[PN-6-1] 大切な生活行為に焦点を当てた多職種連携が社会資源の利用に繋がり,活動範囲の拡大と役割の獲得に至った一例
【はじめに】A氏は社会的孤立に陥った状態で両下肢麻痺を呈し,在宅生活の継続が危ぶまれていた.訪問作業療法(以下,訪問OT)開始に伴い,興味・関心のある生活行為に配慮した関わりにより買い物や自炊などの家事活動を行う機会が増加した.また,大切な生活行為に焦点を当てた看護師とのミニカンファレンス(以下,ミニカンファ)が契機となり,就労支援センターの利用開始に繋がった.その経過と考察を以下に報告する.なお,本報告にあたり,事例に説明し同意を得ている.
【事例紹介】50歳代前半.男性.独居.親族とは疎遠.生活保護受給者.自宅内はゴミで溢れていた.X-11年に統合失調症,抑うつを発症していた.X-2年1ヶ月に頚椎椎間板ヘルニアによる両下肢麻痺が出現し,頚椎前方椎体置換術を施行した.回復期リハビリテーション病院を経て自宅退院となったが,退院3日後に転倒し緊急搬送された.継続的フォローが必要となり,X-1年5ヶ月に訪問看護,訪問理学療法が開始された.内容は,褥瘡処置と環境調整,運動技能の確認であった.自宅内はずり這いでADLは自立となった.固定式歩行器による歩行は可能であった.外出機会は少なく,買い物や食事の用意等は訪問介護士が主に行っていた.X年より,訪問OTが開始された.
【OT評価】SFBBS:6/28点.LSA:17/120点.FAI:10/45点.活動は座椅子に座った状態でのパソコン(以下,PC)作業に偏っており,活動範囲の狭小化が認められていた.外食に出かけることは稀にあったが,1本杖を使用しており転倒リスクの高い状態であった.生活面での困りごとを聴取した際には「特にないです」など空返事で対応されることが多かった.一方で,自室内にある音楽関連の雑誌,PC関連機器に関する話題は反応がよく,PC作業に関しては音楽制作を行なっていることを教えてくれた.看護師からは,音楽制作で個人事業主を目指しているとの情報提供があった.
【経過】OT介入では,安全に外食に行けるための支援として歩行補補助具の選定と導入,動作確認を行なった.また,音楽活動や外出活動に対して肯定的な関わりを続けた.X+9ヶ月には,看護師とミニカンファが行われ,「個人事業主として音楽制作活動を行うこと」がA氏にとっての大切な生活行為であることが共有された.A氏も収益化にあたり収支管理の必要性を感じており,PCソフトを使用した収支管理手段の技能獲得を希望されていた.相談支援員と情報を共有し,PCの技能練習が行える就労支援センターが紹介された.見学と体験を経て,X+15ヶ月頃から就労支援センターを週2回利用することとなった.同時期に電子レンジやトースター,冷蔵庫を購入されており,自炊をほぼ毎日行うようになった.食材の買い物には週1回はご自身で行くようになった.
【結果】SFBBS:6/28点.LSA:26/120点.FAI:16/45点.身体機能面は著変なし.就労支援センターを週2回利用し,A氏が希望するPCの技能練習に取り組める機会が創出された.また,買い物にも定期的に行くようになり,活動範囲や頻度が向上した.調理機器を揃えて自炊に取り組むなど,PC作業以外の生活行為にも取り組む機会が増えた.
【考察】外食などの自発的な活動に対して,歩行補助具の選定や動作確認など支持的に関わったことで屋外活動への動機づけが強化されたと考える.看護師とのミニカンファでは,大切な生活行為に焦点を当てたことでA氏の希望や目標が明確となり,必要な社会資源に繋げることが出来た.多職種連携により,大切な生活行為への参加が促進されたことで自己効力感が向上し,買い物や自炊などが習慣化され,活動範囲の拡大と役割の獲得に至ったと考える.
【事例紹介】50歳代前半.男性.独居.親族とは疎遠.生活保護受給者.自宅内はゴミで溢れていた.X-11年に統合失調症,抑うつを発症していた.X-2年1ヶ月に頚椎椎間板ヘルニアによる両下肢麻痺が出現し,頚椎前方椎体置換術を施行した.回復期リハビリテーション病院を経て自宅退院となったが,退院3日後に転倒し緊急搬送された.継続的フォローが必要となり,X-1年5ヶ月に訪問看護,訪問理学療法が開始された.内容は,褥瘡処置と環境調整,運動技能の確認であった.自宅内はずり這いでADLは自立となった.固定式歩行器による歩行は可能であった.外出機会は少なく,買い物や食事の用意等は訪問介護士が主に行っていた.X年より,訪問OTが開始された.
【OT評価】SFBBS:6/28点.LSA:17/120点.FAI:10/45点.活動は座椅子に座った状態でのパソコン(以下,PC)作業に偏っており,活動範囲の狭小化が認められていた.外食に出かけることは稀にあったが,1本杖を使用しており転倒リスクの高い状態であった.生活面での困りごとを聴取した際には「特にないです」など空返事で対応されることが多かった.一方で,自室内にある音楽関連の雑誌,PC関連機器に関する話題は反応がよく,PC作業に関しては音楽制作を行なっていることを教えてくれた.看護師からは,音楽制作で個人事業主を目指しているとの情報提供があった.
【経過】OT介入では,安全に外食に行けるための支援として歩行補補助具の選定と導入,動作確認を行なった.また,音楽活動や外出活動に対して肯定的な関わりを続けた.X+9ヶ月には,看護師とミニカンファが行われ,「個人事業主として音楽制作活動を行うこと」がA氏にとっての大切な生活行為であることが共有された.A氏も収益化にあたり収支管理の必要性を感じており,PCソフトを使用した収支管理手段の技能獲得を希望されていた.相談支援員と情報を共有し,PCの技能練習が行える就労支援センターが紹介された.見学と体験を経て,X+15ヶ月頃から就労支援センターを週2回利用することとなった.同時期に電子レンジやトースター,冷蔵庫を購入されており,自炊をほぼ毎日行うようになった.食材の買い物には週1回はご自身で行くようになった.
【結果】SFBBS:6/28点.LSA:26/120点.FAI:16/45点.身体機能面は著変なし.就労支援センターを週2回利用し,A氏が希望するPCの技能練習に取り組める機会が創出された.また,買い物にも定期的に行くようになり,活動範囲や頻度が向上した.調理機器を揃えて自炊に取り組むなど,PC作業以外の生活行為にも取り組む機会が増えた.
【考察】外食などの自発的な活動に対して,歩行補助具の選定や動作確認など支持的に関わったことで屋外活動への動機づけが強化されたと考える.看護師とのミニカンファでは,大切な生活行為に焦点を当てたことでA氏の希望や目標が明確となり,必要な社会資源に繋げることが出来た.多職種連携により,大切な生活行為への参加が促進されたことで自己効力感が向上し,買い物や自炊などが習慣化され,活動範囲の拡大と役割の獲得に至ったと考える.