[PN-5-7] 川崎市における巡回訪問支援の現状と作業療法士への期待
【はじめに】インクルージョンを背景に,その人が今いる地域で暮らせるための仕組みづくりが進められており,川崎市では障害の有無に関わらず,すべての市民を対象に地域包括ケアシステムの構築が進められている.そうした背景の中,児童発達支援センターにおいても,専門職によるアウトリーチ支援の拡充が求められている現状にある.
川崎市では保育所や幼稚園を対象に「障害児保育等巡回相談」「発達相談」「幼児教育巡回相談」といった独自の事業があるが,施設数に対して担当者の数が少なく,依頼から訪問までに時間がかかる. 川崎市中央療育センター(以下当センター)では,2022年度から訪問部を開設し,2023年度からは専門職も同行する形で巡回訪問による支援をおこなっている.
今回は当センターにおける巡回訪問支援の実態から現状を把握するとともに,作業療法士に求められる役割や期待について検討することを目的とする.
【方法】2023年度4〜12月に当センターにて巡回訪問した施設数及び児童数,相談内容について抽出し特徴をまとめた.合わせて作業療法士への依頼があった巡回訪問についても同様に検討した.なお,本発表に際し施設の同意を得た.また個人や施設が特定される情報は除外した.
【結果】2023年度当センターの巡回訪問を利用している園は保育所29施設(川崎市設置施設全体の12%),幼稚園14園(全体の58%)であった.また巡回訪問支援にて相談があった延児童数は,保育所252名(うち当センター相談歴なし174名),幼稚園307名(うち相談歴なし147名)であった.また巡回訪問にて依頼された内容は,①:対象児童の観察とフィードバック(22施設),②:職員育成のアドバイスや研修の依頼(8施設),③:①及び保護者支援の相談(5施設),④:①及び情報共有や今後の連携の進め方についての相談(4施設),⑤:上記項目全て(4施設)であった.前年度からの継続施設が約7割で,保育所は単発での依頼が多いが,幼稚園は学期ごとの依頼であった.
上記のうち,作業療法士が訪問したのは保育所2施設4名(うち相談歴なし1名)であり,いずれも食事についての相談であった.対象児の年齢は0歳児1名,3歳児3名.相談内容は,離乳食の進め方,給食の食形態の相談,食事の介助方法についてであった.
【考察】川崎市には大小様々な規模の保育所・幼稚園があり,設置数に対して実施数はまだ少ない現状にあり,今後地域への普及啓発が必要であると考える.ただし,リピート率が高いことや,毎年新規に依頼する施設があることから,事業を継続する中で地域とのつながりが広がると考える.また特に保育所では相談歴のない方が69%と多かったことから,現場の先生たちの視点による「発達が気になるお子さん」を地域で支えるための一助になると考える.さらに作業療法士への依頼があった食事に関する相談については,特に電話等では説明が伝わりづらいことも多く,その他で児童の様子を確認しながら介助・調整する,食形態の工夫について関係者を含めて相談することが,訪問支援の強みであると考える.また担任以外の栄養士や管理職といった複数人数の職員で事後のミーティングを行うことで,担任のみが抱え込むことなく,施設全体で課題を共有し解決する場としても重要であると考える.
作業療法士には,発達が気になるお子さんの地域での過ごしを支えるために,訪問する施設ごとの「ねらい」に着目しながら,児童と環境と遂行する作業とを総合的に評価分析し,現場の先生を中心に主体となって取り組める内容の助言が求められると考える.
川崎市では保育所や幼稚園を対象に「障害児保育等巡回相談」「発達相談」「幼児教育巡回相談」といった独自の事業があるが,施設数に対して担当者の数が少なく,依頼から訪問までに時間がかかる. 川崎市中央療育センター(以下当センター)では,2022年度から訪問部を開設し,2023年度からは専門職も同行する形で巡回訪問による支援をおこなっている.
今回は当センターにおける巡回訪問支援の実態から現状を把握するとともに,作業療法士に求められる役割や期待について検討することを目的とする.
【方法】2023年度4〜12月に当センターにて巡回訪問した施設数及び児童数,相談内容について抽出し特徴をまとめた.合わせて作業療法士への依頼があった巡回訪問についても同様に検討した.なお,本発表に際し施設の同意を得た.また個人や施設が特定される情報は除外した.
【結果】2023年度当センターの巡回訪問を利用している園は保育所29施設(川崎市設置施設全体の12%),幼稚園14園(全体の58%)であった.また巡回訪問支援にて相談があった延児童数は,保育所252名(うち当センター相談歴なし174名),幼稚園307名(うち相談歴なし147名)であった.また巡回訪問にて依頼された内容は,①:対象児童の観察とフィードバック(22施設),②:職員育成のアドバイスや研修の依頼(8施設),③:①及び保護者支援の相談(5施設),④:①及び情報共有や今後の連携の進め方についての相談(4施設),⑤:上記項目全て(4施設)であった.前年度からの継続施設が約7割で,保育所は単発での依頼が多いが,幼稚園は学期ごとの依頼であった.
上記のうち,作業療法士が訪問したのは保育所2施設4名(うち相談歴なし1名)であり,いずれも食事についての相談であった.対象児の年齢は0歳児1名,3歳児3名.相談内容は,離乳食の進め方,給食の食形態の相談,食事の介助方法についてであった.
【考察】川崎市には大小様々な規模の保育所・幼稚園があり,設置数に対して実施数はまだ少ない現状にあり,今後地域への普及啓発が必要であると考える.ただし,リピート率が高いことや,毎年新規に依頼する施設があることから,事業を継続する中で地域とのつながりが広がると考える.また特に保育所では相談歴のない方が69%と多かったことから,現場の先生たちの視点による「発達が気になるお子さん」を地域で支えるための一助になると考える.さらに作業療法士への依頼があった食事に関する相談については,特に電話等では説明が伝わりづらいことも多く,その他で児童の様子を確認しながら介助・調整する,食形態の工夫について関係者を含めて相談することが,訪問支援の強みであると考える.また担任以外の栄養士や管理職といった複数人数の職員で事後のミーティングを行うことで,担任のみが抱え込むことなく,施設全体で課題を共有し解決する場としても重要であると考える.
作業療法士には,発達が気になるお子さんの地域での過ごしを支えるために,訪問する施設ごとの「ねらい」に着目しながら,児童と環境と遂行する作業とを総合的に評価分析し,現場の先生を中心に主体となって取り組める内容の助言が求められると考える.