[PN-5-1] 就労支援の三者面談を経て,症例が就労可能となった事例.
【はじめに】
作業療法士,症例,施設側と3者面談を行い,情報提供を行ったことで,就労が可能となった.ここにその作業療法過程と若干の考察を加え報告する.尚,報告に際し患者本人に同意を得ている.
【症例紹介】
30歳代女性(以下,A氏),右利き,職業は理学療法士であり,身障分野で働いていた.夫と2人暮らし.左母指球を包丁で切り,左母指神経を切断した.左母指神経を人工神経で縫合し,数か月後に仕事復帰した.母指は動くが疼痛,痺れが出現したため再度当院を受診した.人工神経が断裂している可能性があると説明を受け,A氏の希望もあり職場を休職し再手術を行った.人工神経は断裂しており,新しい人工神経を縫合した.術後は3週間サムスパイカで固定しており,術後1か月目より作業療法開始した.
【術前評価】
QuickDASH(以下,QD):機能障害/症状46点,grip:右36.5kg/左6.5kg,pinch:右4.5kg/左1.0kg,VAS82mm,精密知覚検査(以下,SWT):右正常/左神経切断部遠位より防御性知覚脱失,母指可動域(自動):右制限なし/左掌側外転70°と筋力低下,疼痛,知覚脱失,軽度の母指可動域制限が認められた.
【作業療法経過】
作業療法開始から1か月目(術後2か月目)
この時期に退職した.術後評価でVAS:32mm,SWTは防御性知覚低下と疼痛軽減,知覚が改善していた.サムスパイカ装着後の母指拘縮に対し,母指可動域拡大を図り,リハ対応時間以外でリハ室にてgrip練習,手指巧緻性練習,知覚再教育練習を中心に行った.
作業療法開始から2か月目(術後3か月目)
左母指掌側外転:85°となり,ADL,IADL上では,左手を使用できいた.QD:6点と改善し,この時期に就労の希望が聞かれる一方で「仕事を始めてから,神経を切ったから復帰するのが怖い」と発言していた.就労する意欲はあるが,仕事をすることに不安を抱いていた.
作業療法開始から3か月目(術後4か月目)
SWTは改善しているが,知覚は正常,触覚低下と混在していた.grip:左32.6kg,pinch:左4.0kg,VAS:11mmとgrip,pinch力向上,疼痛が軽減していた.A氏から就職するための面談を行ったとの報告を受け,面談の様子を尋ねると,人工神経縫合術をしているため,どの程度の仕事を任せていいのか分からず採用を悩んでいる様子であったと報告を受ける.作業療法士が,情報提供できる旨を伝えると施設側から一度会いたいと要望があり,3者面談を行った.仕事内容を聴取し,A氏に必要な作業や物品の運搬など実際に行ってもらい,能力的にも問題ないことを直接見てもらった.
施設側から採用するとの連絡があったと,A氏より伝えられ,就職した.施設長が来院し「情報提供があって,とても助かりました」と礼を言われた.
【結果】
術後4か月目に就職した.1年後にA氏に状況を確認し,業務に支障なく手を使用できているとの報告を受け,施設長からも仕事で問題になることはなかったと報告を受けた.
【考察】
田口ら(2023年)は「医療スタッフおよび勤務先企業との3者面談は, 退院後の復職に繋がる重要な情報共有の場であることが実感できた.」と報告している.就労支援にあたり,3者面談することでA氏,施設側の不安を専門知識を持っているスタッフが補完することで不安が軽減でき,就労が可能になったと考える.
作業療法士,症例,施設側と3者面談を行い,情報提供を行ったことで,就労が可能となった.ここにその作業療法過程と若干の考察を加え報告する.尚,報告に際し患者本人に同意を得ている.
【症例紹介】
30歳代女性(以下,A氏),右利き,職業は理学療法士であり,身障分野で働いていた.夫と2人暮らし.左母指球を包丁で切り,左母指神経を切断した.左母指神経を人工神経で縫合し,数か月後に仕事復帰した.母指は動くが疼痛,痺れが出現したため再度当院を受診した.人工神経が断裂している可能性があると説明を受け,A氏の希望もあり職場を休職し再手術を行った.人工神経は断裂しており,新しい人工神経を縫合した.術後は3週間サムスパイカで固定しており,術後1か月目より作業療法開始した.
【術前評価】
QuickDASH(以下,QD):機能障害/症状46点,grip:右36.5kg/左6.5kg,pinch:右4.5kg/左1.0kg,VAS82mm,精密知覚検査(以下,SWT):右正常/左神経切断部遠位より防御性知覚脱失,母指可動域(自動):右制限なし/左掌側外転70°と筋力低下,疼痛,知覚脱失,軽度の母指可動域制限が認められた.
【作業療法経過】
作業療法開始から1か月目(術後2か月目)
この時期に退職した.術後評価でVAS:32mm,SWTは防御性知覚低下と疼痛軽減,知覚が改善していた.サムスパイカ装着後の母指拘縮に対し,母指可動域拡大を図り,リハ対応時間以外でリハ室にてgrip練習,手指巧緻性練習,知覚再教育練習を中心に行った.
作業療法開始から2か月目(術後3か月目)
左母指掌側外転:85°となり,ADL,IADL上では,左手を使用できいた.QD:6点と改善し,この時期に就労の希望が聞かれる一方で「仕事を始めてから,神経を切ったから復帰するのが怖い」と発言していた.就労する意欲はあるが,仕事をすることに不安を抱いていた.
作業療法開始から3か月目(術後4か月目)
SWTは改善しているが,知覚は正常,触覚低下と混在していた.grip:左32.6kg,pinch:左4.0kg,VAS:11mmとgrip,pinch力向上,疼痛が軽減していた.A氏から就職するための面談を行ったとの報告を受け,面談の様子を尋ねると,人工神経縫合術をしているため,どの程度の仕事を任せていいのか分からず採用を悩んでいる様子であったと報告を受ける.作業療法士が,情報提供できる旨を伝えると施設側から一度会いたいと要望があり,3者面談を行った.仕事内容を聴取し,A氏に必要な作業や物品の運搬など実際に行ってもらい,能力的にも問題ないことを直接見てもらった.
施設側から採用するとの連絡があったと,A氏より伝えられ,就職した.施設長が来院し「情報提供があって,とても助かりました」と礼を言われた.
【結果】
術後4か月目に就職した.1年後にA氏に状況を確認し,業務に支障なく手を使用できているとの報告を受け,施設長からも仕事で問題になることはなかったと報告を受けた.
【考察】
田口ら(2023年)は「医療スタッフおよび勤務先企業との3者面談は, 退院後の復職に繋がる重要な情報共有の場であることが実感できた.」と報告している.就労支援にあたり,3者面談することでA氏,施設側の不安を専門知識を持っているスタッフが補完することで不安が軽減でき,就労が可能になったと考える.