[PN-7-3] 回復期患者が退院後地域に出ていくための「集い場マップ」の作成
【背景】
我が国では高齢者率の増加とともに医療保険・介護保険の費用も増加するため財源不足が懸念されている.また当院がある兵庫県神戸市東灘区は2020年の実績を100とした際の介護需要指数が2045年の時点で164と大幅な増大が予測されている.これらの実情から医療保険・介護保険でのサービスだけでなく社会資源を用いない地域拠点型一般介護事業など,インフォーマルサービスの利用を進めていく必要がある.しかし,現状当院回復期病棟のリハビリスタッフは経験年数若年者が多く,地域活動等への参加経験がある者も少ない.そこで,当院周辺の地域包括支援センターの区域内のインフォーマルサービスについての情報をまとめたマップを作成し,退院支援に活用してもらうこととした.
【方法】
初めに当院リハビリスタッフ(PT,OT,ST)のインフォーマルサービスへの印象や認識について現状把握のためにGoogleフォームを用いてWebアンケート調査を行った.その後当院周辺の地域包括支援センターが把握するインフォーマルサービスについてまとめたマップを作成し,患者の退院支援の中で活用してもらった.その後使用したスタッフよりフィードバックをもらい,改訂版を作成しさらなる運用に至った.
【結果】
現状把握のアンケートは当院リハビリスタッフ29名を対象に実施し,回収率69%(20名)であった.「患者の退院後の地域活動への参加について悩んだことはありますか」の問いに対して「はい」の回答は90%であった.また「患者の退院後の機能維持・向上に対してどのような提案をしたことがありますか」という問いに対しては『医療保険サービスの利用』が90%,『介護保険サービスの利用』が95%と高いことに比べ,『医療・介護保険を用いない地域の集まり』は30%と低い数値であった.「地域のインフォーマルサービスをまとめた案内があれば患者とのかかわりの中で利用したいと思いますか」の問いに対しては「はい」の回答が100%であった.アンケート結果を踏まえ,地域包括支援センターと連携を取り「集い場マップ」を作成した.使用したスタッフから「脳卒中や失語など疾患に特化した集いやインフォーマルサービスはあるのか」等のフィードバックを受け,再度地域包括センターと連携を取りそれらの情報を追加した改訂版を作成した.
【考察】
酒向¹⁾は回復期リハからタウンリハへとつなぐ役割は回復期スタッフにあり,地方自治体や地域活動者と顔の見える関係をつくり,地域で使える社会資源を理解することが重要であると述べている.また,退院支援におけるサービスの提案は,患者個人の特性をとらえやすいセラピストの役割が重要と考える.しかし現状把握のアンケート結果より「退院患者に対し医療・介護保険サービスの利用を勧めることは多いが,インフォーマルサービスはあまり勧めたことがない」「インフォーマルサービスについての案内があれば利用したい」ことが分かった.インフォーマルサービスをあまり勧めたことがない要因の一つとして回答者20名のうち80%が経験年数10年以下と,地域活動・支援の経験が少ないことが考えられる.そのような地域活動への知識・経験の乏しさを補完するためにも案内の作成は有効と考える.しかし実際使用した中で改善点はまだまだ見つけられ,今後も継続的な使用感の確認・修正を行いより有用な案内の作成を目指したい.
参考文献:¹⁾酒向正春:健康医療福祉都市構想「地域包括ケア」のその先へ.世界に発信する超高齢社会のモデル都市を東京から,ブレインナーシング 34(9): 860-860, 2018.
我が国では高齢者率の増加とともに医療保険・介護保険の費用も増加するため財源不足が懸念されている.また当院がある兵庫県神戸市東灘区は2020年の実績を100とした際の介護需要指数が2045年の時点で164と大幅な増大が予測されている.これらの実情から医療保険・介護保険でのサービスだけでなく社会資源を用いない地域拠点型一般介護事業など,インフォーマルサービスの利用を進めていく必要がある.しかし,現状当院回復期病棟のリハビリスタッフは経験年数若年者が多く,地域活動等への参加経験がある者も少ない.そこで,当院周辺の地域包括支援センターの区域内のインフォーマルサービスについての情報をまとめたマップを作成し,退院支援に活用してもらうこととした.
【方法】
初めに当院リハビリスタッフ(PT,OT,ST)のインフォーマルサービスへの印象や認識について現状把握のためにGoogleフォームを用いてWebアンケート調査を行った.その後当院周辺の地域包括支援センターが把握するインフォーマルサービスについてまとめたマップを作成し,患者の退院支援の中で活用してもらった.その後使用したスタッフよりフィードバックをもらい,改訂版を作成しさらなる運用に至った.
【結果】
現状把握のアンケートは当院リハビリスタッフ29名を対象に実施し,回収率69%(20名)であった.「患者の退院後の地域活動への参加について悩んだことはありますか」の問いに対して「はい」の回答は90%であった.また「患者の退院後の機能維持・向上に対してどのような提案をしたことがありますか」という問いに対しては『医療保険サービスの利用』が90%,『介護保険サービスの利用』が95%と高いことに比べ,『医療・介護保険を用いない地域の集まり』は30%と低い数値であった.「地域のインフォーマルサービスをまとめた案内があれば患者とのかかわりの中で利用したいと思いますか」の問いに対しては「はい」の回答が100%であった.アンケート結果を踏まえ,地域包括支援センターと連携を取り「集い場マップ」を作成した.使用したスタッフから「脳卒中や失語など疾患に特化した集いやインフォーマルサービスはあるのか」等のフィードバックを受け,再度地域包括センターと連携を取りそれらの情報を追加した改訂版を作成した.
【考察】
酒向¹⁾は回復期リハからタウンリハへとつなぐ役割は回復期スタッフにあり,地方自治体や地域活動者と顔の見える関係をつくり,地域で使える社会資源を理解することが重要であると述べている.また,退院支援におけるサービスの提案は,患者個人の特性をとらえやすいセラピストの役割が重要と考える.しかし現状把握のアンケート結果より「退院患者に対し医療・介護保険サービスの利用を勧めることは多いが,インフォーマルサービスはあまり勧めたことがない」「インフォーマルサービスについての案内があれば利用したい」ことが分かった.インフォーマルサービスをあまり勧めたことがない要因の一つとして回答者20名のうち80%が経験年数10年以下と,地域活動・支援の経験が少ないことが考えられる.そのような地域活動への知識・経験の乏しさを補完するためにも案内の作成は有効と考える.しかし実際使用した中で改善点はまだまだ見つけられ,今後も継続的な使用感の確認・修正を行いより有用な案内の作成を目指したい.
参考文献:¹⁾酒向正春:健康医療福祉都市構想「地域包括ケア」のその先へ.世界に発信する超高齢社会のモデル都市を東京から,ブレインナーシング 34(9): 860-860, 2018.