第58回日本作業療法学会

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[PN-2] ポスター:地域 2 

2024年11月9日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (大ホール)

[PN-2-2] 当院におけるルックスケアに関する多職種スタッフへの意識調査及び実践報告

高井 悠伽, 菊池 加寿子, 川村 朋子, 手塚 祥平, 内藤 誠二 (医療法人社団 温光会 内藤病院 医療技術部)

【はじめに】地域包括ケア病床は,急性期治療を経過した患者や在宅療養を行っている患者等の受け入れ,在宅復帰支援を担うことが役割とされている.在宅で生活するためには,セルフケアの獲得や社会参加を継続するための関わりが必要である(深澤友里ら,2023).特に女性においては過去の習慣である化粧を行うことは,自分らしさの表現につながり,社会性を取り戻すきっかけになるとされている(加藤由有ら,2005).当院では,ルックスケアとして洗顔やスキンケア,化粧,ネイル,髭剃り等を実践している.地域包括ケア病床でのルックスケアの報告は少なく,継続するためには,ルックスケアの必要性と効果を明らかにする必要がある.地域包括ケア病床立ち上げ1年未満の当院で,ルックスケアを実践した内容と,多職種スタッフにルックスケアに関する意識調査を実施した結果と課題を報告する.
【目的】ルックスケアについての多職種スタッフの意識調査を行い,現状を明らかにし,スタッフの関心や実施継続についての課題を検討することである.
【方法】デザインは,アンケート調査による横断的観察研究である.対象者は当院に勤務し,入院患者と関わりがある全職種とした.調査項目は,ルックスケアのイメージや作業療法士(OT)の活動への認知度,ルックスケアの効果や興味等とした.回答方法は,無記名で4段階の選択方式,及び自由記載とした.アンケートの配布は,研究責任者が各メールBOXへの投函し,回収方法は,回収BOXへの投函とした.統計手法は,選択式の質問項目及びルックスケアの効果については単純集計を行い,自由記載の質問項目は内容を記録した.本研究の実施に際し,倫理審査委員会で承認を得た.また,対象者にはアンケートの回答を以て同意とみなした.
【ルックスケア実践内容】OTが病前の整容習慣を本人や家族に聴取し,身体機能,認知・高次脳機能を鑑みて,個別や小集団でルックスケアを実践している.2023年6月よりルックスケアを開始し,98件実践した.当院は,病前にネイルを習慣にしていた女性患者が散見されたため,水溶性ネイルを用いた患者自身又は患者同士での塗布を実践した.水溶性ネイルの導入は,医師や看護師に塗布することが治療に支障がないこととSpO₂の測定が可能なこと等を相談・説明し,理解を得て開始した.11月より導入し,5件実践した.患者同士で実施中に「似合っているね」「あなたはこの色がいいじゃない?」等の発言が聞かれた.ネイル終了後にスタッフへ情報共有し,患者に対してポジティブな声掛けをしてもらうよう協力を依頼している.声掛けに患者は,笑顔や「このまま退院できて嬉しい」「かわいい」等の発言が聞かれた.
【アンケート結果】回収率は73.7%だった.OTによるルックスケアへの取り組みは71.4%が認知しており,ルックスケアは効果があると答えたスタッフは82.1%,興味・関心があると答えたスタッフは75.0%だった.ルックスケアの効果として意欲や気分・社会性の向上が期待されるという意見が多い一方で,実践には人手不足という意見が多かった.
【考察】当院スタッフはルックスケアの効果を理解し,OTで実践している内容について認知や興味関心がある一方で,人手不足という課題がある.また,意識調査を行ったことでルックスケアの方法伝達や普及には至っていないことも明らかとなった.今後,多職種連携やルックスケアの理解・関心の視覚化,患者のルックスケア自立のための環境設定や声掛けを実践しチームアプローチの向上を図りたい.入院中のルックスケアによる自己認識の改善や,自分らしさ・社会性の再獲得を促すことが重要と考えている.