[PN-8-5] 通所リハビリテーションにおける脳卒中片麻痺事例への就労支援の試み
リハビリテーション会議を用いたチームアプローチ
【はじめに】通所リハビリテーション(通所リハ)では,目標や支援方針を本人と多職種で共有する場としてリハビリテーション会議(リハ会議)を用いることがある.今回,脳卒中片麻痺事例の就労支援にリハ会議を用いたチームアプローチについて報告する.
【事例紹介】事例は,左被殻出血発症7ヵ月後に通所リハを開始した40代男性である.発症時は母・兄と3人暮らしの無職であったが,過去に工場勤務歴を有していた.右上下肢はBrunnstrom Stage(BRS)上肢Ⅲ-手指Ⅱ-下肢Ⅲと重度運動麻痺を認めたが,Timed Up & Go Test(TUG)は22秒で杖を用いて屋内歩行は自立であった.認知機能はMini-Mental State Examinationは30点で,構音障害を認めたため聞き取りに配慮を要した.FIMは100点で浴槽移乗の見守りや身辺ADLに介助を要し,Frenchay Activities Index(FAI)は6点で活動範囲は自宅内が中心であった.本人のニーズはADLの自立と工場勤務の復職であったが,作業療法士(OT)とケアマネジャー(CM)の見解は,復職に向けて段階的な支援が必要であり,ADLの自立度向上を優先する方向で一致した.通所リハの利用頻度は週1回,リハ会議は初回から6回目までは毎月,それ以降は3ヵ月に1回の頻度で全7回開催した.本報告は,本人に説明し書面にて同意を得ている.
【経過】初回リハ会議で,理学療法士(PT)による筋力トレーニング・歩行練習とOTによる入浴動作練習・右上肢機能訓練を中心としたリハビリテーション計画(リハ計画)を立案し共有した.食事は左手による箸の使用が拙劣であったため,2回目リハ会議ではリハ計画に左手で箸を使用する練習を追加した.徐々に浴槽移乗や食事の自立度は向上したが,屋外歩行は不安定であり活動範囲の拡大に難渋した.そのため,4回目リハ会議では歩行練習の強化を目的に利用頻度を週2回に変更した.同時期に,本人から右上肢麻痺の改善や復職に対する不安が表出されたため,OTと主治医で協議した結果,残存機能による就労支援に移行する時期との見解を共有し,次回の診察時に主治医から本人に説明する予定となった.受診後の5回目リハ会議で,本人に今後の復職に関する意向を確認したところ「今の状態では,工場勤務は難しいと思う」と述べた.そこで,OTから福祉的就労を提案したところ「前向きに考えたい」との意向を確認したため,就労支援を進める方針となった.6回目リハ会議で,就労継続支援B型事業所(事業所)の利用を目指して,多職種の役割を明確にした.PTによる運搬移動練習・階段昇降練習をリハ計画に追加した.CMが事業所の情報収集を行い,OTとCMが本人に同行して事業所を見学した.見学の際に,OTが作業能力を事業所担当者と協議して本人に適した事業所を検討した結果,週3回の就労開始に至った.就労時のBRSは変化を認めず,FIMは107点で更衣と洗体に介助が必要であったが,TUGは13.7秒で杖を用いて屋外歩行は自立し,FAIは14点に改善した.就労1ヵ月後の7回目リハ会議で就労の継続を確認し,OTが就労場面を見学した際には「ここで仕事の幅を広げていきたい」「満足している」との感想を述べた.
【考察】本事例における就労支援の要点は,ADLの自立度向上から就労に至るまでを段階的に移行することであった.これを実現するために,定期のリハ会議を通じて生活の変化を捉えながら,各時期の課題を明確にした上でリハ計画を的確に見直すことができた.さらに,支援方針を多職種で共有するだけではなく,本人の意向や想いに対してそれぞれの役割を明確化し,チームアプローチができたことが有益であったと考え,ひいては本人の満足感を伴う就労につながったものと考える.
【事例紹介】事例は,左被殻出血発症7ヵ月後に通所リハを開始した40代男性である.発症時は母・兄と3人暮らしの無職であったが,過去に工場勤務歴を有していた.右上下肢はBrunnstrom Stage(BRS)上肢Ⅲ-手指Ⅱ-下肢Ⅲと重度運動麻痺を認めたが,Timed Up & Go Test(TUG)は22秒で杖を用いて屋内歩行は自立であった.認知機能はMini-Mental State Examinationは30点で,構音障害を認めたため聞き取りに配慮を要した.FIMは100点で浴槽移乗の見守りや身辺ADLに介助を要し,Frenchay Activities Index(FAI)は6点で活動範囲は自宅内が中心であった.本人のニーズはADLの自立と工場勤務の復職であったが,作業療法士(OT)とケアマネジャー(CM)の見解は,復職に向けて段階的な支援が必要であり,ADLの自立度向上を優先する方向で一致した.通所リハの利用頻度は週1回,リハ会議は初回から6回目までは毎月,それ以降は3ヵ月に1回の頻度で全7回開催した.本報告は,本人に説明し書面にて同意を得ている.
【経過】初回リハ会議で,理学療法士(PT)による筋力トレーニング・歩行練習とOTによる入浴動作練習・右上肢機能訓練を中心としたリハビリテーション計画(リハ計画)を立案し共有した.食事は左手による箸の使用が拙劣であったため,2回目リハ会議ではリハ計画に左手で箸を使用する練習を追加した.徐々に浴槽移乗や食事の自立度は向上したが,屋外歩行は不安定であり活動範囲の拡大に難渋した.そのため,4回目リハ会議では歩行練習の強化を目的に利用頻度を週2回に変更した.同時期に,本人から右上肢麻痺の改善や復職に対する不安が表出されたため,OTと主治医で協議した結果,残存機能による就労支援に移行する時期との見解を共有し,次回の診察時に主治医から本人に説明する予定となった.受診後の5回目リハ会議で,本人に今後の復職に関する意向を確認したところ「今の状態では,工場勤務は難しいと思う」と述べた.そこで,OTから福祉的就労を提案したところ「前向きに考えたい」との意向を確認したため,就労支援を進める方針となった.6回目リハ会議で,就労継続支援B型事業所(事業所)の利用を目指して,多職種の役割を明確にした.PTによる運搬移動練習・階段昇降練習をリハ計画に追加した.CMが事業所の情報収集を行い,OTとCMが本人に同行して事業所を見学した.見学の際に,OTが作業能力を事業所担当者と協議して本人に適した事業所を検討した結果,週3回の就労開始に至った.就労時のBRSは変化を認めず,FIMは107点で更衣と洗体に介助が必要であったが,TUGは13.7秒で杖を用いて屋外歩行は自立し,FAIは14点に改善した.就労1ヵ月後の7回目リハ会議で就労の継続を確認し,OTが就労場面を見学した際には「ここで仕事の幅を広げていきたい」「満足している」との感想を述べた.
【考察】本事例における就労支援の要点は,ADLの自立度向上から就労に至るまでを段階的に移行することであった.これを実現するために,定期のリハ会議を通じて生活の変化を捉えながら,各時期の課題を明確にした上でリハ計画を的確に見直すことができた.さらに,支援方針を多職種で共有するだけではなく,本人の意向や想いに対してそれぞれの役割を明確化し,チームアプローチができたことが有益であったと考え,ひいては本人の満足感を伴う就労につながったものと考える.