[PO-1-3] 作業療法実践の予後予測に加味される要因
作業療法士が「良くなりそうだ」と思う回復期病棟のクライエントの特徴
【はじめに】
在宅復帰を目指す回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)の作業療法士(以下,OTR)にとって,科学的リーズニングに基づく予後予測は重要である.わが国においては脳血管障害患者の退院時ADLの予後予測モデル(平野ら,2015)や,家事の再開に関する予後予測モデル(小林ら,2021)などが開発されている.これらの予後予測の的中率は6~8割とされており,一定の利用価値が認められる.しかし予測精度をさらに高めるには,これまでに検討されていない因子にも目を向ける必要がある.
ところでOTRは,経験的にこの対象者は「良くなりそうだ」という予測を抱くことがある.この経験的な判断において加味される要因の中にも,これまで予後予測の因子として検討されてきたものとは異なる新たな視点が含まれている可能性があると考える.しかし,その特徴は十分に明らかになっていない.
本研究の目的は,回復期病棟のOTRが「良くなりそうだ」と思う対象者の特徴について明らかにすることである.
【方法】
『作業療法士が「良くなりそうだ」と思う回復期リハビリテーション病棟に入院する対象者とは?』というテーマでブレーンストーミングを行い,KJ法に準拠した方法で分析した.本研究において,「良くなる」の定義は,「退院後もより健康で満足できる生活を志向し行動できる」とした.ブレーンストーミングおよび分析には,8~14年目の作業療法士3名(回復期病棟の勤務経験あり)が参加した.また,質的研究に精通している作業療法士のスーパーバイズを受けて実施した.なお,本研究に倫理的配慮を要する対象者や事象は含まれていない.
【結果】
ブレーンストーミングで集まった多様な意見(データ)から,68のラベルを生成した.次にKJ法に準じたグループ編成と図解化を行った結果,良くなりそうな対象者の特徴となる6つの<概念>および,各概念の関係を示す構造図を得た.構造図のタイトルは「自分らしく退院後の生活に向かって入院生活を送っているクライエントは良くなりそう」であった.作業療法士が「良くなりそうだ」と思う対象者は,<発症前からのその人らしさがにじみ出ている>様子があり,それが<自分の現状を理解するように努めて退院後の生活に向かっている>ことと<入院生活を能動的に送っている>ことを支えていた.それらは<後遺症が残っても核となる作業を遂行できる見通しがある>ことへ繋がっていた.また,<退院後に活動的な生活を送るための下地がある>ことが<自分の現状を理解するように努めて退院後の生活に向かっている>ことへ波及し,<入院生活が過ごしやすくなるように周りに働きかけている>ことが<入院生活を能動的に送っている>ことに波及していた.
【考察】
本研究によって,作業療法士が「良くなりそうだ」と思う回復期病棟の対象者の特徴について6つの概念が得られた.これまでの予後予測の因子として挙げられているものとは異なり,クライエント自身の能動性,退院前から続くその人らしさの連続性,作業を促進する環境の存在と働きかけ等が「良くなりそうだ」と感じるポイントであると考えられる.今後は,これらの内容をどのように評価し,介入へつなげていくかを検討する必要がある.
在宅復帰を目指す回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)の作業療法士(以下,OTR)にとって,科学的リーズニングに基づく予後予測は重要である.わが国においては脳血管障害患者の退院時ADLの予後予測モデル(平野ら,2015)や,家事の再開に関する予後予測モデル(小林ら,2021)などが開発されている.これらの予後予測の的中率は6~8割とされており,一定の利用価値が認められる.しかし予測精度をさらに高めるには,これまでに検討されていない因子にも目を向ける必要がある.
ところでOTRは,経験的にこの対象者は「良くなりそうだ」という予測を抱くことがある.この経験的な判断において加味される要因の中にも,これまで予後予測の因子として検討されてきたものとは異なる新たな視点が含まれている可能性があると考える.しかし,その特徴は十分に明らかになっていない.
本研究の目的は,回復期病棟のOTRが「良くなりそうだ」と思う対象者の特徴について明らかにすることである.
【方法】
『作業療法士が「良くなりそうだ」と思う回復期リハビリテーション病棟に入院する対象者とは?』というテーマでブレーンストーミングを行い,KJ法に準拠した方法で分析した.本研究において,「良くなる」の定義は,「退院後もより健康で満足できる生活を志向し行動できる」とした.ブレーンストーミングおよび分析には,8~14年目の作業療法士3名(回復期病棟の勤務経験あり)が参加した.また,質的研究に精通している作業療法士のスーパーバイズを受けて実施した.なお,本研究に倫理的配慮を要する対象者や事象は含まれていない.
【結果】
ブレーンストーミングで集まった多様な意見(データ)から,68のラベルを生成した.次にKJ法に準じたグループ編成と図解化を行った結果,良くなりそうな対象者の特徴となる6つの<概念>および,各概念の関係を示す構造図を得た.構造図のタイトルは「自分らしく退院後の生活に向かって入院生活を送っているクライエントは良くなりそう」であった.作業療法士が「良くなりそうだ」と思う対象者は,<発症前からのその人らしさがにじみ出ている>様子があり,それが<自分の現状を理解するように努めて退院後の生活に向かっている>ことと<入院生活を能動的に送っている>ことを支えていた.それらは<後遺症が残っても核となる作業を遂行できる見通しがある>ことへ繋がっていた.また,<退院後に活動的な生活を送るための下地がある>ことが<自分の現状を理解するように努めて退院後の生活に向かっている>ことへ波及し,<入院生活が過ごしやすくなるように周りに働きかけている>ことが<入院生活を能動的に送っている>ことに波及していた.
【考察】
本研究によって,作業療法士が「良くなりそうだ」と思う回復期病棟の対象者の特徴について6つの概念が得られた.これまでの予後予測の因子として挙げられているものとは異なり,クライエント自身の能動性,退院前から続くその人らしさの連続性,作業を促進する環境の存在と働きかけ等が「良くなりそうだ」と感じるポイントであると考えられる.今後は,これらの内容をどのように評価し,介入へつなげていくかを検討する必要がある.