[PN-2-10] パラスポーツ実施に向けた公共体育施設の現状と課題
競技用車いす使用可否に関する調査より
【はじめに】
パラスポーツを楽しもうとした際,競技用車いすの使用許可がおりない体育館が存在するが,理由は不明確なものが多い.また,競技用の車いすを保有している体育館は極めて少ない.そのため,A県内の公共施設体育館は,気軽にパラスポーツを楽しむ場とは言い難い.そこで,競技用車いすの使用可否等を調査したので報告する.
【方法】
A県内の市町村が管轄する7圏域の81公共体育施設を対象に,202X年10月 〜 202X+1年1月に電話調査を行った.調査内容は,「競技用車いすの保有台数」「競技用車いすがない場合の理由」「競技用車いすは使用可能か」「不可の場合の理由」「パラスポーツ体験会が可能か」「体験会不可の場合の理由」の6点であった.回答者は体育館指定管理者あるいは市町村の担当部署責任者である.本研究は,各体育館の回答者へ研究の概要を口頭で説明し,同意を得てから実施した.
【結果】
電話調査の回答率は100%であり,81施設が全ての質問に回答した.
全体育館で競技用車いすの保有台数は,2施設(2.5%)計17台であった.競技用車いすを保有しない理由で多かったのは,「必要性がない」「検討したこともない」が52施設(64.1%),「市町管轄部署への確認が必要で体育館の指定管理者では判断できない」が14施設(17.3%)であった.
体育館での競技用車いすは使用可能かという質問に対しては,26施設(32.1%)が可能と回答した.競技用車いすが使用不可の場合の理由については,21施設(25.9%)の体育館で「市町管轄部署への確認が必要で体育館の指定管理者では判断できない」状況にあった.また,18施設(22.2%)が「競技用車いす使用における床への影響」を考慮し使用不可であった.ただし,7施設(8.6%)では「相談の上,判断する」と回答した.
パラスポーツ体験会が可能かという質問に対しては,29施設(35.8%)が「可能」と回答した.しかし,パラスポーツ体験会不可の理由に関する質問では,7施設(8.6%)は「床への影響(強度・傷・跡)が心配」と回答し,19施設(23.5%)が「市への確認が必要」であった.また,27施設(33.3%)は「相談の上,判断する」「種目による検討が必要」と回答した.
【考察】
今回の調査では競技用車いすを保有している体育館は2施設のみであった.しかし,競技用車いすを持参すれば約3割の体育館で使用可能であることがわかった.残りの約7割の体育館では,体育館指定管理者のみでは使用判断できず,市町担当部署へ確認する必要があった.また,担当部署ではパラスポーツの競技内容が認識されていなかった.この現状は,使用者がアクセスする際,体育館でも,担当部署でも即座の回答が得られず,競技特性を説明した上での判断を待つ必要が存在していた.
スポーツ基本計画である「年齢や性別,障害等を問わず,広く人々が,関心,適性等に応じてスポーツに参画することができる環境を整備すること」が,まだまだ不整備であることが窺える.また,施設のバリアフリー化は進んでいるが,施設の管理スタッフやスポーツ指導者に障がいのある人を受け入れる資質がなければ,障がいのある人がその施設を利用することは困難であることが示唆された.パラスポーツに導けるチャンスのある作業療法士や理学療法士が,市町村へ知識や経験・情報を発信する役割を担っていく必要があると考えられる.
パラスポーツを楽しもうとした際,競技用車いすの使用許可がおりない体育館が存在するが,理由は不明確なものが多い.また,競技用の車いすを保有している体育館は極めて少ない.そのため,A県内の公共施設体育館は,気軽にパラスポーツを楽しむ場とは言い難い.そこで,競技用車いすの使用可否等を調査したので報告する.
【方法】
A県内の市町村が管轄する7圏域の81公共体育施設を対象に,202X年10月 〜 202X+1年1月に電話調査を行った.調査内容は,「競技用車いすの保有台数」「競技用車いすがない場合の理由」「競技用車いすは使用可能か」「不可の場合の理由」「パラスポーツ体験会が可能か」「体験会不可の場合の理由」の6点であった.回答者は体育館指定管理者あるいは市町村の担当部署責任者である.本研究は,各体育館の回答者へ研究の概要を口頭で説明し,同意を得てから実施した.
【結果】
電話調査の回答率は100%であり,81施設が全ての質問に回答した.
全体育館で競技用車いすの保有台数は,2施設(2.5%)計17台であった.競技用車いすを保有しない理由で多かったのは,「必要性がない」「検討したこともない」が52施設(64.1%),「市町管轄部署への確認が必要で体育館の指定管理者では判断できない」が14施設(17.3%)であった.
体育館での競技用車いすは使用可能かという質問に対しては,26施設(32.1%)が可能と回答した.競技用車いすが使用不可の場合の理由については,21施設(25.9%)の体育館で「市町管轄部署への確認が必要で体育館の指定管理者では判断できない」状況にあった.また,18施設(22.2%)が「競技用車いす使用における床への影響」を考慮し使用不可であった.ただし,7施設(8.6%)では「相談の上,判断する」と回答した.
パラスポーツ体験会が可能かという質問に対しては,29施設(35.8%)が「可能」と回答した.しかし,パラスポーツ体験会不可の理由に関する質問では,7施設(8.6%)は「床への影響(強度・傷・跡)が心配」と回答し,19施設(23.5%)が「市への確認が必要」であった.また,27施設(33.3%)は「相談の上,判断する」「種目による検討が必要」と回答した.
【考察】
今回の調査では競技用車いすを保有している体育館は2施設のみであった.しかし,競技用車いすを持参すれば約3割の体育館で使用可能であることがわかった.残りの約7割の体育館では,体育館指定管理者のみでは使用判断できず,市町担当部署へ確認する必要があった.また,担当部署ではパラスポーツの競技内容が認識されていなかった.この現状は,使用者がアクセスする際,体育館でも,担当部署でも即座の回答が得られず,競技特性を説明した上での判断を待つ必要が存在していた.
スポーツ基本計画である「年齢や性別,障害等を問わず,広く人々が,関心,適性等に応じてスポーツに参画することができる環境を整備すること」が,まだまだ不整備であることが窺える.また,施設のバリアフリー化は進んでいるが,施設の管理スタッフやスポーツ指導者に障がいのある人を受け入れる資質がなければ,障がいのある人がその施設を利用することは困難であることが示唆された.パラスポーツに導けるチャンスのある作業療法士や理学療法士が,市町村へ知識や経験・情報を発信する役割を担っていく必要があると考えられる.