[PN-6-4] 医療と福祉の多職種連携により就職に対する自己認識が修正された一例
就労への焦燥感が強いまま地域生活へ移行したADHDのケース
【序論】一般就労への焦燥感があり,退院後すぐに再入院していた患者が多職種での支援,就労継続支援の利用を通して,焦りはありつつも再入院せずに地域生活を継続し,就労に対する意識の変化が表れた.そのプロセスや医療と福祉の連携について考察したものを報告する.尚,発表に当たり本人の同意を得ている.
【事例】A氏,40歳代男性,診断名はADHD,うつ病.大学受験に失敗し浪人中にうつ病を発症.発症後は派遣や障害者雇用での就労を数年続ける.X年に障害者雇用で地元の役所に3年半勤務.X+4年,法務局に勤務するも1カ月で退職.X+5年にm-ECT治療の為,B病院に入院.1カ月で退院となるが半年後に再入院.3ヶ月で退院.半年後,3度目の入院.今回の入院では病棟作業療法に参加をしていた.1年3ヶ月後,退院となる.一般就労への焦燥感が要因で再入院を繰り返していた為,退院後は就労継続支援B型事業所(就B)を利用.
【評価】一般就労への焦燥感あり.自己評価高く,どんな仕事もできると思っているが,失敗したり注意をされると不安,焦燥感が強くなり,再入院のリスクが高い.そのため,就労支援を介して自分の得手,不得手,現在の作業能力を理解する事が必要と考えた.また,口頭のみの説明では,自己解釈し,できていない事もできていると捉えてしまう為,本人に何かを伝える際には,支援者と本人が共有できる紙面上のチェックシートが必要と考えた.
【経過】退院後,就B職員,相談支援専門員と筆者にて本人の作業状況や本人の思いを聴取.一般就労への焦燥感が強く,就Bのみの対応では,利用継続が困難と考え,外来作業療法(外来OT)の導入を提案.外来OT(3/w),就B(2/w)を併用し,段階的に外来OTの頻度を減らし,就Bの頻度を増やした.半年後,外来OT終了.信頼関係が構築されている作業療法士(OTR)との関わりを継続してもらう為,訪問看護開始.訪問看護の介入が開始されてすぐに,一般就労への焦燥感が再燃.就Bの職員,相談支援専門員,筆者にて現状を伝えるが理解を得られない状況であった.そのため,相談支援専門員と筆者にて受診同行を行い,カンファレンス開催を提案.今後の方向性を関係者で共有.本人には一般就労に向かっていること,その為に,自分のできていない部分と向き合う事を伝達.また,同時期に朝食後の薬を半年近く飲めていなかった事が判明し,一包化の対応を行う.その後は飲み忘れなく,落ち着いて就Bでの作業に取り組めるようになった.一般就労に向け,筆者,担当OTR,相談支援専門員より紙面上でのやり取り,チェックシートを使用した内省を促す対応を提案.その結果,少しずつ自分のできていない部分と向き合う事ができるようなった.モニタリング会議にて,一般就労について確認した際に,就労継続支援A型事業所(就A)でステップアップしていきたいと発言あり,本人の就職に対する自己認識が修正された.現在は,就Aにて作業を行っており,訪問看護による定期的な支援も継続している.
【考察】本ケースはOTRとの信頼関係が構築されており,退院してからも関わりを継続できていた事が,本人の安心できる環境になっていた.その為,モニタリング会議に担当作業療法士が同席できた事で,落ち着いて支援者の提案を受け入れられたと考える.焦燥感に対し,多職種で受け止め,各々ができる支援を提案した事,カンファレンスの開催により,現状を全体で共有できた事が,本人が自分の状況を整理する機会となり,就労に対する自己認識が修正されたと考える.
我々の地域では,モニタリング会議などに参加するOTRは多くない.地域で働くOTRが増え,地域の見え方から病院で働くOTRを巻き込み,医療と共に本人の地域生活を支援できるような協力体制を整えていきたいと思う.
【事例】A氏,40歳代男性,診断名はADHD,うつ病.大学受験に失敗し浪人中にうつ病を発症.発症後は派遣や障害者雇用での就労を数年続ける.X年に障害者雇用で地元の役所に3年半勤務.X+4年,法務局に勤務するも1カ月で退職.X+5年にm-ECT治療の為,B病院に入院.1カ月で退院となるが半年後に再入院.3ヶ月で退院.半年後,3度目の入院.今回の入院では病棟作業療法に参加をしていた.1年3ヶ月後,退院となる.一般就労への焦燥感が要因で再入院を繰り返していた為,退院後は就労継続支援B型事業所(就B)を利用.
【評価】一般就労への焦燥感あり.自己評価高く,どんな仕事もできると思っているが,失敗したり注意をされると不安,焦燥感が強くなり,再入院のリスクが高い.そのため,就労支援を介して自分の得手,不得手,現在の作業能力を理解する事が必要と考えた.また,口頭のみの説明では,自己解釈し,できていない事もできていると捉えてしまう為,本人に何かを伝える際には,支援者と本人が共有できる紙面上のチェックシートが必要と考えた.
【経過】退院後,就B職員,相談支援専門員と筆者にて本人の作業状況や本人の思いを聴取.一般就労への焦燥感が強く,就Bのみの対応では,利用継続が困難と考え,外来作業療法(外来OT)の導入を提案.外来OT(3/w),就B(2/w)を併用し,段階的に外来OTの頻度を減らし,就Bの頻度を増やした.半年後,外来OT終了.信頼関係が構築されている作業療法士(OTR)との関わりを継続してもらう為,訪問看護開始.訪問看護の介入が開始されてすぐに,一般就労への焦燥感が再燃.就Bの職員,相談支援専門員,筆者にて現状を伝えるが理解を得られない状況であった.そのため,相談支援専門員と筆者にて受診同行を行い,カンファレンス開催を提案.今後の方向性を関係者で共有.本人には一般就労に向かっていること,その為に,自分のできていない部分と向き合う事を伝達.また,同時期に朝食後の薬を半年近く飲めていなかった事が判明し,一包化の対応を行う.その後は飲み忘れなく,落ち着いて就Bでの作業に取り組めるようになった.一般就労に向け,筆者,担当OTR,相談支援専門員より紙面上でのやり取り,チェックシートを使用した内省を促す対応を提案.その結果,少しずつ自分のできていない部分と向き合う事ができるようなった.モニタリング会議にて,一般就労について確認した際に,就労継続支援A型事業所(就A)でステップアップしていきたいと発言あり,本人の就職に対する自己認識が修正された.現在は,就Aにて作業を行っており,訪問看護による定期的な支援も継続している.
【考察】本ケースはOTRとの信頼関係が構築されており,退院してからも関わりを継続できていた事が,本人の安心できる環境になっていた.その為,モニタリング会議に担当作業療法士が同席できた事で,落ち着いて支援者の提案を受け入れられたと考える.焦燥感に対し,多職種で受け止め,各々ができる支援を提案した事,カンファレンスの開催により,現状を全体で共有できた事が,本人が自分の状況を整理する機会となり,就労に対する自己認識が修正されたと考える.
我々の地域では,モニタリング会議などに参加するOTRは多くない.地域で働くOTRが増え,地域の見え方から病院で働くOTRを巻き込み,医療と共に本人の地域生活を支援できるような協力体制を整えていきたいと思う.