[PN-9-1] 作業療法士が行う回想を用いた認知症予防プログラムの有用性
【目的】
本研究の目的は,地域在住高齢者を対象に回想を用いた認知症予防プログラムを実施し,その介入前後の変化を明らかにすることである.
【方法】
1.対象
対象は,A町の認知症予防教室(以下,教室)に参加する地域在住高齢者とした.対象者に研究の趣旨と内容を説明し,研究の同意が得られたものを対象とした.また,本報告はA町の個人情報保護規則に準じた倫理審査を受け承認されている.
2.回想を用いた認知症予防プログラム
A町の認知症予防教室は思い出話の会と題し,月2回,計6回実施した.回想を用いた認知症予防プログラムは,①オリエンテーション,②テーマの提示,③各回のテーマに関するグループワーク(回想),④会のまとめ,⑤次回の確認及び宿題提示の順で実施した.なお,宿題は,日々の出来事や印象に残ったことを日記形式で毎日記載し,次回の開催時に提出するよう求めた.
3.評価項目
効果判定の指標として,教室の満足度,PGCモラールスケール(前田 1979),バウムテストを調査した.PGCモラールスケールは,幸福な老いの指標として広く用いられており,モラール得点(17点満点)が高いほど主観的幸福感が高いと判断される.また,下位項目は「心理的動揺」「孤独感・不満足感」「老いに対する態度」の3因子に分類される.
バウムテスト(Koch 1945)は,対象者の内面を知るための描画検査である.為季ら(2020)の先行研究を参考とし「木の大きさ」「根の数」「枝の数」「葉の数」「実の数」を測定した.
4.分析方法
認知症予防プログラムの介入前後の各測定値の比較は,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析した.
【結果】
対象者は8名(すべて女性),平均年齢74.6±4.8歳であった.認知症予防プログラム前後の各測定値を比較した結果,教室の満足度(p = .039),PGCモラールスケール得点(p = .025),バウムテストの「木の大きさ」(p = .012),「実の数」(p = .034)に有意な改善が認められた.
【考察】
今回,地域在住高齢者を対象に回想を用いた認知症予防プログラムを実施した.思い出話を中心に回想を促した結果,教室満足度,主観的幸福感の改善効果が確認された.また,バウムテストでは,「木の大きさ」「実の数」が有意に改善したため,「社会に対する関わりの強さや将来」「実質的な目標」等の心理変化が認められたと考えた(為季 2002).介護・認知症予防に回想を用いた先行研究では,認知機能の改善(野村 2018)活動性及び対人関係の向上(赤村 2006),人生満足度を高める効果(野村 2006)が報告されている.
回想を用いた活動は,長期記憶が比較的保たれている高齢者にとって有用性が高いことが示されている.しかしながらその一方で,効果の持続性に乏しい活動であることも指摘されている(Livingston 2005).そのため本研究では宿題を出し,自宅でも教室のやり取りを想起するように促した.介護・認知症予防事業は「通いの場」としての役割が主体となり,生活習慣の改善にまでは至っていない.今後も認知症予防教室を継続し,教室参加日以外の活動促進を促す必要があると推察した.
本研究の目的は,地域在住高齢者を対象に回想を用いた認知症予防プログラムを実施し,その介入前後の変化を明らかにすることである.
【方法】
1.対象
対象は,A町の認知症予防教室(以下,教室)に参加する地域在住高齢者とした.対象者に研究の趣旨と内容を説明し,研究の同意が得られたものを対象とした.また,本報告はA町の個人情報保護規則に準じた倫理審査を受け承認されている.
2.回想を用いた認知症予防プログラム
A町の認知症予防教室は思い出話の会と題し,月2回,計6回実施した.回想を用いた認知症予防プログラムは,①オリエンテーション,②テーマの提示,③各回のテーマに関するグループワーク(回想),④会のまとめ,⑤次回の確認及び宿題提示の順で実施した.なお,宿題は,日々の出来事や印象に残ったことを日記形式で毎日記載し,次回の開催時に提出するよう求めた.
3.評価項目
効果判定の指標として,教室の満足度,PGCモラールスケール(前田 1979),バウムテストを調査した.PGCモラールスケールは,幸福な老いの指標として広く用いられており,モラール得点(17点満点)が高いほど主観的幸福感が高いと判断される.また,下位項目は「心理的動揺」「孤独感・不満足感」「老いに対する態度」の3因子に分類される.
バウムテスト(Koch 1945)は,対象者の内面を知るための描画検査である.為季ら(2020)の先行研究を参考とし「木の大きさ」「根の数」「枝の数」「葉の数」「実の数」を測定した.
4.分析方法
認知症予防プログラムの介入前後の各測定値の比較は,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析した.
【結果】
対象者は8名(すべて女性),平均年齢74.6±4.8歳であった.認知症予防プログラム前後の各測定値を比較した結果,教室の満足度(p = .039),PGCモラールスケール得点(p = .025),バウムテストの「木の大きさ」(p = .012),「実の数」(p = .034)に有意な改善が認められた.
【考察】
今回,地域在住高齢者を対象に回想を用いた認知症予防プログラムを実施した.思い出話を中心に回想を促した結果,教室満足度,主観的幸福感の改善効果が確認された.また,バウムテストでは,「木の大きさ」「実の数」が有意に改善したため,「社会に対する関わりの強さや将来」「実質的な目標」等の心理変化が認められたと考えた(為季 2002).介護・認知症予防に回想を用いた先行研究では,認知機能の改善(野村 2018)活動性及び対人関係の向上(赤村 2006),人生満足度を高める効果(野村 2006)が報告されている.
回想を用いた活動は,長期記憶が比較的保たれている高齢者にとって有用性が高いことが示されている.しかしながらその一方で,効果の持続性に乏しい活動であることも指摘されている(Livingston 2005).そのため本研究では宿題を出し,自宅でも教室のやり取りを想起するように促した.介護・認知症予防事業は「通いの場」としての役割が主体となり,生活習慣の改善にまでは至っていない.今後も認知症予防教室を継続し,教室参加日以外の活動促進を促す必要があると推察した.