第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

地域

[PN-6] ポスター:地域 6

Sat. Nov 9, 2024 4:30 PM - 5:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PN-6-5] 児童発達支援事業所の保育士が認識する子どもの不器用さについての報告

五十嵐 剛1, 永田 菜々実2 (1.名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻, 2.愛知医科大学病院 リハビリテーション部)

【はじめに】児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所数は増加の一途をたどっており,このような施設で勤務する作業療法士の数も増加傾向にある.児童発達支援等,生活の場における療育では,Transdisciplinary team modelによる多職種連携,すなわち専門職が独自の専門技術でそれぞれに関わるのではなく,お互いの専門分野を超えた平等な関係となり役割を横断的に共有することが望ましいとされているが,そのためには他の職種の視点も理解することが求められる.児童発達支援等では保育士との連携が重要となる場合も多く,保育士がどのような視点で子どもを捉えているのかについて知ることは保育士との連携を図る上で必要である.本研究では,子どもの不器用さについて保育士がどのように捉えているのかを明らかにする.
【目的】児童発達支援事業所で勤務する保育士は,どのような子どもの様子や活動場面から不器用さを感じ取っているのかを明らかにすることを目的とする.
【方法】研究への参加に同意の得られた,A市児童発達支援事業所(以下,事業所)に勤務する保育士10名(以下,対象者)を対象とした.包含基準は,保育士としての経験が3年以上かつ,保育所と児童発達支援事業所の両方での勤務経験がある者とした.対象者に対面で半構造化インタビューを実施した.インタビューでは,事業所での子どもの1日の生活の流れに沿って,不器用さが現れやすいと感じる活動・場面と,どのような様子や動きから不器用さを感じるかについて聴取をした.インタビュー内容は,対象者同意のもとでICレコーダーにより録音した.解析は,演者を含めた複数人によるコーディングとテキストマイニングにより行った.本研究は演者が所属する機関の生命倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号20-608).
【結果】対象者の保育士としての平均経験年数は18.1±8.8年であった.不器用さに関連するコードは全105種類あり,これらについて類似した内容をまとめカテゴリー化した.得られたカテゴリーを「不器用さを感じる様子・動き」「不器用さを感じる活動・場面」の2個の大カテゴリーに大別した結果,「不器用さを感じる様子・動き」に含まれた内容は,「姿勢・バランスの保持」「物をあける・はがす動作」「道具の把持・操作を伴う動作」「粗大運動」「力や声の加減」「言語的コミュニケーション」「指示や意図に沿った運動」「必要な箇所への注意」の8個の中カテゴリーに分類され,中カテゴリーはさらに22個の小カテゴリーに分類された.また,「不器用さを感じる活動・場面」に含まれた内容は,「更衣場面」「食事場面」「工作場面」「遊び場面」の4個の中カテゴリーに分類され,これらの中カテゴリーはさらに24個の小カテゴリーに分類された.テキストマイニングの結果からは,姿勢の保持,物をあける・はがす動作,力や声の加減,道具の把持・操作を伴う動作,食事場面に関連する語の出現頻度が高いことが確認された.
【考察】保育士は,子どもの不器用さを様々な様子や場面から感じ取っていることが明らかとなった.一方で,実際のインタビュー中にはこうした不器用さをどのように支援すればよいのか分からないという声が多く聞かれたことから,作業療法士がもつ専門知識やそれに基づく評価結果を保育士らと共有し,具体的な支援に繋げていく連携が重要であると考えられた.