[PN-4-5] 当院における自動車運転評価結果の傾向分析
ドライビングシミュレータでの評価に焦点を当てて
"【はじめに】
近年,自動車運転評価や支援の場において,ドライビングシミュレータ(以下,DS)の活用が増えてきている¹⁾.大熊らは,自動車運転再開可否判定とDS(Hondaセーフティナビ)による結果との関連から,カットオフ値を算出している²⁾.今回,当院におけるDSによる評価結果を大熊らの先行研究と比較し,分析したため,考察を加えて報告する.
【対象と方法】
対象は2023年1月から6月までの間,当院においてDSによる自動車運転評価を行い,退院後の実生活で自動車運転を再開している者とした.先行研究に倣い,運転反応検査の4項目13種類,選択反応検査と注意配分・複数作業検査の各誤反応合計回数(以下,誤反応合計),総合学習体験の各項目18種類,発進停止の下位検査項目の合計回数(以下,発進停止合計),全般の下位検査項目の合計回数(以下,全般合計),各項目の5段階評定を数値化した合計点数(以下,判定得点合計)を検討項目とした.これらを先行研究の運転再開群の成績と比較した.また先行研究で算出された誤反応合計,発進停止合計,全般合計,判定得点合計のカットオフ値を当院の結果と比較した.尚,本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】
本研究の対象者は32名(男性25名,女性7名),平均年齢は53.7±14.1歳,疾患は脳血管疾患,整形外科疾患,神経難病等だった.当院の結果は,選択反応検査の誤反応,注意配分・複数作業検査の誤反応,誤反応合計,総合学習体験の全般合計,判定得点合計において,先行研究の運転再開群よりも良好な成績だった.カットオフ値との比較では,誤反応合計が6.69±4.93回(カットオフ値:17回),発進停止合計が1.56±1.84回(カットオフ値:2回),全般合計が0.65±0.90回(カットオフ値:4回),判定得点合計が9.47±2.82点(カットオフ値:17点)だった.
【考察】
当院の結果は,選択反応検査の誤反応,注意配分・複数作業検査の誤反応,誤反応合計,総合学習体験の全般合計,判定得点合計において,先行研究の運転再開群よりも良好な成績であり,誤反応合計,全般合計,判定得点合計はカットオフ値よりも良好な成績だった.先行研究の運転再開群は医師が運転再開可能と判断した者だが,本研究の対象者は医師の判断に加え,実生活で自動車運転を再開している者である.そのため誤反応合計,全般合計,判定得点合計が,実生活での運転により強く関係していると考える.また当院では,脳卒中,脳外傷等により高次脳機能障害が疑われる場合の自動車運転に関する神経心理学的検査の適応と判断に準じて脳損傷者の評価を行い,一定の基準を満たした者がDSでの評価を行っているため,対象者が一定以上の認知,判断能力を有していたと考える.さらに整形外科疾患,神経難病等の脳損傷を伴わない疾患が含まれていたことが,成績が良好であった要因だと考える.
【文献】
1)外川 佑:作業療法におけるテクノロジーの活用 第5回ドライビングシミュレータの活用.作業療法ジャーナル57(2):156-160,2023.
2)大熊 諒,他:脳損傷者のドライビングシミュレータ—による評価と運転再開可否判定の関係性~運転再開可否判定の予測に向けた基準値の検討~.作業療法39(2):202-209,2020."
近年,自動車運転評価や支援の場において,ドライビングシミュレータ(以下,DS)の活用が増えてきている¹⁾.大熊らは,自動車運転再開可否判定とDS(Hondaセーフティナビ)による結果との関連から,カットオフ値を算出している²⁾.今回,当院におけるDSによる評価結果を大熊らの先行研究と比較し,分析したため,考察を加えて報告する.
【対象と方法】
対象は2023年1月から6月までの間,当院においてDSによる自動車運転評価を行い,退院後の実生活で自動車運転を再開している者とした.先行研究に倣い,運転反応検査の4項目13種類,選択反応検査と注意配分・複数作業検査の各誤反応合計回数(以下,誤反応合計),総合学習体験の各項目18種類,発進停止の下位検査項目の合計回数(以下,発進停止合計),全般の下位検査項目の合計回数(以下,全般合計),各項目の5段階評定を数値化した合計点数(以下,判定得点合計)を検討項目とした.これらを先行研究の運転再開群の成績と比較した.また先行研究で算出された誤反応合計,発進停止合計,全般合計,判定得点合計のカットオフ値を当院の結果と比較した.尚,本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】
本研究の対象者は32名(男性25名,女性7名),平均年齢は53.7±14.1歳,疾患は脳血管疾患,整形外科疾患,神経難病等だった.当院の結果は,選択反応検査の誤反応,注意配分・複数作業検査の誤反応,誤反応合計,総合学習体験の全般合計,判定得点合計において,先行研究の運転再開群よりも良好な成績だった.カットオフ値との比較では,誤反応合計が6.69±4.93回(カットオフ値:17回),発進停止合計が1.56±1.84回(カットオフ値:2回),全般合計が0.65±0.90回(カットオフ値:4回),判定得点合計が9.47±2.82点(カットオフ値:17点)だった.
【考察】
当院の結果は,選択反応検査の誤反応,注意配分・複数作業検査の誤反応,誤反応合計,総合学習体験の全般合計,判定得点合計において,先行研究の運転再開群よりも良好な成績であり,誤反応合計,全般合計,判定得点合計はカットオフ値よりも良好な成績だった.先行研究の運転再開群は医師が運転再開可能と判断した者だが,本研究の対象者は医師の判断に加え,実生活で自動車運転を再開している者である.そのため誤反応合計,全般合計,判定得点合計が,実生活での運転により強く関係していると考える.また当院では,脳卒中,脳外傷等により高次脳機能障害が疑われる場合の自動車運転に関する神経心理学的検査の適応と判断に準じて脳損傷者の評価を行い,一定の基準を満たした者がDSでの評価を行っているため,対象者が一定以上の認知,判断能力を有していたと考える.さらに整形外科疾患,神経難病等の脳損傷を伴わない疾患が含まれていたことが,成績が良好であった要因だと考える.
【文献】
1)外川 佑:作業療法におけるテクノロジーの活用 第5回ドライビングシミュレータの活用.作業療法ジャーナル57(2):156-160,2023.
2)大熊 諒,他:脳損傷者のドライビングシミュレータ—による評価と運転再開可否判定の関係性~運転再開可否判定の予測に向けた基準値の検討~.作業療法39(2):202-209,2020."