第58回日本作業療法学会

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ポスター

MTDLP

[PM-6] ポスター:MTDLP 6

Sun. Nov 10, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PM-6-2] 生活行為向上マネジメントを活用した家族・多職種を含む包括的な介入により活動意欲向上と排泄動作獲得に繋がった事例

稲葉 将太, 田口 功隼, 夏加 孝明 (医療法人社団常仁会 牛久愛和総合病院 リハビリテーションセンター)

【序論】第12胸椎破裂骨折受傷後にコルセット装着と膀胱留置カテーテルの挿入,COVID-19感染等を経て活動性が低下した事例を担当する機会を得た.心身機能の低下と環境の変化により活動意欲が低下した事例に対し,家族を含めた多職種と連携して介入した結果,排泄動作獲得に至ったため報告する.発表に際し事例に同意を得た.【事例紹介】80代の男性で妻と二人暮らし.日常生活活動は自立し,歩行も自立していた.趣味は庭の剪定であった.要介護1を取得済み.診断名:第12胸椎破裂骨折.既往歴:前立腺肥大.現病歴:自宅で転倒し受傷,4病日目からリハビリテーション(以下リハ)を開始した.尿閉から膀胱留置カテーテル挿入となった.25病日目からコルセットを装着し離床を開始した.53~66病日目までCOVID-19感染のため隔離病棟へ転棟した.67病日目にリハを再開した.事例は臥床傾向で,カテーテル抜去試験後もトイレでの排泄はなく,再挿入となった.【評価:67病日目】改定長谷川式簡易知能評価18点.安静時Numerical Rating Scale(以下NRS)3,体動時NRS5の腰部痛が出現していた.徒手筋力テストは下肢4,基本動作は中等度介助であった.Functional Independence Measure(以下FIM)62点.排泄動作は軽介助だが,コルセットの着脱は全介助を要した.歩行は固定型歩行器を使用し軽介助で5m程度歩行可能であった.離床意欲はなく,排泄はオムツを使用し看護師の介助を要していた.事例から「トイレに行きたいけれど腰痛と汚す事が不安」,妻から排泄動作と歩行自立の希望と,面会制限による不安が聞かれた.生活行為聞き取りシートを使用し,「コルセット着脱の介助を受けながら固定型歩行器を使用し,トイレでの排泄が出来る」という合意目標の形成に至った.実行度は0/10,満足度は1/10であった.【介入】生活行為マネジメントシートを事例と家族に共有し, 1.基本動作と排泄動作訓練を実施した.事例にフィードバックを行い,正しいコルセットの着脱と動作方法により,腰部痛が増強しないことを確認した.2.看護師に基本動作と排泄動作の介助方法を共有し,日中の離床時間延長とトイレ誘導を依頼した.3.家族にリハの進捗状況の報告とコルセット着脱方法の指導を実施した.また,電話を通じて事例への離床への励ましを依頼した.93病日目にカテーテル抜去となり,トイレでの排泄が可能となった.【結果】疼痛は運動時のみNRS3,基本動作は自立した.FIM100点.歩行は固定型歩行器を使用し屋内歩行が自立した.目標の実行度は8/10,満足度は8/10となった.日中は自発的に1日3回以上,最長1時間の離床が可能となり,排泄は看護師の付き添いのもと可能となった.事例より「庭の剪定がしたい」と新たな目標や,妻から「安心して退院に向けた準備が出来た」との話が聞かれた.104病日目に自宅退院となった.外来通院時は杖歩行で来院し,自立した生活が送れているとの話が聞かれた.【考察】圧迫骨折は体動制限により特に高齢者は体力が衰え,内臓呼吸機能の悪化や,痛みによる精神状態の悪化がみられることもある.痛みが強いと,恐怖心から体動が極端に制限され,筋力の低下や鬱傾向を招く恐れがある(小野塚まり子,2004).事例は疼痛とCOVID-19感染隔離の閉鎖的な環境により活動意欲の低下を来したと推測される.生活行為向上マネジメントを使用し疼痛に対する動作練習を行うとともに,家族と多職種に働きかけ,包括的に介入を行うことで事例の活動意欲が改善し,排泄動作獲得に至ったと考える.