[PN-4-1] 作業療法を活かした農福連携
多様な人財が活躍する農園
"【序論】作業療法士だった私が株式会社笠間農園(以下,本農園とする)で,農福連携という形で障害をもった方々の就労支援に約7年間携わってきた.本農園では高齢化が進み,農繁期の人手不足に課題があった.ちょうどその頃,近隣の就労支援事業所から「障害者に農作業をさせてほしい」と依頼があり受け入れが始まった.個々の利用者に対し,能力分析を行い,作業工程を細分化し,人と農作業を的確にマッチングさせることにより,障害者の地域参加による就労,農業の発展に関わることができたため,考察を加え報告する.
【目的】健常者しかいなかった本農園で,どのようなアプローチを行うことで障害者がどのように活躍できたかを示し,これからの農福連携の発展や共生社会の広がりを目的とする.
【方法】本農園は,石川県内灘町にあり葉物野菜を中心に生産している農家である.枝豆や人参,里芋など季節に合わせた野菜も作っており,農繁期には非常に忙しくなる.農福連携には2017年から取り組み,現在,年間7つの就労支援事業所が仕事を請け負っている.本農園での農福連携の課題としては,請け負ってもらう作業の量や種類が期待より少ないことだった.そこで利用者の評価や,各農作業工程を作業分析し,それぞれに適した農作業をアプローチし,2つの事業所の本農園での農作業の量や種類を5年間調べた.
【結果】2事業所について,介入後より5年間の経過について記す.
1.N事業所について
農作業を細分化し,得意な作業を繰り返し行うことで作業速度が上がった.また,判断が必要なものを可視化することで判断力が向上するなど,初年度から4年間で4倍もの仕事量に増加した.また4年目に作業場や休憩所を整備し,5年目では通年で作業可能となり,請け負ってもらう作業種類が2倍となり,就労時間は約3倍,全体の仕事量は7倍に拡大した.
2.S事業所について
年々担ってもらう仕事量が増え,請負報酬で比較すると5倍以上となった.主な農作業である葉物野菜の収穫では,作業姿勢を改善し,治具を工夫することで,1日平均収穫量が3倍となった.また,農作業の種類は1種類から4種類に増えた.S事業所が主体となって作物を栽培するなど,最近では本農園にとって主力的な存在となっている.
【考察】今回,障害者の農作業における作業量の増大・作業種類の拡大に繋がった理由として,人と作業,そして環境を的確にマッチングできたことだと考えられる.本農園にとっては,人手を確保できたことで仕事が安定し販路先を変更することが出来た.そのことで,農産物の価格決定権を得られるようになり,新たな作物の生産に挑戦できるようにもなった.また,従業員にとって障害者とともに働くことへの理解や協調性が生まれ,評価や工夫が身に付き,共生社会が生まれていると感じる.近年,国全体でも農福連携を推奨している.今回,作業療法士の専門性を活かすことで,障害者も農業分野で活躍でき,農業の発展につながるとわかった.今後は障害者への働く場の提供に加え,居場所ややりがいなどの社会参加に繋げ,本来のQOL向上を目指す.それが共生社会の広がりになるよう,今後も努めていきたい.
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【目的】健常者しかいなかった本農園で,どのようなアプローチを行うことで障害者がどのように活躍できたかを示し,これからの農福連携の発展や共生社会の広がりを目的とする.
【方法】本農園は,石川県内灘町にあり葉物野菜を中心に生産している農家である.枝豆や人参,里芋など季節に合わせた野菜も作っており,農繁期には非常に忙しくなる.農福連携には2017年から取り組み,現在,年間7つの就労支援事業所が仕事を請け負っている.本農園での農福連携の課題としては,請け負ってもらう作業の量や種類が期待より少ないことだった.そこで利用者の評価や,各農作業工程を作業分析し,それぞれに適した農作業をアプローチし,2つの事業所の本農園での農作業の量や種類を5年間調べた.
【結果】2事業所について,介入後より5年間の経過について記す.
1.N事業所について
農作業を細分化し,得意な作業を繰り返し行うことで作業速度が上がった.また,判断が必要なものを可視化することで判断力が向上するなど,初年度から4年間で4倍もの仕事量に増加した.また4年目に作業場や休憩所を整備し,5年目では通年で作業可能となり,請け負ってもらう作業種類が2倍となり,就労時間は約3倍,全体の仕事量は7倍に拡大した.
2.S事業所について
年々担ってもらう仕事量が増え,請負報酬で比較すると5倍以上となった.主な農作業である葉物野菜の収穫では,作業姿勢を改善し,治具を工夫することで,1日平均収穫量が3倍となった.また,農作業の種類は1種類から4種類に増えた.S事業所が主体となって作物を栽培するなど,最近では本農園にとって主力的な存在となっている.
【考察】今回,障害者の農作業における作業量の増大・作業種類の拡大に繋がった理由として,人と作業,そして環境を的確にマッチングできたことだと考えられる.本農園にとっては,人手を確保できたことで仕事が安定し販路先を変更することが出来た.そのことで,農産物の価格決定権を得られるようになり,新たな作物の生産に挑戦できるようにもなった.また,従業員にとって障害者とともに働くことへの理解や協調性が生まれ,評価や工夫が身に付き,共生社会が生まれていると感じる.近年,国全体でも農福連携を推奨している.今回,作業療法士の専門性を活かすことで,障害者も農業分野で活躍でき,農業の発展につながるとわかった.今後は障害者への働く場の提供に加え,居場所ややりがいなどの社会参加に繋げ,本来のQOL向上を目指す.それが共生社会の広がりになるよう,今後も努めていきたい.
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