第58回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-7] ポスター:地域 7

Sun. Nov 10, 2024 8:30 AM - 9:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PN-7-9] 地域在住女性高齢者における抑うつ状態の経時的変化の特徴とその予測因子

今井 あい子1, 木村 大介1, 久納 健太2 (1.名古屋女子大学 医療科学部 作業療法学科, 2.医療法人和光会 山田病院 リハビリテーション部)

<序論> 高齢期の抑うつは,うつ病や慢性疾患の罹患リスクを高め,日常生活自立度の低下に関連する.したがって,高齢期の抑うつ予防は,健康寿命の延伸に寄与できる可能性を有している.抑うつ発症の要因については,これまでに不活動や身体機能の低下,単身世帯などの生活状況との関連が示されている.しかしながら,高齢期の抑うつが経時的にどのように変化していくのかは不明である.また,経時的変化に特徴があるのであれば,それを予測する因子を把握することで,抑うつ予防や改善にむけた支援は充実する.そこで本研究では,縦断研究データから抑うつの経時的変化の特徴を確認したうえで,その特徴を予測するモデルを作成し予測因子を確認することを目的とした.
<方法> 愛知県の公民館(7カ所)での案内掲示,周辺地域での案内回覧により対象者を募集した.初回調査は2015年,追跡調査は2017年,2019年で全て8月〜9月に実施した.対象者には,事前に研究目的等を書面と口頭で説明,自書署名によって同意を得た.なお,本研究は研究代表者所属の研究倫理委員会の承認を得て実施した.包含基準は,65歳以上,認知症,うつ病の診断が無い,5m歩行自立とし,最終的な分析対象は30名となった.抑うつ状態の評価にはGeriatric depression scale(GDS)を用いた.BMIや体脂肪量,骨格筋量などの身体組成データ11項目,Chair-stand test(CS)やTimed UP and Go test(TUG)などの身体機能データ6項目,抑うつ状態のデータ1項目,教育歴や経済状態などの生活状況データ8項目,歩数などの身体活動データの合計6項目でデータセットを構築した.データ分析は,まず,GDSの経年変化を捉えるために初年度と最終年度の得点をwilcoxsonの符号付き順位検定で比較した.次に,GDSの経年変化の特徴を成長曲線モデルで分析し,クラスタ分析でGDSの経年変化の特徴で群分けを行った.最終的には,機械学習であるランダムフォレストを用い,初年度の評価結果から経年変化の特徴を予測するモデルを作成,特徴的因子を確認した.
<結果> GDSの初年度と最終年度の比較では有意差は認められなかった(p=0.53).GDSの成長曲線モデルの分析結果は,CFI=0.949,TFI=0.949,RMSEA=0.183,切片の因子平均の推定値は0.298,傾きの因子平均の推定値は0.043で切片が有意(p<0.05)であった.切片が有意であったためユークリッド距離を用いたクラスタ分析を実施した結果,GDSが高値で移行する群と,低値で移行する群の2群に分類された.この2群を評価初期値から分類するため機械学習であるランダムフォレストを行った結果,このモデルの正確性を示すAccuracyの平均は0.65で,特徴的因子の上位6項目は,歩行時間(0.879),5m歩行時間(0.723),体脂肪率(0.704),CS(0.695),TUG(0.687),生活活動量(0.678)であった.
<考察> 本研究では,抑うつ状態の指標としたGDSは,高値移行群と低値移行群の2群に分類された.これは,高齢期の抑うつの程度は経時的な変動が少ないと解釈できた.そのため,高齢期において抑うつ状態にある者は,特段の介入がなければその状態が改善されず,その悪影響を受け続ける可能性がある.加えて,この特徴を予測する因子は,歩行時間,5m歩行時間,体脂肪率,CS,TUG,生活活動量であった.これらは,体脂肪率と生活活動量を除いて歩行に関連する因子であり,歩行状態とその基盤となる下肢筋力やバランス能が高齢者の抑うつの経時的変化を予測する重要な因子であると考えられた.