[PN-3-4] ファイブ・コグバージョン2の可能性
<はじめに>
高齢者の認知機能を測る検査は多数存在する.軽度認知障害をスクリーニングする検査で有名なものとして「ファイブ・コグ」「Montreal Cognitive Assessment(MoCA)」がある.MoCAは多数の言語に翻訳され60か国以上で使用されており,視覚障害者用,低教育歴者向けなどバリエーションも豊富にあり,反復効果を避けるため,バージョン2・バージョン3が開発されている.
ファイブ・コグは2006年に矢冨らによって開発され,感度・特異度が確認されている(矢冨ら,2006)(矢冨,2010).
高齢者の認知機能を同じ検査を使って測る際は反復効果を考慮しないといけない.反復効果とは,複数回の検査の反復による学習効果である.しかし,ファイブ・コグにはMoCAのようなバージョン2が存在しない.そこで,今回,ファイブ・コグ手かがり再生課題のバージョン2の検討を試みた.ここに報告する.
<対象および方法>
対象はH町在住の高齢者50名である.男性7名・女性43名,平均年齢は75.4歳(幅69~86歳),教育年数は平均11.8年(幅6~16年)であった.
実施したファイブ・コグは軽度認知機能低下を検出することを目的に開発された高齢者用認知機能検査で,記憶・注意・言語・視空間認知・思考を測定することができる.高齢者の認知機能は年齢と教育年数の影響を受けやすいが,ファイブ・コグは各課題の結果を年齢,教育年数,性別で調整した標準化得点である偏差値として算出できる(杉山ら,2015).
ファイブコグバージョン2はファイブ・コグ開発者である矢冨が提案した第2の手かがり再生課題でカテゴリー「衣類」「昆虫」「ドリンク」「文房具」「野菜」「乗り物」「鳥」「電化製品」で構成されている全32単語である.このファイブ・コグをX年4月に,ファイブ・コグバージョン2をX年5月に施行した.
この2つの検査をSpearmanの検定を用いて統計学的処理を行なった.使用した統計ソフトはStat Viewである.
なお,実施にあたっては対象者から口頭にて同意を得た.また,当院倫理委員会(2023年12月20日)の承認も得ている.
<結果>
ファイブ・コグ手かがり再生課題の中央値は64.5点であった.ファイブ・コグバージョン2手かがり再生課題の中央値は62.0点であった.
ファイブ・コグとファイブ・コグバージョン2手かがり再生課題の相関をみたところ,
P<0.0001,r=0.806と強い相関関係がみられた.
<考察>
今回,ファイブ・コグバージョン2を作成し,ファイブ・コグとの相関をみたところ,強い相関関係がみられたことからファイブ・コグバージョン2は使用可能性が示唆された.
ファイブ・コグと同様に地域で汎用されているMoCA-Jは3年後の反復効果を検証し,「合計点では変化なかった(鈴木ら,2015).」ものの,6年間では「記憶課題の単語を適宜,変更する工夫が必要だった(鈴木ら,2018).」ことから,MoCA-J日本語版第2版,第3版や感覚障害が多い高齢者のために視覚障害用日本語版,聴覚障害用日本語版の完成に向け,研究開発が進んでいる.ファイブ・コグは個別で行なうMoCA-Jと比べ集団での検査が行なえるため,地域での施行に向いていることから正式なファイブ・コグバージョン2の開発が待たれる.
高齢者の認知機能を測る検査は多数存在する.軽度認知障害をスクリーニングする検査で有名なものとして「ファイブ・コグ」「Montreal Cognitive Assessment(MoCA)」がある.MoCAは多数の言語に翻訳され60か国以上で使用されており,視覚障害者用,低教育歴者向けなどバリエーションも豊富にあり,反復効果を避けるため,バージョン2・バージョン3が開発されている.
ファイブ・コグは2006年に矢冨らによって開発され,感度・特異度が確認されている(矢冨ら,2006)(矢冨,2010).
高齢者の認知機能を同じ検査を使って測る際は反復効果を考慮しないといけない.反復効果とは,複数回の検査の反復による学習効果である.しかし,ファイブ・コグにはMoCAのようなバージョン2が存在しない.そこで,今回,ファイブ・コグ手かがり再生課題のバージョン2の検討を試みた.ここに報告する.
<対象および方法>
対象はH町在住の高齢者50名である.男性7名・女性43名,平均年齢は75.4歳(幅69~86歳),教育年数は平均11.8年(幅6~16年)であった.
実施したファイブ・コグは軽度認知機能低下を検出することを目的に開発された高齢者用認知機能検査で,記憶・注意・言語・視空間認知・思考を測定することができる.高齢者の認知機能は年齢と教育年数の影響を受けやすいが,ファイブ・コグは各課題の結果を年齢,教育年数,性別で調整した標準化得点である偏差値として算出できる(杉山ら,2015).
ファイブコグバージョン2はファイブ・コグ開発者である矢冨が提案した第2の手かがり再生課題でカテゴリー「衣類」「昆虫」「ドリンク」「文房具」「野菜」「乗り物」「鳥」「電化製品」で構成されている全32単語である.このファイブ・コグをX年4月に,ファイブ・コグバージョン2をX年5月に施行した.
この2つの検査をSpearmanの検定を用いて統計学的処理を行なった.使用した統計ソフトはStat Viewである.
なお,実施にあたっては対象者から口頭にて同意を得た.また,当院倫理委員会(2023年12月20日)の承認も得ている.
<結果>
ファイブ・コグ手かがり再生課題の中央値は64.5点であった.ファイブ・コグバージョン2手かがり再生課題の中央値は62.0点であった.
ファイブ・コグとファイブ・コグバージョン2手かがり再生課題の相関をみたところ,
P<0.0001,r=0.806と強い相関関係がみられた.
<考察>
今回,ファイブ・コグバージョン2を作成し,ファイブ・コグとの相関をみたところ,強い相関関係がみられたことからファイブ・コグバージョン2は使用可能性が示唆された.
ファイブ・コグと同様に地域で汎用されているMoCA-Jは3年後の反復効果を検証し,「合計点では変化なかった(鈴木ら,2015).」ものの,6年間では「記憶課題の単語を適宜,変更する工夫が必要だった(鈴木ら,2018).」ことから,MoCA-J日本語版第2版,第3版や感覚障害が多い高齢者のために視覚障害用日本語版,聴覚障害用日本語版の完成に向け,研究開発が進んでいる.ファイブ・コグは個別で行なうMoCA-Jと比べ集団での検査が行なえるため,地域での施行に向いていることから正式なファイブ・コグバージョン2の開発が待たれる.