[PN-3-10] 食事用自助具の耐久性を検証した事例
業務用洗浄機と乾燥機を使用した洗浄テスト
【はじめに】
当院では,食事用自助具(以下,自助具)を使用しADL評価に関わっている作業療法士が少なく,理由を調査したところ,自助具が臨床で使い難い事や,患者に貸し出すルールが部門内で未整備である点が要因である事が分かった.そこで,臨床に適した自助具を導入する運びとなり,自助具の洗浄には栄養科の協力が得られ,使用した自助具の洗浄は栄養科が担当する事となった.合わせて自助具の耐久性を確認する事となり,業務用洗浄機と乾燥機を使用した全70回の洗浄テスト(以下,テスト)を実施した結果について報告する.
【目的】
自助具を患者に貸し出すにあたり,コロナ禍が契機となり衛生面の対応を厳格にする必要があった.栄養科に自助具の洗浄をしてもらえる事になり,洗浄回数の増加が予想され,業務用洗浄機と乾燥機を使用する点からも耐久性の面が懸念された為テストを実施する事となった.
【方法】
1.臨床に適した自助具の導入に向けて.自助具を使用したADL評価について部門内でアンケートを実施し問題点を把握した.結果をもとに臨床に適した物を補充する検討を実施した.
2.自助具を臨床で活用する上で,衛生管理は重要であり,コロナ禍も影響し従来の管理より安全性の高い方法を検討する事となった.しかし,衛生管理はリハビリテーション科だけでは取り組めない内容もあり,使用した自助具を衛生的に使用する為に栄養科にて洗浄してもらう事となった.洗浄を行うにあたり,自助具が業務用洗浄機と乾燥機に耐えられるか懸念がありテストを実施した.
方法は,新規導入する自助具に類似した既存の自助具で貸し出し頻度が多いと予想される8品(コップ2種,汁椀,大皿,介助スプーン4種)を対象とし栄養科の業務用洗浄機と乾燥機を使用(約60〜65℃で洗浄,洗浄後は約90℃で60〜90分間の乾燥).洗浄前後に目視,触手確認,写真記録.期間は2023年5月から2024年5月の間に週2回の頻度で全100回の実施予定.抄録登録時点では70回実施した内容である.尚,本発表は倫理的配慮に関し該当せず,開示すべき利益相反はない.
【結果】
当院は重症心身障害者病棟(以下,重心病棟)があり,重心病棟で使用した介助スプーンは3回目の洗浄で口元が触れる「さじ」の部分に変色とベタつきが生じ,4回目以降は対象から除外した.また,お湯で持ち手が変形できる介助スプーンは,特性上変形したが,使用できない変形では無い為対象として継続した.経過の中で自助具を患者に貸し出すルールが整備され,新規導入した自助具も臨床で使用されるようになり,使用後はテスト対象とし変化を確認したが支障なく経過している.
【考察】
重心病棟で使用したスプーンは,疾患特性から「さじ」の部分を噛む頻度が高く,素材がやわらかい「ポリプロピレン」,「熱可塑性エラストマー」を使用したスプーンであった.デンプンやたんぱく質などの汚れは,乾燥固化すると落ちにくくなるとされており,脂分の融解温度は約60度とされ,洗浄温度が60度を超えると油脂分が融解し,洗浄能力が伸びるが,噛まれた事で隙間に残った汚れが温度を上げれば固まる性質に起因し変色とベタつきが生じたと考えられる.既存の自助具が業務用洗浄機と乾燥機による洗浄と乾燥に耐えられ,新規導入した自助具も使用毎にテスト対象としたが問題なく経過し,一般家庭などの食洗機を使用しても一定の耐久性が保障できると推測される.また,自助具管理の為にラベルしたが,洗浄や乾燥に耐えられやすい工夫が発見できた事は成果の一つであった.そして,テストで自助具の耐久性が確認できた点は,栄養科との連携によるメリットと考えられる.
当院では,食事用自助具(以下,自助具)を使用しADL評価に関わっている作業療法士が少なく,理由を調査したところ,自助具が臨床で使い難い事や,患者に貸し出すルールが部門内で未整備である点が要因である事が分かった.そこで,臨床に適した自助具を導入する運びとなり,自助具の洗浄には栄養科の協力が得られ,使用した自助具の洗浄は栄養科が担当する事となった.合わせて自助具の耐久性を確認する事となり,業務用洗浄機と乾燥機を使用した全70回の洗浄テスト(以下,テスト)を実施した結果について報告する.
【目的】
自助具を患者に貸し出すにあたり,コロナ禍が契機となり衛生面の対応を厳格にする必要があった.栄養科に自助具の洗浄をしてもらえる事になり,洗浄回数の増加が予想され,業務用洗浄機と乾燥機を使用する点からも耐久性の面が懸念された為テストを実施する事となった.
【方法】
1.臨床に適した自助具の導入に向けて.自助具を使用したADL評価について部門内でアンケートを実施し問題点を把握した.結果をもとに臨床に適した物を補充する検討を実施した.
2.自助具を臨床で活用する上で,衛生管理は重要であり,コロナ禍も影響し従来の管理より安全性の高い方法を検討する事となった.しかし,衛生管理はリハビリテーション科だけでは取り組めない内容もあり,使用した自助具を衛生的に使用する為に栄養科にて洗浄してもらう事となった.洗浄を行うにあたり,自助具が業務用洗浄機と乾燥機に耐えられるか懸念がありテストを実施した.
方法は,新規導入する自助具に類似した既存の自助具で貸し出し頻度が多いと予想される8品(コップ2種,汁椀,大皿,介助スプーン4種)を対象とし栄養科の業務用洗浄機と乾燥機を使用(約60〜65℃で洗浄,洗浄後は約90℃で60〜90分間の乾燥).洗浄前後に目視,触手確認,写真記録.期間は2023年5月から2024年5月の間に週2回の頻度で全100回の実施予定.抄録登録時点では70回実施した内容である.尚,本発表は倫理的配慮に関し該当せず,開示すべき利益相反はない.
【結果】
当院は重症心身障害者病棟(以下,重心病棟)があり,重心病棟で使用した介助スプーンは3回目の洗浄で口元が触れる「さじ」の部分に変色とベタつきが生じ,4回目以降は対象から除外した.また,お湯で持ち手が変形できる介助スプーンは,特性上変形したが,使用できない変形では無い為対象として継続した.経過の中で自助具を患者に貸し出すルールが整備され,新規導入した自助具も臨床で使用されるようになり,使用後はテスト対象とし変化を確認したが支障なく経過している.
【考察】
重心病棟で使用したスプーンは,疾患特性から「さじ」の部分を噛む頻度が高く,素材がやわらかい「ポリプロピレン」,「熱可塑性エラストマー」を使用したスプーンであった.デンプンやたんぱく質などの汚れは,乾燥固化すると落ちにくくなるとされており,脂分の融解温度は約60度とされ,洗浄温度が60度を超えると油脂分が融解し,洗浄能力が伸びるが,噛まれた事で隙間に残った汚れが温度を上げれば固まる性質に起因し変色とベタつきが生じたと考えられる.既存の自助具が業務用洗浄機と乾燥機による洗浄と乾燥に耐えられ,新規導入した自助具も使用毎にテスト対象としたが問題なく経過し,一般家庭などの食洗機を使用しても一定の耐久性が保障できると推測される.また,自助具管理の為にラベルしたが,洗浄や乾燥に耐えられやすい工夫が発見できた事は成果の一つであった.そして,テストで自助具の耐久性が確認できた点は,栄養科との連携によるメリットと考えられる.