点で屋内歩行自立であるが,階段は最大介助で更衣,清拭は軽介助であった.本人との面談にて①「家事」と②「畑の管理」の希望を聴取した.本人,家族ともに過用への不安があったが,適切な両肘の管理と動作指導を行うことで達成可能と予測した.聴取した①,②を合意目標とし,自己評価は①で実行度1,満足度1,②で実行度1,満足度2であった.
【介入と経過】機能訓練に併せ,両肘の管理方法と動作の指導を行い,家族の協力の下で実践可能な生活行為から再開することとした.家事は洗濯干しや包丁操作の練習を実施.畑は収穫方法や運搬動作を指導し,重作業は夫へ指導するなど役割の転換を図ることを提案した.これらを本人,家族と共有した.開始時には不安があったが,X+30日に食器洗いや洗濯干しを実践し,「思っていた以上にできたので自信がついた」と発言あり,畑も夫への指導を開始した.X+42日,野菜を切ることができ,畑では収穫と運搬が行えた.X+51日,訓練にて調理動作を実施し,安全に行えることを確認した.畑は夫への指導と収穫,水やりにて積極的に関われた.また畑を介して近隣の友人と会話をする機会ができた.本人は「日々の生活が充実してきた」と喜ばれ,夫や娘も改善していく本人の姿に安心された.
【結果】右肘関節屈曲135°,伸展-10°,左側は制限なし.握力は右21㎏,左18㎏,NRS:安静時0,動作時1,Quick DASH:機能障害 15.9点,仕事25点に改善,FIM運動項目:87/91点となった.目標①は連日,炊事と洗濯が行えるようになり,実行度8,満足度9.目標②は鍬等の重作業は夫が担ったが,苗植えや水やり,草取りが日常的に行え,実行度6,満足度7となった.また近隣の友人宅へお茶飲みに行けるようになった.以降,積雪期のため,指導を行い,外来リハは休止.X+186日の再評価で目標①と②は自立し,受傷前の生活を過ごせるようになったことを確認した.
【考察】MTDLPの活用にて役割であった「家事」と「畑の管理」という生活行為に意識を向けることができた.また両肘の管理方法や安全な動作の指導と併せ,実践可能な生活行為を本人,家族と共有することで段階的かつ効率的に支援を展開できた.生活行為を日々継続することで,自信や能動的な姿勢へと繋がり,着実に目標への到達を進める要因となったと考える.結果,「炊事」と「畑の管理」を再開でき,さらには友人との交流へと波及し,従来の活動的な生活へ回帰できたものと考える.
【症例】70歳代女性,夫と娘夫婦と同居.受傷前は家事と敷地内の畑の管理を担い,近隣の友人と家を往来するなど活動的であった.X日に敷地内で転倒,A病院を受診し,右肘頭骨折(X+8日骨接合術),左橈骨頭骨折(X+28日までギプス固定)と診断.X+11日に退院し,X+14日に外来リハを開始.受傷後,本人,家族は過用により回復が遅延すると捉え,家族は介助的で,本人も家事や畑に関わらず,自宅内で過ごすなど不活発な生活に繋がる懸念があった.X+28日に生活行為に意識を向けるためにMTDLPを導入した.
【作業療法評価】右肘関節屈曲125°,伸展-15°,左肘関節屈曲115°,伸展-25°,左前腕回内70°,握力は右15㎏,左7㎏,NRSは安静時2,動作時5.Quick DASH:機能障害68.2点,仕事93.8点であった.FIM運動項目:72/91点で屋内歩行自立であるが,階段は最大介助で更衣,清拭は軽介助であった.本人との面談にて①「家事」と②「畑の管理」の希望を聴取した.本人,家族ともに過用への不安があったが,適切な両肘の管理と動作指導を行うことで達成可能と予測した.聴取した①,②を合意目標とし,自己評価は①で実行度1,満足度1,②で実行度1,満足度2であった.
【介入と経過】機能訓練に併せ,両肘の管理方法と動作の指導を行い,家族の協力の下で実践可能な生活行為から再開することとした.家事は洗濯干しや包丁操作の練習を実施.畑は収穫方法や運搬動作を指導し,重作業は夫へ指導するなど役割の転換を図ることを提案した.これらを本人,家族と共有した.開始時には不安があったが,X+30日に食器洗いや洗濯干しを実践し,「思っていた以上にできたので自信がついた」と発言あり,畑も夫への指導を開始した.X+42日,野菜を切ることができ,畑では収穫と運搬が行えた.X+51日,訓練にて調理動作を実施し,安全に行えることを確認した.畑は夫への指導と収穫,水やりにて積極的に関われた.また畑を介して近隣の友人と会話をする機会ができた.本人は「日々の生活が充実してきた」と喜ばれ,夫や娘も改善していく本人の姿に安心された.
【結果】右肘関節屈曲135°,伸展-10°,左側は制限なし.握力は右21㎏,左18㎏,NRS:安静時0,動作時1,Quick DASH:機能障害 15.9点,仕事25点に改善,FIM運動項目:87/91点となった.目標①は連日,炊事と洗濯が行えるようになり,実行度8,満足度9.目標②は鍬等の重作業は夫が担ったが,苗植えや水やり,草取りが日常的に行え,実行度6,満足度7となった.また近隣の友人宅へお茶飲みに行けるようになった.以降,積雪期のため,指導を行い,外来リハは休止.X+186日の再評価で目標①と②は自立し,受傷前の生活を過ごせるようになったことを確認した.
【考察】MTDLPの活用にて役割であった「家事」と「畑の管理」という生活行為に意識を向けることができた.また両肘の管理方法や安全な動作の指導と併せ,実践可能な生活行為を本人,家族と共有することで段階的かつ効率的に支援を展開できた.生活行為を日々継続することで,自信や能動的な姿勢へと繋がり,着実に目標への到達を進める要因となったと考える.結果,「炊事」と「畑の管理」を再開でき,さらには友人との交流へと波及し,従来の活動的な生活へ回帰できたものと考える.