[PN-5-6] 就労を見据えた発達障害者の化粧に関する文献レビュー
【はじめに】
2018年4月において障害者雇用促進法が改正され,障害者雇用義務の対象に発達障害者を含む精神障害者が加わった.
職業準備性として,身だしなみは獲得するべき日常生活スキルの1つであり,就労するにあたり重要な位置づけとなっている.チェックリストの項目には,スーツの着用や爪が切られているかのような「清潔さ・場面に適している服装か」や「髭等は処理しているか」と男性向けと考えられる項目が記載されており,化粧に関する内容が書かれている文献はあまり見受けられない.けれども特別支援教育でのキャリア教育の1つとして知的特別支援学校で化粧指導を行っている現状もある.
先行研究において自閉症スペクトラム障害の女性は日常生活に生きづらさに影響する特徴として「感覚的な敏感さ」を挙げ,においがダメで化粧が出来ないエピソードが語られている.また,発達障害者は発達性協調運動障害や感覚調整障害が併発する場合があり,不器用さから化粧が上手くできないケースも存在するのではないかと考えられる.
【目的】
発達障害者の化粧動作に対して各専門職がどのようなアプローチをしているか,文献レビューを行い,現在の状況を踏まえ,作業療法士としてどのような取り組みが行えるか課題を明らかにし,検討する.
【方法】
文献検索データベースは,医学中央雑誌Web(Ver.5.0)を使用し,2024年2月7日に実施した.検索キーワードは,発達障害 AND(化粧 OR 身だしなみ OR 整容)とした.年代は指定せずに会議録を除いた,原著論文および解説・総説を対象に検索した.選定基準は①対象者が発達障害であること②形成術や矯正術のような外科的治療ではなく,化粧行為を主として関わっているものとした.次に各論文から,「対象者の性別」「対象者の年齢」「介入した専門職」「化粧をする目的」「介入方法」「結果」を整理した.
【結果】
文献数は22件,抄録及び本文を確認し,選定基準を満たしたものは0件であった.化粧行為を対象とした文献は見られず,整容として髭を剃る・着替えが1人で出来るようになるといった内容の文献が散見された.また就労を目的として整容について取り組んでいる文献は1件であり,対象者の性別は男性,年齢は20代,目的として就労場面で眠気が出てしまう・髭を剃ることを忘れてしまい仕事の意識が低い・やる気がないと見なされる事例であった.介入方法としては,対象者の環境設定や整容への知識の提供になっており,感覚面や運動技能に関してアプローチをしたものではなかった.
【考察】
本研究結果から,発達障害の化粧を対象にした文献が見られなかった.原因として検索データベースで医中誌を使用しており,検索された文献は医学系が中心であった為,特別支援教育等の福祉・教育分野での取り組みを調べる必要があると考える.また,就労において対象者に合う職場選びや就労に対する意欲,生活リズムを整えること等が優先される傾向にあり,化粧をすることは後回しにされているのではないかと考えられる.けれども現在,化粧に関連した支援は化粧療法として様々な専門職が実践しており,自信や満足感,自己肯定感などを手にするような生理的・心理的ケアを目的としている.最近では社会参加に向けて化粧をプログラムとして取り入れた報告が散見されている.発達障害者の化粧に対する現状を把握し,運動機能や感覚面等幅広い範囲にアプローチができる作業療法士は何ができるのか検討することで就労支援の一助になるのではないかと考える.
2018年4月において障害者雇用促進法が改正され,障害者雇用義務の対象に発達障害者を含む精神障害者が加わった.
職業準備性として,身だしなみは獲得するべき日常生活スキルの1つであり,就労するにあたり重要な位置づけとなっている.チェックリストの項目には,スーツの着用や爪が切られているかのような「清潔さ・場面に適している服装か」や「髭等は処理しているか」と男性向けと考えられる項目が記載されており,化粧に関する内容が書かれている文献はあまり見受けられない.けれども特別支援教育でのキャリア教育の1つとして知的特別支援学校で化粧指導を行っている現状もある.
先行研究において自閉症スペクトラム障害の女性は日常生活に生きづらさに影響する特徴として「感覚的な敏感さ」を挙げ,においがダメで化粧が出来ないエピソードが語られている.また,発達障害者は発達性協調運動障害や感覚調整障害が併発する場合があり,不器用さから化粧が上手くできないケースも存在するのではないかと考えられる.
【目的】
発達障害者の化粧動作に対して各専門職がどのようなアプローチをしているか,文献レビューを行い,現在の状況を踏まえ,作業療法士としてどのような取り組みが行えるか課題を明らかにし,検討する.
【方法】
文献検索データベースは,医学中央雑誌Web(Ver.5.0)を使用し,2024年2月7日に実施した.検索キーワードは,発達障害 AND(化粧 OR 身だしなみ OR 整容)とした.年代は指定せずに会議録を除いた,原著論文および解説・総説を対象に検索した.選定基準は①対象者が発達障害であること②形成術や矯正術のような外科的治療ではなく,化粧行為を主として関わっているものとした.次に各論文から,「対象者の性別」「対象者の年齢」「介入した専門職」「化粧をする目的」「介入方法」「結果」を整理した.
【結果】
文献数は22件,抄録及び本文を確認し,選定基準を満たしたものは0件であった.化粧行為を対象とした文献は見られず,整容として髭を剃る・着替えが1人で出来るようになるといった内容の文献が散見された.また就労を目的として整容について取り組んでいる文献は1件であり,対象者の性別は男性,年齢は20代,目的として就労場面で眠気が出てしまう・髭を剃ることを忘れてしまい仕事の意識が低い・やる気がないと見なされる事例であった.介入方法としては,対象者の環境設定や整容への知識の提供になっており,感覚面や運動技能に関してアプローチをしたものではなかった.
【考察】
本研究結果から,発達障害の化粧を対象にした文献が見られなかった.原因として検索データベースで医中誌を使用しており,検索された文献は医学系が中心であった為,特別支援教育等の福祉・教育分野での取り組みを調べる必要があると考える.また,就労において対象者に合う職場選びや就労に対する意欲,生活リズムを整えること等が優先される傾向にあり,化粧をすることは後回しにされているのではないかと考えられる.けれども現在,化粧に関連した支援は化粧療法として様々な専門職が実践しており,自信や満足感,自己肯定感などを手にするような生理的・心理的ケアを目的としている.最近では社会参加に向けて化粧をプログラムとして取り入れた報告が散見されている.発達障害者の化粧に対する現状を把握し,運動機能や感覚面等幅広い範囲にアプローチができる作業療法士は何ができるのか検討することで就労支援の一助になるのではないかと考える.