[PN-2-1] 遠隔リハビリテーションを活用した運動習慣とストレス管理
有酸素運動の効果に関するシングルケーススタディ
【はじめに】現代社会において心理的ストレスは,重要な健康問題として認識され,多様な疾患のリスクを増加させる.OTPF-4では,障害や疾患の発生前における健康促進とリスク軽減のための予防的介入が作業療法の重要な役割として位置づけられている.また,作業療法では,教育的モデルによる介入が,健康管理やストレス関連の問題に対する有効な手段として認識されている.さらに近年,遠隔リハビリテーションの効果に関する報告も増えている.本研究では,作業療法士によるビデオ会議を通じた遠隔教育,運動習慣とストレス管理を促進する取り組みを行った.本研究の目的は,事例を通して有酸素運動がストレス,気分,作業機能障害に与える影響を調査し,予防的作業療法の効果を理解することである.
【方法】本研究の対象者は,仕事や家族関係に起因するストレスを訴える40代の男性である.既往歴としては適応障害があるものの3年前に緩解している.1年前の離婚をきっかけに気分の落ち込みが見られたが,日常生活や仕事は以前と変わらず遂行可能だが持続的な気分の落ち込みや活力低下が確認された.研究はABデザインを採用し,ベースライン期と介入期を設定した.ベースライン期と介入期は双方2ヶ月間とした.ベースライン期,対象者は通常通りの生活を続け週3回心拍センサーを用いてHRVを測定した.介入期は,対象者が週3回屋内トレッドミルを使用して30分間のジョギングを実施した.ジョギングは,心拍センサーを用いて最大心拍数の60-70%の強度に調整した.ベースライン期,介入期共に月2回,作業療法士とのビデオ会議を通じて支援を受けた.この会議では,進捗,課題,および運動実施に関するフィードバックなどの支援を行った.
なお,研究を実施するにあたり,社会医学技術学院倫理委員会の承認を得ている(承認番号2023-2).また本研究において開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【解析方法】HRVに関しては,ベースラインを基にした推定値を算出した上で実測値との比較し介入効果を検証した.なおSDNNは,再帰型ニューラルネットワーク(LSTMモデル)による予測を行い,LF/HFは,Prophetモデルによる予測を行った.次にベイズ推定(状態空間モデル)による時系列比較を行い介入の効果を分析した.解析において予測はPython(ver:3.10.12)を,比較はR(ver:3.6.3)を用いて行った.
さらに,POMS,SF-36,COADはベースライン期間の前後と介入後に計3回測定し経時的な変化を記録した.
【結果】本研究における遠隔リハビリテーションと有酸素運動の介入は,心拍変動指標のSDNNを18%(95%信用区間12% -25%)上昇させ,LF/HF比を21%(95%信用区間 26% - 15%)低下させる効果が推定された.POMSによる心理状態の評価では,抑うつ-落ち込みが34から29に,怒り-敵意が21から17に減少し,活力が1から9に向上した.SF-36による健康関連QOLの評価では,全体的健康感が35.1から40.5に,活力が30.6から43.4に,心の健康が33.0から38.4に改善した.COADによる作業機能障害の評価では,作業疎外が19から14に改善したものの全体としては依然として65点とカットオフ点である52点を上回る得点を示した.
【考察】作業療法士によるビデオ会議を通じた遠隔教育,運動習慣とストレス管理を促進する取り組みは,予防的健康管理に有効であることが示された.特に自律神経のバランス改善,気分状態の向上,作業機能障害の軽減といった複数の指標において肯定的影響を及ぼす効果があることが確認された.しかし,本研究はシングルケーススタディによる限定的な調査であるため,今後さらに広範な対象者を対象とした研究が求められる.
【方法】本研究の対象者は,仕事や家族関係に起因するストレスを訴える40代の男性である.既往歴としては適応障害があるものの3年前に緩解している.1年前の離婚をきっかけに気分の落ち込みが見られたが,日常生活や仕事は以前と変わらず遂行可能だが持続的な気分の落ち込みや活力低下が確認された.研究はABデザインを採用し,ベースライン期と介入期を設定した.ベースライン期と介入期は双方2ヶ月間とした.ベースライン期,対象者は通常通りの生活を続け週3回心拍センサーを用いてHRVを測定した.介入期は,対象者が週3回屋内トレッドミルを使用して30分間のジョギングを実施した.ジョギングは,心拍センサーを用いて最大心拍数の60-70%の強度に調整した.ベースライン期,介入期共に月2回,作業療法士とのビデオ会議を通じて支援を受けた.この会議では,進捗,課題,および運動実施に関するフィードバックなどの支援を行った.
なお,研究を実施するにあたり,社会医学技術学院倫理委員会の承認を得ている(承認番号2023-2).また本研究において開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【解析方法】HRVに関しては,ベースラインを基にした推定値を算出した上で実測値との比較し介入効果を検証した.なおSDNNは,再帰型ニューラルネットワーク(LSTMモデル)による予測を行い,LF/HFは,Prophetモデルによる予測を行った.次にベイズ推定(状態空間モデル)による時系列比較を行い介入の効果を分析した.解析において予測はPython(ver:3.10.12)を,比較はR(ver:3.6.3)を用いて行った.
さらに,POMS,SF-36,COADはベースライン期間の前後と介入後に計3回測定し経時的な変化を記録した.
【結果】本研究における遠隔リハビリテーションと有酸素運動の介入は,心拍変動指標のSDNNを18%(95%信用区間12% -25%)上昇させ,LF/HF比を21%(95%信用区間 26% - 15%)低下させる効果が推定された.POMSによる心理状態の評価では,抑うつ-落ち込みが34から29に,怒り-敵意が21から17に減少し,活力が1から9に向上した.SF-36による健康関連QOLの評価では,全体的健康感が35.1から40.5に,活力が30.6から43.4に,心の健康が33.0から38.4に改善した.COADによる作業機能障害の評価では,作業疎外が19から14に改善したものの全体としては依然として65点とカットオフ点である52点を上回る得点を示した.
【考察】作業療法士によるビデオ会議を通じた遠隔教育,運動習慣とストレス管理を促進する取り組みは,予防的健康管理に有効であることが示された.特に自律神経のバランス改善,気分状態の向上,作業機能障害の軽減といった複数の指標において肯定的影響を及ぼす効果があることが確認された.しかし,本研究はシングルケーススタディによる限定的な調査であるため,今後さらに広範な対象者を対象とした研究が求められる.