[PM-6-3] MTDLPを用いてB型作業所導入に至った症例報告
はじめに:
自閉スペクトラム症のため,当精神科デイケア(以下,DC)に約9年間通所しているA氏を担当する機会を得た.MTDLPを用いて介入した結果,3ヶ月でB型作業所へ導入を達成することが出来た.作業所導入までの経過を報告し,その要因について考察する.
事例紹介:30代前半,男性,自閉スペクトラム症,障害者手帳2級.同胞3人の第2子として出生.多動傾向で,けがが多かった.小学校入学してまもなく両親が離婚.いじめがあり嘔吐を繰り返す.イライラが募ると母親と弟に暴力.10歳,精神科のクリニックを受診.15歳,定時制高校入学.この頃よりパソコンにはまる.18歳,職業訓練校へ入学し,2年通う.不安感から多量服薬などあったが,パソコンの資格を複数取得し卒業.20歳,就職活動中,多量服薬,紐で首を絞める行動,道路で寝そべる行動があり就労移行支援を利用することになる.22歳,落ち着かず,徘徊や多量服薬が頻繁になり当院に医療保護入院.退院後,DCに初回導入となる.4ヶ月後,再び家庭内のトラブルや就労移行支援事業所でのイライラから破壊行動,多量服薬,家を飛び出すなど行動化を起こし当院へ再入院となる.退院後,DCに再導入となる.その後,入院は無く約9年間DCに通所している.障害年金をやりくりしながら生活.ストレス耐性が低く,DCでのストレスや家族間のトラブルから多量服薬をすることが多く,服薬管理は母親がしている.なお,本報告に際し, A氏より書面にて同意を得た.
経過:
顔合わせ期:前担当の退職に伴い引き継ぎを行う.チラチラとこちらを見るが目を合わせることはなく,不承不承といった感じで担当変更の面接を終える.パソコンが得意との情報があったため,パソコンの話題を中心に関係を築いていくこととした.家では,「担当変更がストレスだった」と行き先を告げずに外出をしており,心配した母親から担当変更に対するクレームの電話があった.週1回の来所日に合わせ担当面接を行い関係を築いていった.
MTDLPを実践した時期:担当変更から4ヶ月ほどたった頃,A氏より「ずっとなんとかしたいと思っていたけど,誕生日を迎えるし,できることならステップアップしたい.でも,前回の失敗がトラウマで次に踏み出せない」との発言があった.そこで,MTDLPを用いB型作業所を目指すプログラムを共有し進めることにした.A氏のパソコンの技術を活かせる作業所を選定し,見学,体験を行うこととした.DCでは,ストレスへの対処や不安の軽減を図りながら,毎回の参加時にMTDLPを用い進捗状況を確認し次回参加までの課題設定・役割分担を行った.見学には,演者および母親が同伴するなど母親との連携も行った.
初回通所は,A氏のみで行うことができ,週1回から2回のペースで通所することができるようになった.現在DCでは,作業所での様子などをA氏から聞き取り,ストレスへの対処や必要に応じて作業所への連絡などを行いサポートを継続している.母親からは,「本当に作業所が続くとは思っていなかった.ありがたい.」との電話があった.
考察:
A氏は,約9年という期間DCに通所していたが,様々な要因から次のステップに踏み出すことが困難だった.今回,A氏への支援がうまくいった要因として,①A氏の次のステップに踏み出したいという思いをキャッチできたこと,②地域にA氏にマッチしたB型作業所が存在し,そのことを演者が知っていたこと,③MTDLPを用い毎回のDC参加時に進捗状況を確認し次回参加までの課題・役割分担を明確にできたことが上げられる.
自閉スペクトラム症のため,当精神科デイケア(以下,DC)に約9年間通所しているA氏を担当する機会を得た.MTDLPを用いて介入した結果,3ヶ月でB型作業所へ導入を達成することが出来た.作業所導入までの経過を報告し,その要因について考察する.
事例紹介:30代前半,男性,自閉スペクトラム症,障害者手帳2級.同胞3人の第2子として出生.多動傾向で,けがが多かった.小学校入学してまもなく両親が離婚.いじめがあり嘔吐を繰り返す.イライラが募ると母親と弟に暴力.10歳,精神科のクリニックを受診.15歳,定時制高校入学.この頃よりパソコンにはまる.18歳,職業訓練校へ入学し,2年通う.不安感から多量服薬などあったが,パソコンの資格を複数取得し卒業.20歳,就職活動中,多量服薬,紐で首を絞める行動,道路で寝そべる行動があり就労移行支援を利用することになる.22歳,落ち着かず,徘徊や多量服薬が頻繁になり当院に医療保護入院.退院後,DCに初回導入となる.4ヶ月後,再び家庭内のトラブルや就労移行支援事業所でのイライラから破壊行動,多量服薬,家を飛び出すなど行動化を起こし当院へ再入院となる.退院後,DCに再導入となる.その後,入院は無く約9年間DCに通所している.障害年金をやりくりしながら生活.ストレス耐性が低く,DCでのストレスや家族間のトラブルから多量服薬をすることが多く,服薬管理は母親がしている.なお,本報告に際し, A氏より書面にて同意を得た.
経過:
顔合わせ期:前担当の退職に伴い引き継ぎを行う.チラチラとこちらを見るが目を合わせることはなく,不承不承といった感じで担当変更の面接を終える.パソコンが得意との情報があったため,パソコンの話題を中心に関係を築いていくこととした.家では,「担当変更がストレスだった」と行き先を告げずに外出をしており,心配した母親から担当変更に対するクレームの電話があった.週1回の来所日に合わせ担当面接を行い関係を築いていった.
MTDLPを実践した時期:担当変更から4ヶ月ほどたった頃,A氏より「ずっとなんとかしたいと思っていたけど,誕生日を迎えるし,できることならステップアップしたい.でも,前回の失敗がトラウマで次に踏み出せない」との発言があった.そこで,MTDLPを用いB型作業所を目指すプログラムを共有し進めることにした.A氏のパソコンの技術を活かせる作業所を選定し,見学,体験を行うこととした.DCでは,ストレスへの対処や不安の軽減を図りながら,毎回の参加時にMTDLPを用い進捗状況を確認し次回参加までの課題設定・役割分担を行った.見学には,演者および母親が同伴するなど母親との連携も行った.
初回通所は,A氏のみで行うことができ,週1回から2回のペースで通所することができるようになった.現在DCでは,作業所での様子などをA氏から聞き取り,ストレスへの対処や必要に応じて作業所への連絡などを行いサポートを継続している.母親からは,「本当に作業所が続くとは思っていなかった.ありがたい.」との電話があった.
考察:
A氏は,約9年という期間DCに通所していたが,様々な要因から次のステップに踏み出すことが困難だった.今回,A氏への支援がうまくいった要因として,①A氏の次のステップに踏み出したいという思いをキャッチできたこと,②地域にA氏にマッチしたB型作業所が存在し,そのことを演者が知っていたこと,③MTDLPを用い毎回のDC参加時に進捗状況を確認し次回参加までの課題・役割分担を明確にできたことが上げられる.