[PN-5-4] 回復期リハビリテーション病棟における作業分析に基づいたロードマップを使用した高次脳機能障害者の就労支援
【はじめに】高次脳機能障害者の就労支援は極めて個別性が高く複雑(杉本ら,2018)である.就労のための準備や就労定着へ関わることが作業療法士(以下OTR)の就労支援領域と考えられているが,職業リハビリテーションの知識や技術などが不足しているという課題(中島ら,2021)があり,医療機関における実践報告も少ない.当院においても就労支援体制は確立されておらず,身体機能や高次脳機能,生活動作に着目した介入がほとんどで,OTRの裁量に委ねられることが多かった.そこで,目標達成までの道筋を大まかに記したロードマップ(以下RM)を作成し,OTRとしての役割を意識しながら多職種連携を行った.
【対象】50歳代女性(以下A氏),脳室内出血を発症し,第45病日に当院回復期リハビリテーション病棟へ転棟された.病前生活は弟と二人暮らし,ADL・IADLともに自立,学校の用務員の仕事を行っていた.第90病日,著明な麻痺はなく,屋内外独歩にて移動可能でFIMは113点であった.軽度記憶障害が残存,自己理解の乏しさや生活習慣の乱れ,作業効率や速度の低下等がみられた.
【方法】回復期リハビリテーション病棟転棟早期から復職を目標として社会福祉士(以下MSW)に相談しセラピスト,医師,病棟スタッフで就労支援チームを組み,就労支援を開始した.就労支援の個別性を分析するとともに職業アセスメントを行い,支援内容を細分化し就労支援におけるRMを作成した.RMをもとにOTRがコーディネーターの役割として就労支援を進めた.機能面のみならず,生活習慣や自己管理,代償手段の獲得,必要な制度の検討,休職期間など多職種へ必要な評価項目や短期目標を伝え,職種に応じた介入を行ってもらった.A氏にもRMを渡し,短期目標の設定や就労に関する評価・介入を行った.MSWにリハビリテーションの評価内容をOTRが統括して伝え,早期から事業所や就労支援機関への連携を図った.本報告は所属施設と本人の承認を得ている.
【結果】A氏は就労支援開始時,漠然とした不安はあったが「問題なく復職できる」という根拠のない自信があり,自己理解の乏しさが伺えた.また就労支援内容も不明瞭で支援チーム全体が何をどこから介入すべきか目標も曖昧な状態であった.また,事業所も受け入れたい気持ちはあるが,復職に関して不安があり消極的な印象だった.しかし,OTRがRMを使用し支援を行ったことで支援内容の大まかな道筋が明らかになり,職業的なアセスメントが詳細に行え,目標や課題が明確化された.就労支援開始から約30日目には「忘れてしまうからメモを書く.」「体力をつけることが今の目標.」など自身の課題点や目標を発言することが増えた.また,OTRが支援チームのコーディネーター役として多職種と連携を図り,5W1Hを意識し職種に応じた目標を提案したことで支援内容が明確化され,チーム全体がまとまりのある支援を行えた.最終的に事業所も復職に関して積極的な発言や不安の訴えも減少した.院内の連携に留まらず,退院後の支援先とも密に連携を図り,退院後スムーズに地域へ連携が行えた.
【考察】作業療法士の役割として作業を分析し,適応し,段階付ける技能,それに影響を及ぼす作業遂行と環境要因の分析に関する技能の重要さが指摘(西方,2008)されている.今回,仕事内容を想定し作業分析に基づいてRMを作成したことで本人や事業所への支援内容をさらに細分化でき,複雑な就労支援を本人も含めたチーム全体が包括的に捉えることが出来たと考える.
【対象】50歳代女性(以下A氏),脳室内出血を発症し,第45病日に当院回復期リハビリテーション病棟へ転棟された.病前生活は弟と二人暮らし,ADL・IADLともに自立,学校の用務員の仕事を行っていた.第90病日,著明な麻痺はなく,屋内外独歩にて移動可能でFIMは113点であった.軽度記憶障害が残存,自己理解の乏しさや生活習慣の乱れ,作業効率や速度の低下等がみられた.
【方法】回復期リハビリテーション病棟転棟早期から復職を目標として社会福祉士(以下MSW)に相談しセラピスト,医師,病棟スタッフで就労支援チームを組み,就労支援を開始した.就労支援の個別性を分析するとともに職業アセスメントを行い,支援内容を細分化し就労支援におけるRMを作成した.RMをもとにOTRがコーディネーターの役割として就労支援を進めた.機能面のみならず,生活習慣や自己管理,代償手段の獲得,必要な制度の検討,休職期間など多職種へ必要な評価項目や短期目標を伝え,職種に応じた介入を行ってもらった.A氏にもRMを渡し,短期目標の設定や就労に関する評価・介入を行った.MSWにリハビリテーションの評価内容をOTRが統括して伝え,早期から事業所や就労支援機関への連携を図った.本報告は所属施設と本人の承認を得ている.
【結果】A氏は就労支援開始時,漠然とした不安はあったが「問題なく復職できる」という根拠のない自信があり,自己理解の乏しさが伺えた.また就労支援内容も不明瞭で支援チーム全体が何をどこから介入すべきか目標も曖昧な状態であった.また,事業所も受け入れたい気持ちはあるが,復職に関して不安があり消極的な印象だった.しかし,OTRがRMを使用し支援を行ったことで支援内容の大まかな道筋が明らかになり,職業的なアセスメントが詳細に行え,目標や課題が明確化された.就労支援開始から約30日目には「忘れてしまうからメモを書く.」「体力をつけることが今の目標.」など自身の課題点や目標を発言することが増えた.また,OTRが支援チームのコーディネーター役として多職種と連携を図り,5W1Hを意識し職種に応じた目標を提案したことで支援内容が明確化され,チーム全体がまとまりのある支援を行えた.最終的に事業所も復職に関して積極的な発言や不安の訴えも減少した.院内の連携に留まらず,退院後の支援先とも密に連携を図り,退院後スムーズに地域へ連携が行えた.
【考察】作業療法士の役割として作業を分析し,適応し,段階付ける技能,それに影響を及ぼす作業遂行と環境要因の分析に関する技能の重要さが指摘(西方,2008)されている.今回,仕事内容を想定し作業分析に基づいてRMを作成したことで本人や事業所への支援内容をさらに細分化でき,複雑な就労支援を本人も含めたチーム全体が包括的に捉えることが出来たと考える.