第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

地域

[PN-1] ポスター:地域 1

Sat. Nov 9, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PN-1-6] 住民主体!持続可能なフレイル予防活動

高知県仁淀川町”ハツラッツ”

金久 雅史1, 有光 一樹1, 杉本 徹2, 田所 真也2, 田村 果南3 (1.高知リハビリテーション専門職大学, 2.リハビリテーション病院すこやかな杜, 3.もみのき病院)

【背景】
 高知県仁淀川町は令和6年1月1日時点の推計で,人口4,349人,高齢化率57.0%と全国的にも高齢化先進町である.同町では令和3年5月より,フレイル予防を共に学び実践する場である短期集中型総合プログラム「ハツラッツ」が展開されている.ハツラッツは総合事業における通所型サービスCの手法を取り入れているが,両者の最大の違いは参加者が地域で暮らす高齢住民同士であり,総合事業におけるサービス利用者・提供者という関係性ではない点である.ハツラッツは参加する住民がお互いを励ましあいながら実践し,会場は常に熱気や優しさで溢れている.高知県作業療法士会はハツラッツの後方支援として作業療法士を派遣し,また,地域で活躍できる人材育成の場としてハツラッツと連携している.
【目的】
 ハツラッツが始まり約2年半が経過し,令和6年2月時点で延べ93名が卒業した.今回,ハツラッツが卒業後の健康維持やフレイル予防に寄与しているかどうか,モニタリングとして体力測定を実施したため,結果とともに考察を加えて報告する.なお,本報告は同町および該当住民に報告の趣旨を説明し同意を得ている.
【方法】
 ハツラッツ卒業後6ヶ月以上経過している63名のうち,協力の得られた30名(男性14名・女性16名)を対象とした.平均年齢80.5±6.1歳,卒業後の平均月数は14.8±8.1ヶ月であった.令和6年1~2月において,モニタリングとして5m歩行,Time Up and Go test(以下TUG),片脚立位バランス,Chair−Standing test 30(以下CS-30),握力測定を実施した.各項目は卒業生がハツラッツに挑戦時にも測定しており,初回時・卒業時・モニタリング時の測定結果についてTukey-Kramer検定を用いて比較検討した.有意水準は5%未満とした.
【結果】
 体力測定結果を初回時・卒業時・モニタリング時の順に示す.5m歩行は3.09±0.71秒・2.53±0.40秒・2.69±0.52秒,TUGは7.17±1.70秒・6.06±1.12秒・6.34±1.31秒,片脚立位バランスは18.29±9.68秒・24.65±8.01秒・23.45±7.31秒,CS-30は17.3±3.6回・24.9±4.9回・26.5±5.6回,握力は27.3±9.1kg・28.7±9.3kg・28.0±7.8kgであった.5m歩行及びCS-30は,初回時・卒業時,初回時・モニタリング時で有意差を認めた.TUG及び片脚立位バランスは初回時・卒業時で有意差を認めた.握力については有意差を認めなかった.
【考察】
 卒業後6ヶ月以上経過しても,測定結果が有意に向上した,あるいは初回時よりも高い水準を維持していることは非常に興味深い.ハツラッツ挑戦中に通所型サービスCと同程度の効果を得るだけでなく,最長で2年半も効果を維持していることは,まさに健康寿命の延伸に繋がっていると言える.
高齢住民主体で取り組むハツラッツの仕組みは,単に身体機能の向上を図るのではなく,地域住民らのエンパワーメント,自助・互助力の向上に寄与していると考えられる.ハツラッツでともに励まし合い,支え合うという経験を共有したことが,活力を生み出し,社会性や意欲の向上に繋がり,さらには卒業後の地域への貢献意欲にも繋がりを見せている.結果,仁淀川町ではヨガやポールウォーキングなど,多くのフレイル予防に貢献する活動が“住民主体・住民発信”で展開されている.住民同士で支え合うハツラッツの手法は,持続したフレイル予防に大きく貢献できる活動である.