[PM-4-3] MTDLPを用いた多職種連携による運転支援
トラック配送業を再開できた症例
【はじめに】トラック配送業の復職を希望するA氏にMTDLPを用いた多職種での運転支援を行った結果,復職に至ったため報告する.なお,本報告に対し同意は得ている.
【事例紹介】50歳代男性. X年Y月Z日に左脳梗塞を発症し,Z +17日に当院回復期リハビリテーション病棟に入院した.病前は妻と2人暮らしで仕事はトラックで配送業. 主な業務内容は発注や荷物の積み下ろし(10kg程度の物)と配送(最大で100km先).復職の希望が強かったため,多職種での目標の共有と役割の明確化を図る目的で当院入院時からMTDLPを用いた介入を行った.
【作業療法評価(Z+19〜25日の評価)】初回評価では,右上下肢Br.stageⅥ,BBS52点,MMSE25点,TMT-Aが47秒,Bが84秒,SDSAは合格,FIMは111点.失語症による吃音があった.HONDAセーフティナビ(以下DS)では視野課題複雑・曲線路にて左に4箇所の速度遅延・見落としがあり,左車線へのはみ出しが見られた.また総合学習体験では,事故・ヒヤリハットが2回見られた.職業関連動作は5〜10kgの物の積み下ろし動作で後方へのふらつきがあった.退院後に関してはA氏と妻から復職の希望も聞かれ,A氏の職場も復職に協力的だった.また2ヶ月で自動車運転再開は可能と思われたが,復職に向けた身体機能や高次脳機能の獲得もふまえると,復職まで5ヶ月の期間が必要と考えた.そこで約2ヶ月の介入で自動車運転を再開し,その後A氏の状態に合わせて仕事量を調整した上で「5ヶ月後にトラックの運転や配送作業ができるようになる」を合意目標とし,カンファレンスやICで多職種や本人,家族と共有した (実行度1点,満足度1点).
【作業療法実施計画】基本的プログラムはPTが身体機能,OT・STが高次脳機能に対して介入.応用的プログラムはOTがADL訓練や運転技能訓練, PT・STが職業関連動作訓練を実施.社会適応プログラムは自動車学校と連携し,運転再開(トラック)に向けた実車評価を行う.また職場と連携し,A氏の身体状況に合わせた仕事内容の調整を行うこととした.
【介入経過】Z+19〜67日:OTでは運転技能訓練を実施.当初はDSにて危険を予測できずに衝突しそうになる場面もあったが徐々に改善した.また,PTの介入により荷物を積み下ろす動作のふらつきがなくなり, STの介入により吃音に改善が見られた.
Z+68〜80日:介入1ヶ月半ごろに自動車学校と連携し,実車評価を実施した.トラックの乗り降りや運転行動には問題なかったが30分ほどの運転で疲労感が見られ,徐々に他の車への注意が疎かになる場面が見られた.そこで後日,運転計画を立てる課題の中で30分毎の休憩地点をA氏と共有した.
【結果(退院時(Z+81〜90日)の評価)】BBS56点, TMT-Bが64秒,FIMは125点となり,吃音は改善した.DS評価は速度遅延・見落としはなく,左車線へのはみ出しも改善された.また,事故・ヒヤリハットが0回となった.荷物の積み下ろし動作もふらつきなく可能となった.Z+91日の退院時ICで主治医からA氏,妻,職場に対し,運転30分毎に休憩することと,業務量の調整について説明があった.
退院3ヶ月後(Z+172日)の電話での調査では運転を再開し,危ない場面や事故等はなく,仕事では倉庫整理などから始め,現在は30〜40分毎に休憩しつつ配送を行っているとのことだった (実行度10点,満足度10点) . A氏からは「長く運転できるようになれば,娘のところにも行きたい(150km先)」と希望が聞かれた.
【考察】自動車運転は移動手段であり,その先の「やりたい作業」を含め,身体機能や高次脳機能,運転技能などの総合的な評価・介入が必要である.それゆえにMTDLPを用いた多職種連携が有効であると考える.本症例も運転技能以外の課題もあったが,MTDLPを用いて役割の明確化を行った事が復職に繋がったと考える.
【事例紹介】50歳代男性. X年Y月Z日に左脳梗塞を発症し,Z +17日に当院回復期リハビリテーション病棟に入院した.病前は妻と2人暮らしで仕事はトラックで配送業. 主な業務内容は発注や荷物の積み下ろし(10kg程度の物)と配送(最大で100km先).復職の希望が強かったため,多職種での目標の共有と役割の明確化を図る目的で当院入院時からMTDLPを用いた介入を行った.
【作業療法評価(Z+19〜25日の評価)】初回評価では,右上下肢Br.stageⅥ,BBS52点,MMSE25点,TMT-Aが47秒,Bが84秒,SDSAは合格,FIMは111点.失語症による吃音があった.HONDAセーフティナビ(以下DS)では視野課題複雑・曲線路にて左に4箇所の速度遅延・見落としがあり,左車線へのはみ出しが見られた.また総合学習体験では,事故・ヒヤリハットが2回見られた.職業関連動作は5〜10kgの物の積み下ろし動作で後方へのふらつきがあった.退院後に関してはA氏と妻から復職の希望も聞かれ,A氏の職場も復職に協力的だった.また2ヶ月で自動車運転再開は可能と思われたが,復職に向けた身体機能や高次脳機能の獲得もふまえると,復職まで5ヶ月の期間が必要と考えた.そこで約2ヶ月の介入で自動車運転を再開し,その後A氏の状態に合わせて仕事量を調整した上で「5ヶ月後にトラックの運転や配送作業ができるようになる」を合意目標とし,カンファレンスやICで多職種や本人,家族と共有した (実行度1点,満足度1点).
【作業療法実施計画】基本的プログラムはPTが身体機能,OT・STが高次脳機能に対して介入.応用的プログラムはOTがADL訓練や運転技能訓練, PT・STが職業関連動作訓練を実施.社会適応プログラムは自動車学校と連携し,運転再開(トラック)に向けた実車評価を行う.また職場と連携し,A氏の身体状況に合わせた仕事内容の調整を行うこととした.
【介入経過】Z+19〜67日:OTでは運転技能訓練を実施.当初はDSにて危険を予測できずに衝突しそうになる場面もあったが徐々に改善した.また,PTの介入により荷物を積み下ろす動作のふらつきがなくなり, STの介入により吃音に改善が見られた.
Z+68〜80日:介入1ヶ月半ごろに自動車学校と連携し,実車評価を実施した.トラックの乗り降りや運転行動には問題なかったが30分ほどの運転で疲労感が見られ,徐々に他の車への注意が疎かになる場面が見られた.そこで後日,運転計画を立てる課題の中で30分毎の休憩地点をA氏と共有した.
【結果(退院時(Z+81〜90日)の評価)】BBS56点, TMT-Bが64秒,FIMは125点となり,吃音は改善した.DS評価は速度遅延・見落としはなく,左車線へのはみ出しも改善された.また,事故・ヒヤリハットが0回となった.荷物の積み下ろし動作もふらつきなく可能となった.Z+91日の退院時ICで主治医からA氏,妻,職場に対し,運転30分毎に休憩することと,業務量の調整について説明があった.
退院3ヶ月後(Z+172日)の電話での調査では運転を再開し,危ない場面や事故等はなく,仕事では倉庫整理などから始め,現在は30〜40分毎に休憩しつつ配送を行っているとのことだった (実行度10点,満足度10点) . A氏からは「長く運転できるようになれば,娘のところにも行きたい(150km先)」と希望が聞かれた.
【考察】自動車運転は移動手段であり,その先の「やりたい作業」を含め,身体機能や高次脳機能,運転技能などの総合的な評価・介入が必要である.それゆえにMTDLPを用いた多職種連携が有効であると考える.本症例も運転技能以外の課題もあったが,MTDLPを用いて役割の明確化を行った事が復職に繋がったと考える.