[PM-6-4] MTDLPを活用し多職種連携に取り組んだ一症例
"【はじめに】施設入所の利用者への訪問リハビリテーションの中で,自発性の低下が問題となる患者に対し,生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)による多職種連携を行った.自発的な行動の変化はみられないものの,ADL場面での遂行能力の向上がみられ,経過の中で目標に挙がった「旅行」が実現した介入について考察を加え報告する.尚,本発表については対象者に紙面にて同意を得ており,倫理委員会の承認も得ている.
【症例報告】施設入所の80才代,男性,2023年3月X日脳卒中発症,救急病院搬送,X+19日回復期リハビリテーション入院,X+〇日,訪問リハビリテーション開始.初期評価:心身機能・構造:BRSは上肢,手指,下肢はいずれもⅥ,MMSE:11点,高次脳機能障害(失算,失書,失読,記憶障害,注意障害等),右半盲,FIMは運動項目58点,認知項目12点.社会的背景:奥様と二人暮らし,趣味は囲碁,ゴルフ.本人の希望は「美味しいものが食べたい」,ご家族は「以前の生活に戻れたら」であった.
【合意された目標】
1)自発的な規則正しい生活が送れる 実行度1点/10,満足度1点/10点
2)家族旅行に行く 実行度1点/10点,満足度1点/10点
【介入内容】自発的な規則正しい生活を送れるについては,セルフケアがストレスなく行えるようADL場面において,高次脳機能障害に配慮した介入方法(声かけ,操作手順,誘導方法等)で統一し,また,環境整備を行った.具体的に整容の環境整備では,物品を左空間の見つけやすい場所に置く.整容手順は,顔を洗う,歯を磨く,髭をそる,櫛で髪を梳くの順で行う.物品の選択では,正しいものを選択されたときにはっきりと正しいことを伝えるなど声掛け方法を統一した.旅行については,企画,情報収集,予測される課題と解決方法などを,本人,家族,支援スタッフで検討し実施した.具体的には,旅行先の選定はよく行かれていた場所,交通手段は自家用車に同乗する,旅行先ではゆっくりと食事を楽しむ,孫と遊ぶ,排泄時の対応,歩行時の対応などを検討し実施した.
【結果】6ヶ月後の評価では,MMSE:11点,FIMは運動項目76点,認知項目21点であった.目標1)については,自発的な行動変化はみられないが,ADL場面での遂行能力に向上がみられた.実行度5点/10点,満足度5点/10点. 目標2)の旅行については,ご本人,ご家族とスタッフが同行し実施できた.実行度10点/10点,満足度10点/10点.これらの過程をとおして,多職種,家族の対応に変化が見られた.
【考察】MTDLPを活用することで,問題点の整理,目標の明確化,適切な介入が実行できたと考える.また,他職種や本人,家族が主体的に計画全体に関わることで,本人の状況理解が少しずつ深まり,他の活動や参加場面での介入に変化が見られた.それらのことからも,MTDLPの活用は,QOLの向上を目指す多職種連携のツールとして有効ではないかと考える.
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【症例報告】施設入所の80才代,男性,2023年3月X日脳卒中発症,救急病院搬送,X+19日回復期リハビリテーション入院,X+〇日,訪問リハビリテーション開始.初期評価:心身機能・構造:BRSは上肢,手指,下肢はいずれもⅥ,MMSE:11点,高次脳機能障害(失算,失書,失読,記憶障害,注意障害等),右半盲,FIMは運動項目58点,認知項目12点.社会的背景:奥様と二人暮らし,趣味は囲碁,ゴルフ.本人の希望は「美味しいものが食べたい」,ご家族は「以前の生活に戻れたら」であった.
【合意された目標】
1)自発的な規則正しい生活が送れる 実行度1点/10,満足度1点/10点
2)家族旅行に行く 実行度1点/10点,満足度1点/10点
【介入内容】自発的な規則正しい生活を送れるについては,セルフケアがストレスなく行えるようADL場面において,高次脳機能障害に配慮した介入方法(声かけ,操作手順,誘導方法等)で統一し,また,環境整備を行った.具体的に整容の環境整備では,物品を左空間の見つけやすい場所に置く.整容手順は,顔を洗う,歯を磨く,髭をそる,櫛で髪を梳くの順で行う.物品の選択では,正しいものを選択されたときにはっきりと正しいことを伝えるなど声掛け方法を統一した.旅行については,企画,情報収集,予測される課題と解決方法などを,本人,家族,支援スタッフで検討し実施した.具体的には,旅行先の選定はよく行かれていた場所,交通手段は自家用車に同乗する,旅行先ではゆっくりと食事を楽しむ,孫と遊ぶ,排泄時の対応,歩行時の対応などを検討し実施した.
【結果】6ヶ月後の評価では,MMSE:11点,FIMは運動項目76点,認知項目21点であった.目標1)については,自発的な行動変化はみられないが,ADL場面での遂行能力に向上がみられた.実行度5点/10点,満足度5点/10点. 目標2)の旅行については,ご本人,ご家族とスタッフが同行し実施できた.実行度10点/10点,満足度10点/10点.これらの過程をとおして,多職種,家族の対応に変化が見られた.
【考察】MTDLPを活用することで,問題点の整理,目標の明確化,適切な介入が実行できたと考える.また,他職種や本人,家族が主体的に計画全体に関わることで,本人の状況理解が少しずつ深まり,他の活動や参加場面での介入に変化が見られた.それらのことからも,MTDLPの活用は,QOLの向上を目指す多職種連携のツールとして有効ではないかと考える.
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