第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

地域

[PN-3] ポスター:地域 3 

Sat. Nov 9, 2024 12:30 PM - 1:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PN-3-8] 作業バランス質問紙(Occupational Balance Questionnaire)の日本在住者の得点傾向

小林 法一, 山田 優樹 (東京都立大学 人間健康科学研究科)

【はじめに】
 作業療法の重要な概念の一つに作業バランス(Occupational Balance;以下,OB)がある.OBは人の健康やQOLとの関連が指摘されている.また個人の日常生活を構成する作業全体に着目した概念であることら,特に作業的生活の構築を目指す作業療法においては,有力な評価尺度として期待される.しかし,作業バランスを測定するための定義や数値化する手法についてのコンセンサスが十分に得られていない指摘があり,わが国でもあまり利用を見掛けない.こうした中,Wagmanらが開発した作業バランス質問紙(Occupational Balance Questionnaire:以下,OBQ)が注目されている.OBQは11のシンプルな質問項目で構成され,尺度の一次元性が確認されている.すでに世界10カ国語のバージョンが存在し,疫学的研究でも活用されている.最近,日本語版も発表され今後の有効活用が望まれる.しかし我が国でのOBQの普及に向けては,日本在住者の得点分布や属性別の得点など基礎的なデータが不足している状況にある.
【目的】
 本研究の目的は,日本在住者のOBQ得点の基礎的データを示すことである.本研究の成果は,今後の日本におけるOBQを用いた研究やクライエント評価の結果の解釈に役立つ.
【方法】
 対象は日本で暮らす20歳代から60歳代までの男女各200名,合計2,000名である.調査はWebアンケートツール(アイブリッジ株式会社:Freeasy)を使用して実施した.アンケート会社を通じてモニタ登録者に研究協力の告知文を提示し,同意の得られた者を分析対象とした.アンケート項目は,回答者の年齢,性別,職業などの基本情報および,日本語版作業バランス質問紙(山田ら,作業療法43巻1号)である.その他に,「現在の生活に概ね満足している(生活満足度)」,「家庭生活に満足している(家庭生活満足度)」,「仕事に満足している(仕事満足度)」について,[全くそう思わない・そう思わない・そう思う・とてもそう思う]の4段階で回答を求めた.なお本研究は所属機関の研究倫理審査委員会で承認を得ている.
【結果】
 対象者2,000名(男1,000 女1,000)の婚姻状況は,既婚899名(408,491)であった.就業状況は常勤921,パート265,自営152,無職551,学生67,その他44名であった.OBQの得点結果は,全体平均17.6±5.44(男17.4±5.24,女17.7±5.44),年代別平均は,20/30/40/50/60/歳代それぞれ,男17.4 / 18.0 / 16.8 / 16.9 / 17.2 / 18.2,女17.7 / 17.9 / 17.5 / 17.0 / 17.8 / 18.5で,60歳代の平均値が若干高かった.就業状況別の平均値は,常勤から順に17.4 / 18.2 / 17.5 / 17.6 / 18.1 / 16.9であった.婚姻状況別では既婚18.3/未婚17.0,子供有無では,有18.1/無し16.7で男女とも同様の傾向であった.OBQ得点との相関については,相関係数が生活満足度.646(n=2,000),家庭生活満足度.579(n=2,000),仕事満足度.481(n=921)で,すべて有意な相関(p<.000)が認められた.
【考察】
 日本在住者のOBQ得点の概況を示すことができた.OBQの得点は,年代や性別にあまり影響されず,平均で17点前後であると考えられた.生活満足度との間に有意な相関が認められたことから,QOLの向上を意図した作業療法の効果指標に適している可能性が示唆された.