第58回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-5] ポスター:地域 5

2024年11月9日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (大ホール)

[PN-5-2] 就労継続支援における段階的関係性の構築

リテラシーシートを活用したテキストマイニング分析

石川 健二1,2, 尾野藤 眞奈美2, 森田 裕一3, 飯田 泰成4, 古川 宏1 (1.大阪人間科学大学, 2.非営利活動法人スマイル工場, 3.たちばな障害者相談支援センター, 4.神戸市立友生支援学校)

【序論】近年,企業では協働による成果を得るための人材戦略の一環として,リスキリング教育が推されている.その背景に社会人基礎力が注目されており,様々な体験を通して長期的かつ一貫性のある育成が必要であるとしている(社会基礎力研究2006).障害者雇用を実践するには,障害特性の影響による行動がみられる場合,包括的実態として育成を図る必要があり,潜在する過去の体験や記憶,就労状況,職場内コミュニティとの関わり等を捉えておくことが重要である.就労現場では,当事者自身のあり方を明確にしたうえで,日々の作業場面での声掛けや援助等の些細な関わりの積み重ねが育成支援につながると考える.
【目的】本研究では,日々記録されたリテラシ—シート(以下,LS)を活用して,当事者との関係性4段階を分類し,テキストマイニングによる抽出語から関わり方の経過を検証する.
【方法】対象は事業所の継続在籍者8名(男性4名,女性4名)平均年齢40.4±15.1歳 教育年数13.2年,作業種目は,フルーツカットや配送用梱包 パーツ検品等.LSから以下の4段階の関わり方に割付け,その語録を抽出語とした.(伝達)職場の就業規則の伝達や模倣による作業手順の説明.(褒め)業務を円滑に遂行可能かつ協働者との望ましい関係を築けたとき.(見守り)当事者が主体的に就業を継続できるような支持的援助.(管理・保守)心身への影響や危機回避が必要な場面がみられたときの対応.解析方法として,段階的特徴語数,特性別特徴語数,主観的10点換算率をKH-CoderVer.3(SCREEN)により算出した.また共起ネットワークより介入前後での特徴語の関連性及び,対象者による理由記載も加えた.予め,管理者及び対象者へ本研究内容を説明し,口頭と書面にて同意を得ている.
【結果】LSからの全抽出語数は2346,頻出語は作業305,見守り97,集中77,声掛け49,支援43であり,品詞別では動詞944,名詞393,形容詞141,副詞50であった.段階的特徴語数は,伝達50,見守り145 褒め71 管理保守80.特性別特徴語数は,知的発達89 精神123 気分障害74 脳機能60.主観的10点換算率は,10満点0.50 7~9点0.34 4~6点0.06 1~3点0 0点0.08であった.その理由として・緊張したが充実できた・眠くて遅刻したが頑張った・怖さや不安を相談できた.さらに,共起ネットワークによる特徴語の関連分析では,入職当初での伝達,褒めから見守り,管理保守に関する文言へと偏向していた.一方,特性別特徴として,知的発達は注意集中を促す文言が目立ち,精神・気分障害では体調を配慮した文言が顕著であった.脳機能においては,作業手順に関する文言が多かった.
【考察】結果より,段階的及び,特性別特徴語数では,精神への見守りが高値を示し,体調に配慮した支持的援助が必要であったと推察された.また主観的満足度では,ほぼ半数は満たされている一方で,問題を抱えている者も存在していた.加えて,段階的関係性は,伝達・褒めから見守り・管理保守の経過を辿ることが明らかとなった.よって,LS解析により,日々の作業場面での関わりが可視化されたことから,支援手法の指標として有用であると考える.
 人が成長するとは,その人らしい生き方を育むことである.一方,ビジネス社会での人の成長は,企業に従事し業績を伸ばすことで社会への還元に寄与されるとしている(汐中2023).今後,障害者においても育成する仕組みを教育の場だけでなく,社会(企業)でも構築することが必要であろう.