[PN-5-8] 障害者の装いの支援についての文献研究
多領域における過去10年の世界の動向
【序論】リハビリテーションにおいて,対象者の役割の創出,社会参加の実現といったアプローチの展開が求められている(厚生労働省,2017).衣服の着用やおしゃれをすることは,潤いと楽しみのある生活の実現と社会への積極的参加につながることが報告されている(川端,2008).高齢者を対象としたファッションセラピーでは,自己意識や自立に対する意欲の高揚,精神的・身体的健康の維持・促進の効果が期待できると言われている(泉,2002).作業療法においても装いの支援が注目されてきているが,臨床場面においては,更衣動作に着目した介入は多く行われるものの,装いに焦点を当てた介入や研究は十分とは言えない.そこで,様々な領域や国における,障害者の装いの支援に関する動向を知ることを目的に,文献研究を行うこととした.なお,本研究は倫理手続きを順守して実施した.
【方法】データベースは,PubMed,APA PsycInfo,Social Science Database,ABI/INFORM Collection,Arts & Humanities Database,CiNii Research, 医中誌Web版を使用した.検索語は「( Dress OR dressing OR clothes OR clothing )AND ( disability OR handicap )」「( 装い OR 装う OR おしゃれ ) AND ( 障害 )」とし,2014年~2023年の10年間で検索を行った.本研究との関連性が低いもの(人の服装に関する心理に焦点があたっていないもの等),本文が入手困難と判断したもの,会議録・解説・特集などの記事,学位論文については除外した.
【結果】検出された文献は,PubMed 304件,APA PsycInfo 92件,Social Science Database 31件,ABI/INFORM Collection 25件,Arts & Humanities Database 6件, CiNii Research 69件,医中誌Web版43件,合計570件であり,そこから該当する文献は20件であった.研究の手法としては,質的研究が8件と最も多く,量的研究3件,混合研究1件,事例研究1件,開発研究1件,文献研究1件,その他5件であった.国は,アメリカ8件,日本2件,中国・モルドバ共和国・スペイン・カナダ・ブラジル・オーストラリア・コロンビア・ノルウェー・イラン・ルーマニアがそれぞれ1件であった.学問領域は,筆頭者の所属と, 文部科学省による学科系統分類表 大学院(研究科)を参考に分類した結果,保健5件,工学5件,芸術4件,社会科学2件,人文科学2件,家政1件,教育1件と,多岐に渡っていた.内容としては,障害者の潜在的なニーズの調査,社会的な障壁,障害者にとっての衣服の役割,被服行動の意味,衣服の消費に影響する要因,身体に合わせた衣服の開発,バーチャルコミュニティの活用,義肢装具による先駆的なファッションなど,様々な視点から研究がされていた.
【考察】障害者の装いに関する研究は,件数としては少ないものの,様々な国で扱われていることから,気候や文化,歴史的背景が異なっていても,共通する問題である可能性が考えられる.また,様々な学問領域で取り上げられていることから,装いに関する問題に対し,多領域での連携が求められていることが伺える.身体機能面や心理面,社会的な問題,衣服の製造,販売,コミュニティなど,対象者の手に届くまでの連続した支援が重要になると考えられる.本研究の限界として,検索語や検索エンジンの設定により全てを網羅できたとは言えないこと,文献数が少ないことから,各領域や国での知見の違いについては深められていないことが挙げられる.今後,作業療法においても,様々な領域の知見を活用しながら,対象者の望む装いを支援することによって,役割の創出や社会参加の実現に繋がる一助になるのではないかと考える.
【方法】データベースは,PubMed,APA PsycInfo,Social Science Database,ABI/INFORM Collection,Arts & Humanities Database,CiNii Research, 医中誌Web版を使用した.検索語は「( Dress OR dressing OR clothes OR clothing )AND ( disability OR handicap )」「( 装い OR 装う OR おしゃれ ) AND ( 障害 )」とし,2014年~2023年の10年間で検索を行った.本研究との関連性が低いもの(人の服装に関する心理に焦点があたっていないもの等),本文が入手困難と判断したもの,会議録・解説・特集などの記事,学位論文については除外した.
【結果】検出された文献は,PubMed 304件,APA PsycInfo 92件,Social Science Database 31件,ABI/INFORM Collection 25件,Arts & Humanities Database 6件, CiNii Research 69件,医中誌Web版43件,合計570件であり,そこから該当する文献は20件であった.研究の手法としては,質的研究が8件と最も多く,量的研究3件,混合研究1件,事例研究1件,開発研究1件,文献研究1件,その他5件であった.国は,アメリカ8件,日本2件,中国・モルドバ共和国・スペイン・カナダ・ブラジル・オーストラリア・コロンビア・ノルウェー・イラン・ルーマニアがそれぞれ1件であった.学問領域は,筆頭者の所属と, 文部科学省による学科系統分類表 大学院(研究科)を参考に分類した結果,保健5件,工学5件,芸術4件,社会科学2件,人文科学2件,家政1件,教育1件と,多岐に渡っていた.内容としては,障害者の潜在的なニーズの調査,社会的な障壁,障害者にとっての衣服の役割,被服行動の意味,衣服の消費に影響する要因,身体に合わせた衣服の開発,バーチャルコミュニティの活用,義肢装具による先駆的なファッションなど,様々な視点から研究がされていた.
【考察】障害者の装いに関する研究は,件数としては少ないものの,様々な国で扱われていることから,気候や文化,歴史的背景が異なっていても,共通する問題である可能性が考えられる.また,様々な学問領域で取り上げられていることから,装いに関する問題に対し,多領域での連携が求められていることが伺える.身体機能面や心理面,社会的な問題,衣服の製造,販売,コミュニティなど,対象者の手に届くまでの連続した支援が重要になると考えられる.本研究の限界として,検索語や検索エンジンの設定により全てを網羅できたとは言えないこと,文献数が少ないことから,各領域や国での知見の違いについては深められていないことが挙げられる.今後,作業療法においても,様々な領域の知見を活用しながら,対象者の望む装いを支援することによって,役割の創出や社会参加の実現に繋がる一助になるのではないかと考える.