[PM-5-1] 回復期退院後の独居生活に再開に向けた,高齢女性に対する作業療法
生活行為向上マネジメントツールを活用した介入
【はじめに】坂上真理(2015)は『作業は場所(place)の中で行われ,その場から大きな影響を受けている.場所は時間的な側面とともに,作業の成り立ちに関わる重要な特性である』と述べている.今回,回復期リハビリテーション病棟(以下:回復期)に入院し一人暮らしの再開が課題となったA氏に対し,作業療法介入を行った.心負荷に配慮した活動や適切な食事を用意することが困難であったA氏に生活行為向上マネジメントツール(以下:MTDLP)が有用であり,今後の介入の一助となると考え以下に報告する.尚,報告に際し当院倫理委員会の承認を受け,十分説明し書面にて本人の同意を得た.
【事例紹介】80代女性,一人暮らしで徒歩20分程度のスーパーや最寄駅まで頻繁に出掛け電車を利用した外出もしていた.夫とは20年以上前に離婚し,生活保護を受給していた.隣区に住む娘は自営業で,多忙のため支援は薄かった.心疾患の既往あり.新型コロナウイルス罹患後に増悪し,体動困難となったため,急性期病院入院となる.その後自宅退院に向けてB病院へ回復期転院となった.
【経過】生活状況の評価や耐久性向上に向けて関わった時期:耐久性の低下が課題であったため,軽運動や歩行訓練を実施した.また,生活状況の聴取を実施すると「歯がないから喉詰まりしたことがある」という発言がある一方で「歯がなくてもなんでも食べられるよ.近所の奥さんはそれで長生きしてるから平気」等食事や生活管理に関する課題も明らかとなった.
希望から合意目標が形成された時期:院内での作業療法介入中に「買い物は大丈夫かな」と頻回に発言があった.A氏は頻繁に駅前のスーパーマーケット(以下:スーパー)に買い物へ行っていたとのことであった.A氏の自宅はスーパー約800mであり,近隣の駅ビルや連絡通路を通ると,屋外歩行が必要な距離は200mほどであった.歩行耐久性の評価後に生活行為アセスメントを実施し,合意目標は「1ヶ月後に1人で安全に休みながら800m離れたスーパーまで行き,自分の1日分の食品を買ってくることができる」となった.満足度は8遂行度は5であった.生活行為向上プランとして,基本的プログラム:歯科受診し,義歯の調整を行う.理学療法士に協力を依頼し,歩行耐久性の向上を図る,集団体操への参加を継続する.応用的プログラム:病院内の売店で食形態と合う食品の形態確認,荷物を持った屋内歩行練習,屋外歩行練習を実施した.社会適応プログラム:病院から公共交通機関を利用して自宅まで行き,自宅からスーパーまで外出,買い物(キッチンバサミ,菓子)を実施した.その後食形態を常菜へ変更してもらい,購入したキッチンバサミで適切な大きさにカットして摂取するよう練習した.
【結果】自宅退院が決定し,一人暮らしを再開できた.退院1ヶ月後の訪問では身体状況は問題なく一人暮らしで生活しており,近隣の散歩も週4回ほど行っていた.重い買い物はヘルパーを利用していた.転倒や窒息なく過ごすことができていた.満足度・遂行度は共に9となった.
【考察】櫻井沙樹(2019)は回復期リハビリ病棟では自宅退院のみならず,退院後の患者の生活及び役割などの再獲得を視野に入れた介入が必要であり,患者にとっての高いQ O Lを目指すことが重要であり,M T D L Pの活用が有効であるとしている.今回回復期へ入院し,心負荷に配慮した活動や食事への課題があったA氏に対し,MTDLPを用い課題を共有しながら介入したことにより,安全な食事の用意など可能となり自宅退院へつながったと考える.よってMTDLPは高齢者の生活を再構築する過程おいても有用なツールであると考える.
【事例紹介】80代女性,一人暮らしで徒歩20分程度のスーパーや最寄駅まで頻繁に出掛け電車を利用した外出もしていた.夫とは20年以上前に離婚し,生活保護を受給していた.隣区に住む娘は自営業で,多忙のため支援は薄かった.心疾患の既往あり.新型コロナウイルス罹患後に増悪し,体動困難となったため,急性期病院入院となる.その後自宅退院に向けてB病院へ回復期転院となった.
【経過】生活状況の評価や耐久性向上に向けて関わった時期:耐久性の低下が課題であったため,軽運動や歩行訓練を実施した.また,生活状況の聴取を実施すると「歯がないから喉詰まりしたことがある」という発言がある一方で「歯がなくてもなんでも食べられるよ.近所の奥さんはそれで長生きしてるから平気」等食事や生活管理に関する課題も明らかとなった.
希望から合意目標が形成された時期:院内での作業療法介入中に「買い物は大丈夫かな」と頻回に発言があった.A氏は頻繁に駅前のスーパーマーケット(以下:スーパー)に買い物へ行っていたとのことであった.A氏の自宅はスーパー約800mであり,近隣の駅ビルや連絡通路を通ると,屋外歩行が必要な距離は200mほどであった.歩行耐久性の評価後に生活行為アセスメントを実施し,合意目標は「1ヶ月後に1人で安全に休みながら800m離れたスーパーまで行き,自分の1日分の食品を買ってくることができる」となった.満足度は8遂行度は5であった.生活行為向上プランとして,基本的プログラム:歯科受診し,義歯の調整を行う.理学療法士に協力を依頼し,歩行耐久性の向上を図る,集団体操への参加を継続する.応用的プログラム:病院内の売店で食形態と合う食品の形態確認,荷物を持った屋内歩行練習,屋外歩行練習を実施した.社会適応プログラム:病院から公共交通機関を利用して自宅まで行き,自宅からスーパーまで外出,買い物(キッチンバサミ,菓子)を実施した.その後食形態を常菜へ変更してもらい,購入したキッチンバサミで適切な大きさにカットして摂取するよう練習した.
【結果】自宅退院が決定し,一人暮らしを再開できた.退院1ヶ月後の訪問では身体状況は問題なく一人暮らしで生活しており,近隣の散歩も週4回ほど行っていた.重い買い物はヘルパーを利用していた.転倒や窒息なく過ごすことができていた.満足度・遂行度は共に9となった.
【考察】櫻井沙樹(2019)は回復期リハビリ病棟では自宅退院のみならず,退院後の患者の生活及び役割などの再獲得を視野に入れた介入が必要であり,患者にとっての高いQ O Lを目指すことが重要であり,M T D L Pの活用が有効であるとしている.今回回復期へ入院し,心負荷に配慮した活動や食事への課題があったA氏に対し,MTDLPを用い課題を共有しながら介入したことにより,安全な食事の用意など可能となり自宅退院へつながったと考える.よってMTDLPは高齢者の生活を再構築する過程おいても有用なツールであると考える.