[PN-6-7] 運転状況と生活満足度,健康状態,社会参加状態の関連
~千歳市運転と健康前向きコホート研究~
はじめに
作業療法士が介護予防事業などを通して,自動車運転と地域移動支援に関わる機会が増えている.しかしながら,介護予防事業で提供すべきプログラムや教育内容については手探りの状態である.著者らは,加齢と移動手段の変化が健康や生活満足度に与える影響を調べるために,2023年より4年間の前向きコホート調査を開始している.本研究では,生活満足度に影響する因子について探索的に分析した一部を報告する.
方法
千歳市の協力の下,2023年9月15日現在の千歳市住民基本台帳に登録されている75~80歳の内,施設入居者(サービス付き高齢者住宅なども含む)と要配慮者,郵送(同年9月28日)までに死亡した者を除いた5305名に3種類(運転継続群,運転中断群,運転なし群(免許を取得したことがない群))の調査票を郵送し,1466名から回答を得た(回収率27.6%).本研究の分析に係る欠損データを有している対象者は除き,運転継続群916名(77.0±1.7歳,男性665名),運転中断群238名(77.4±1.8歳,男性93名),運転なし群281名(77.7±1.8歳,男性17名)を本研究の分析対象とした.本研究では,生活満足度(4件法),主観的健康感(身体,精神)(4件法),介護認定度(有無),健康スコア(不健康1点~健康11点)(後期高齢者健康質問票(厚生労働省)),外出頻度(6件法)について群間で比較を行った.生活満足度については4件法データを「満足・満足でない」,主観的健康感については「健康・健康でない」の2値に変換して分析を行った.各指標に合わせた効果量(Cohen’s h(以下,h), Cramer’s V(以下,V))を算出した.
結果
運転継続群は,運転中断群,運転なし群より生活満足度が高かった(p<0.01).運転中断群と運転なし群に差はなかった(p=0.17)(継続群vs中断群h=0.48,継続群vsなし群h=0.35,中断群vsなし群h=0.13;以下同順).その他の指標については効果量のみ示す.すべての指標で,継続群がポジティブな結果を示した;主観的健康感(身体)(h=0.54,h=0.46,h=0.08),主観的健康感(精神)(h=0.56,h=0.44,h=0.13),介護認定度(h=0.52,h=0.49,h=0.03),健康スコア(V=0.18,V=0.18,V=0.02),外出頻度(V=0.27,V=0.21,V=0.09).
考察
運転継続群の生活満足度は高く,健康状態は良好,社会参加頻度も高いという結果であった.先行研究と同様に自動車運転が生活に与えるポジティブな影響が示された.運転継続群と運転中断群のみならず,運転継続群と運転なし群の間にも差があったことは,今まで行っていた自動車での移動がなくなるという変化ではなく,自動車で移動できるということ自体に意味がある可能性が伺えた.ただし,効果量が小さく,本報告で示した以外の要因が関与している可能性が大いに考えられる.引き続き,詳細な横断的・縦断的分析を重ねる必要がある.
倫理的配慮・謝辞
本研究は,著者ら所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得て行われた(承認番号R02303).本研究に開示すべきCOI関係にある企業・団体はない.本調査は千歳市の協力を得て行われている.本研究は,文部科学省科学研究費補助金.基盤(C)(課題番号23K10537)の助成を受けている.
作業療法士が介護予防事業などを通して,自動車運転と地域移動支援に関わる機会が増えている.しかしながら,介護予防事業で提供すべきプログラムや教育内容については手探りの状態である.著者らは,加齢と移動手段の変化が健康や生活満足度に与える影響を調べるために,2023年より4年間の前向きコホート調査を開始している.本研究では,生活満足度に影響する因子について探索的に分析した一部を報告する.
方法
千歳市の協力の下,2023年9月15日現在の千歳市住民基本台帳に登録されている75~80歳の内,施設入居者(サービス付き高齢者住宅なども含む)と要配慮者,郵送(同年9月28日)までに死亡した者を除いた5305名に3種類(運転継続群,運転中断群,運転なし群(免許を取得したことがない群))の調査票を郵送し,1466名から回答を得た(回収率27.6%).本研究の分析に係る欠損データを有している対象者は除き,運転継続群916名(77.0±1.7歳,男性665名),運転中断群238名(77.4±1.8歳,男性93名),運転なし群281名(77.7±1.8歳,男性17名)を本研究の分析対象とした.本研究では,生活満足度(4件法),主観的健康感(身体,精神)(4件法),介護認定度(有無),健康スコア(不健康1点~健康11点)(後期高齢者健康質問票(厚生労働省)),外出頻度(6件法)について群間で比較を行った.生活満足度については4件法データを「満足・満足でない」,主観的健康感については「健康・健康でない」の2値に変換して分析を行った.各指標に合わせた効果量(Cohen’s h(以下,h), Cramer’s V(以下,V))を算出した.
結果
運転継続群は,運転中断群,運転なし群より生活満足度が高かった(p<0.01).運転中断群と運転なし群に差はなかった(p=0.17)(継続群vs中断群h=0.48,継続群vsなし群h=0.35,中断群vsなし群h=0.13;以下同順).その他の指標については効果量のみ示す.すべての指標で,継続群がポジティブな結果を示した;主観的健康感(身体)(h=0.54,h=0.46,h=0.08),主観的健康感(精神)(h=0.56,h=0.44,h=0.13),介護認定度(h=0.52,h=0.49,h=0.03),健康スコア(V=0.18,V=0.18,V=0.02),外出頻度(V=0.27,V=0.21,V=0.09).
考察
運転継続群の生活満足度は高く,健康状態は良好,社会参加頻度も高いという結果であった.先行研究と同様に自動車運転が生活に与えるポジティブな影響が示された.運転継続群と運転中断群のみならず,運転継続群と運転なし群の間にも差があったことは,今まで行っていた自動車での移動がなくなるという変化ではなく,自動車で移動できるということ自体に意味がある可能性が伺えた.ただし,効果量が小さく,本報告で示した以外の要因が関与している可能性が大いに考えられる.引き続き,詳細な横断的・縦断的分析を重ねる必要がある.
倫理的配慮・謝辞
本研究は,著者ら所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得て行われた(承認番号R02303).本研究に開示すべきCOI関係にある企業・団体はない.本調査は千歳市の協力を得て行われている.本研究は,文部科学省科学研究費補助金.基盤(C)(課題番号23K10537)の助成を受けている.