[PN-8-6] 江戸浮世絵人形展の再開を目指して
MTDLPを活用し日課に着目した作業療法
【はじめに】今回,通所リハビリテーション(以下,通所リハ)の利用者に対しManagement tool for daily life paformance (以下,MTDLP)を用いて,優先度の高い作業を挙げ介入した結果,実行度・満足度・介護度・手段的日常生活動作Instrumental Activities of Daily Living(以下,IADL)に変化がみられたので以下に報告する.
【倫理的配慮】本症例には同意を取り,当院倫理委員会の承認を得ている.
【症例紹介】70代女性. 病前は,江戸浮世絵人形作りをされていた.自転車で転倒し,右脛骨内顆骨折と診断され64日入院される.その後,ご自宅にて8カ月経過の後,通所リハ開始となる.
【評価】身体機能は,右膝関節の可動域は屈曲120°,右膝の痛みはNumerical Rating Scale(以下,NRS)7であった.レッグエクステンション(ミナト医科学㈱)右下肢最大筋力:10Newton(以下,N)であった.認知機能は,意欲の指標10/10,認知症行動障害尺度0点で問題なし.日常生活動作:Activities of Daily Living(以下,ADL)は自立であった.IADLの評価法であるFrenchay Activities Index(以下,FAI)では,「買い物」「外出」「力仕事」「庭仕事」「仕事」「旅行」「読書」の項目が未実施(27/45点)であった.初回評価時「膝の痛み」の訴えが中心であったが,MTDLPを用いる事で『江戸浮世絵人形』というキーワードが本症例の語りの中核にあると評価をした. 合意目標の「江戸浮世絵人形展開催の準備」実行度4/10,満足度6/10.「歩いて買物に行くことができる」の実行度2/10,満足度4/10であった.
【介入の基本方針】現在,日課としている『散歩』の動機付けを強化することが買い物や外出さらには江戸浮世絵人形展再開に波及する可能性が高いと考え,介入することとした.また,MTDLPにて本人のニーズを明確にし,意味のある作業を担当ケアマネジャー,御家族と共有しながら関わることとした.
【経過】右膝の痛みに対し徒手的に介入すると同時に,日課である『散歩』に対してアプローチを開始した.散歩のルートをインターネット上の地図を用いて協業でマッピングし,散歩の距離やルートの選択に幅を持たせた.膝の痛みと体調に応じて選択できるというスモールステップでの成功体験が得られやすいよう設定をした.『歩ける回数と距離が増えてきた.』と散歩が習慣化してきたタイミングで買い物へ行けるようになる.介入当初より『できた』体験を励ましながら言語的に説得してきた.散歩や買い物が習慣化できた頃『江戸浮世絵人形展がまたできそう』と個展再開に向けた具体的な計画が実行できるようになった.
【結果】膝の痛みNRS7⇒0,FAI:27/45点⇒42/45点「浮世絵人形展開催の準備」実行度6/10,満足度7/10.「歩いて買物に行くことができる」実行度8/10,満足度9/10.であった. 介護度は要介護1⇒要支援1に更新され,改善がみられた.11カ月が経過し連続4時間ほどのショッピングが可能になった. 作品作りは毎日4時間程行っており8割完成.個展の場所探しやチラシ作りの活動が実施出来るようになった.
【考察】散歩が習慣化し,買い物や江戸浮世絵人形の制作を再開・継続できたことは,MTDLPを用いたことにより,生活行為の目標に向けた課題が明確化したことが大きな要因であると考える.Bandura(1977)は自己効力感の認識に影響を与える情報源として,「成功体験」「代理体験」「言語的説得」「生理的・情緒的安定」の4つを挙げている.本事例において膝の痛みの減少による生理的な安定,段階的に設定した目標の達成度を言語的に説得し,成功体験を支援した結果,自己効力感が高まり,意味のある作業の獲得に繋がったのではないかと考える.今後もMTDLPを用いて主体的な生活を目指せる作業療法を展開していきたい.
【倫理的配慮】本症例には同意を取り,当院倫理委員会の承認を得ている.
【症例紹介】70代女性. 病前は,江戸浮世絵人形作りをされていた.自転車で転倒し,右脛骨内顆骨折と診断され64日入院される.その後,ご自宅にて8カ月経過の後,通所リハ開始となる.
【評価】身体機能は,右膝関節の可動域は屈曲120°,右膝の痛みはNumerical Rating Scale(以下,NRS)7であった.レッグエクステンション(ミナト医科学㈱)右下肢最大筋力:10Newton(以下,N)であった.認知機能は,意欲の指標10/10,認知症行動障害尺度0点で問題なし.日常生活動作:Activities of Daily Living(以下,ADL)は自立であった.IADLの評価法であるFrenchay Activities Index(以下,FAI)では,「買い物」「外出」「力仕事」「庭仕事」「仕事」「旅行」「読書」の項目が未実施(27/45点)であった.初回評価時「膝の痛み」の訴えが中心であったが,MTDLPを用いる事で『江戸浮世絵人形』というキーワードが本症例の語りの中核にあると評価をした. 合意目標の「江戸浮世絵人形展開催の準備」実行度4/10,満足度6/10.「歩いて買物に行くことができる」の実行度2/10,満足度4/10であった.
【介入の基本方針】現在,日課としている『散歩』の動機付けを強化することが買い物や外出さらには江戸浮世絵人形展再開に波及する可能性が高いと考え,介入することとした.また,MTDLPにて本人のニーズを明確にし,意味のある作業を担当ケアマネジャー,御家族と共有しながら関わることとした.
【経過】右膝の痛みに対し徒手的に介入すると同時に,日課である『散歩』に対してアプローチを開始した.散歩のルートをインターネット上の地図を用いて協業でマッピングし,散歩の距離やルートの選択に幅を持たせた.膝の痛みと体調に応じて選択できるというスモールステップでの成功体験が得られやすいよう設定をした.『歩ける回数と距離が増えてきた.』と散歩が習慣化してきたタイミングで買い物へ行けるようになる.介入当初より『できた』体験を励ましながら言語的に説得してきた.散歩や買い物が習慣化できた頃『江戸浮世絵人形展がまたできそう』と個展再開に向けた具体的な計画が実行できるようになった.
【結果】膝の痛みNRS7⇒0,FAI:27/45点⇒42/45点「浮世絵人形展開催の準備」実行度6/10,満足度7/10.「歩いて買物に行くことができる」実行度8/10,満足度9/10.であった. 介護度は要介護1⇒要支援1に更新され,改善がみられた.11カ月が経過し連続4時間ほどのショッピングが可能になった. 作品作りは毎日4時間程行っており8割完成.個展の場所探しやチラシ作りの活動が実施出来るようになった.
【考察】散歩が習慣化し,買い物や江戸浮世絵人形の制作を再開・継続できたことは,MTDLPを用いたことにより,生活行為の目標に向けた課題が明確化したことが大きな要因であると考える.Bandura(1977)は自己効力感の認識に影響を与える情報源として,「成功体験」「代理体験」「言語的説得」「生理的・情緒的安定」の4つを挙げている.本事例において膝の痛みの減少による生理的な安定,段階的に設定した目標の達成度を言語的に説得し,成功体験を支援した結果,自己効力感が高まり,意味のある作業の獲得に繋がったのではないかと考える.今後もMTDLPを用いて主体的な生活を目指せる作業療法を展開していきたい.