第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-2] ポスター:地域 2 

2024年11月9日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (大ホール)

[PN-2-5] 動機付け面談により行動変容につながった事例

盛岡市通所型短期集中予防サービス(リエイブルメント)

佐藤 伸和1, 澤口 裕樹1, 藤澤 勇2, 西川 結友2, 澤藤 峰香3 (1.医療法人謙和会荻野病院, 2.盛岡市 保健福祉部長寿社会課, 3.浅岸和敬荘地域包括支援センター)

【はじめに】リエイブルメントとは,「再び自分でできるようにする」ことを意味し,近年注目されている取り組みで,①生活のしずらさを解消,②セルフマネジメントができる,③地域資源を活用した元の生活への復帰を目的とする.R5年度より岩手県盛岡市は通所型短期集中予防サービス(リエイブルメントプログラム,以下,通所C)のモデル事業を開始し,当法人でも事業に参画している.通所Cは要支援1・2又は事業対象者に,週1回2時間で全12回(3ヶ月間)実施.今回,動機付け面談を中心に行動変容が得られた1事例を以下に報告をする.尚,発表に対し事例と関係者及び市の同意を得ている.
【事例紹介】80代女性,身長153cm,体重47kg,BMI=20.要支援1,夫と2人暮らし.現病歴は腰部脊柱管狭窄症,椎間板ヘルニア.X年より足の疼痛あり,立位での調理や徒歩での買い物が困難.X+1年C市立病院受診し,椎間板ヘルニアを治療したが疼痛は残存,以前より活動できるが不自由さが残る.X−1年までは家事全般を行い,夫との散歩やバス旅行で演劇鑑賞,友人とコーラス活動.遠方の娘が両親の生活の不活発さを心配,地域包括支援センターに相談し通所Cに参加する運びとなった.
【初回評価】主訴は「以前の様に歩けない,これなら死んだ方がましだ」.握力右:20.4kg,左:17.8kg,開眼片脚立位右:12.35秒,左10.36秒,CS-30:8回,TUG:13.45秒,疼痛は腰部と右下腿,全身の筋力低下あり.FaceScale(以下,FS):2,老年期うつ病評価尺度(以下,GDS):9点.歩行への自信低下が顕著.老健式活動能力指標:9/13点,FAI:35/45点.家事は休憩を挟みながら実施.重労働の家事は困難.負けず嫌いで二極化思考.夫も同時期に通所C参加.
【計画】期間はX年+1年9月〜11月の週1回3ヶ月間.1週間の様子を伺い動機付け面談を実施する.目標は「趣味活動(コーラス)の再開や,夫との外出機会が増える」とした.
【経過】1ヶ月目:座位で行えるストレッチの運動習慣が定着.疼痛も変動あり,午後に外出すると楽と気付く.敬老会に徒歩で参加できた.2ヶ月目:立位での下肢筋力トレーニング追加.大物の洗濯物を2階に干すことができた.台所の換気扇のスイッチに爪先立ちで届いた.ウォーキングも始め,知人に誘われ体操教室に通い始めた.夫とバス旅行で演劇鑑賞を楽しめた.3ヶ月目:小枝切りや落ち葉掃除等を再開した.夫と数回外食に出掛けた.コーラス仲間から,誘いの声をかけられた.介護保険の更新は「歩けるようになったから必要ない.」と希望しなかった.
【結果】握力右:23.0kg,左:21.5kg,開眼片脚立位右:18.12秒,左10.22秒,CS-30:13回,TUG:10.15秒,右下腿の疼痛は残存.FS:1,GDS:1点.老健式活動能力指標:12/13点,FAI:37/45点.歩行の自信が高まり活動範囲が拡大した.趣味活動の再開は未達成であるが,夫と外出機会が増え体操教室などの地域の社会資源にも結びついた.「打ちひしがれていた自分であったが,お陰で行動力が得られました.」と感想が聞かれた.
【考察】運動習慣の定着や,疼痛の付き合い方に気付き,セルフマネジメントを獲得したことで,家事動作の質的変化や,活動範囲の拡大につながった.個人・環境の特性を把握しながらの動機付け面談にて,主体性が引き出され,活動と社会参加の好循環を生み,行動変容につながったと考える.自立支援に向けて作業療法士の強みを活かせる事業であると感じた.また,事例は介護認定更新を希望しなかったことから,本事業の発展は高齢者の自立支援や生活の質向上に結びつくとともに,結果として介護認定率の抑制や,介護給付費の削減などにも期待できる.