[PM-5-2] 生活行為向上マネジメントの活用が活動性の向上に有効であった重度の生活障害を呈した一事例
【背景・目的】脳卒中受傷後に活動性が低下する事例は,多く存在する.そのような事例に対して,詳細かつ対象者にとって意味がある目標を設定することが推奨されている.そのような中,生活行為向上マネジメント(MTDLP)は,詳細な目標設定とその合意において有用なツールであると考えられている.現在,活動性の向上を目指したMTDLPを用いた事例報告は多数あるものの,重度の生活障害を呈した事例に対するMTDLPの有効性についての報告は少ない.このたび,地域包括ケア病棟で重度の生活障害を呈した事例に対して,作業療法士(以下:OT)が中心となり本人の思いを聞き取り,詳細な目標設定をすることにより,車椅子座位での活動向上と離床時間の延長に繋がった事例を報告する.本研究は所属長の承認を得た上で対象者に同意を得て実施した.申告すべき利益相反はない.
【事例紹介と作業療法評価】本事例は左脳梗塞のよる右片麻痺で構音障害を呈した80歳代女性である.入院前は妹と2人暮らしで畑仕事されるなど活発に過ごされていた.20代~30代の10年間ほど統合失調症により入院していた.Brunnstrom Stageは上肢Ⅱ手指Ⅱ下肢Ⅲ,改定長谷川式簡易知能評価スケールは19点であった.また,Barthel Indexは10点であり,食事以外の日常生活活動は全介助であった.OT介入以外は臥床傾向であり,本事例の訴えは「やってもよーならん」など消極的な発言が多くみられた.興味関心チェックリストはカラオケが好きと情報収集できた.合意目標は「自室ベッドから車椅子への移乗が軽介助で行え,歌を歌いに車椅子でリハビリ室まで自走できる」とした.
【介入経過】アセスメントシートを使用して,看護師等と起居や移乗動作の介助量や介助方法を統一するために情報の共有を行った.介入後14日:OTは何事にも消極的になっていた本事例からカラオケが好きであると情報収集ができたため,動機付け要因として「カラオケをする」ことを採用し,車椅子座位での姿勢保持練習と車椅子駆動練習を行った.その結果,自室ベッドから車椅子への移乗や車椅子駆動の練習に対して積極性が増した.また「カラオケがしたい」と自ら発言し,曲も自ら選び笑顔が増えた.介入後30日:離床時間が延長し,車椅子座位で昼食を食べ,その後はデイルームで他者と過ごすことが可能となり,活動性の向上が認められた.また,YouTubeで好きな音楽を流して欲しいと看護師に依頼する場面がみられるようになった.介入後50日:現在の活動能力では独居生活は難しいことから次施設においても本人らしく過ごせるように,介護支援専門員に事例のできる能力の情報提供を実施し,次施設へ情報を送った.
【結果と考察】重度の生活障害を呈し,日中臥床傾向の本事例に対して,MTDLPのツールを活用し,やりたいことを聞き取り,詳細な合意目標を設定したことが,活動性の向上に繋がったと考える.この結果は,重度の生活障害を呈した事例に対してもMTDLPが有効である可能性を示唆している.今後,重度の生活障害を呈した事例を対象としたMTDLPの有効性に対する検討を引き続き実施していくことにより,本結果の一般化が図れると考える.
【事例紹介と作業療法評価】本事例は左脳梗塞のよる右片麻痺で構音障害を呈した80歳代女性である.入院前は妹と2人暮らしで畑仕事されるなど活発に過ごされていた.20代~30代の10年間ほど統合失調症により入院していた.Brunnstrom Stageは上肢Ⅱ手指Ⅱ下肢Ⅲ,改定長谷川式簡易知能評価スケールは19点であった.また,Barthel Indexは10点であり,食事以外の日常生活活動は全介助であった.OT介入以外は臥床傾向であり,本事例の訴えは「やってもよーならん」など消極的な発言が多くみられた.興味関心チェックリストはカラオケが好きと情報収集できた.合意目標は「自室ベッドから車椅子への移乗が軽介助で行え,歌を歌いに車椅子でリハビリ室まで自走できる」とした.
【介入経過】アセスメントシートを使用して,看護師等と起居や移乗動作の介助量や介助方法を統一するために情報の共有を行った.介入後14日:OTは何事にも消極的になっていた本事例からカラオケが好きであると情報収集ができたため,動機付け要因として「カラオケをする」ことを採用し,車椅子座位での姿勢保持練習と車椅子駆動練習を行った.その結果,自室ベッドから車椅子への移乗や車椅子駆動の練習に対して積極性が増した.また「カラオケがしたい」と自ら発言し,曲も自ら選び笑顔が増えた.介入後30日:離床時間が延長し,車椅子座位で昼食を食べ,その後はデイルームで他者と過ごすことが可能となり,活動性の向上が認められた.また,YouTubeで好きな音楽を流して欲しいと看護師に依頼する場面がみられるようになった.介入後50日:現在の活動能力では独居生活は難しいことから次施設においても本人らしく過ごせるように,介護支援専門員に事例のできる能力の情報提供を実施し,次施設へ情報を送った.
【結果と考察】重度の生活障害を呈し,日中臥床傾向の本事例に対して,MTDLPのツールを活用し,やりたいことを聞き取り,詳細な合意目標を設定したことが,活動性の向上に繋がったと考える.この結果は,重度の生活障害を呈した事例に対してもMTDLPが有効である可能性を示唆している.今後,重度の生活障害を呈した事例を対象としたMTDLPの有効性に対する検討を引き続き実施していくことにより,本結果の一般化が図れると考える.