第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

理論

[PO-2] ポスター:理論 2

2024年11月9日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (大ホール)

[PO-2-1] 整形外科患者の作業療法におけるModified Occupational Questionnaireの使用効果

井上 由貴1,2, 吉川 二葉3, 笹田 哲4 (1.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科博士前期課程, 2.独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院 中央リハビリテーション部, 3.独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院 リハビリテーション科, 4.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)

【はじめに】
人間作業モデル(以下,MOHO)では作業質問紙(Occupational Questionnaire:以下,OQ)という1日の作業や作業の認識を報告する自己報告式評価がある.Scanlan, J. Nら(2011)はOQの修正版としてModified Occupational Questionnaire(以下,MOQ)を開発し報告している.MOQとOQとの大きな違いは,活動を仕事,勉強,家事などの14種類から項目を選び,時間は1時間毎に記入する自己報告評価である.しかし,現在のMOQは日本語として翻訳されていない.そこで,今回は諸外国の患者を担当し,MOQを使用する機会を得たのでOQとMOQの違いについて得られた知見を発表する.なお,発表に際して同意を得ている.
【事例紹介】
症例1:氏名A氏,性別:女性,年齢:60歳代,主婦.英語圏領域で育ち,仕事を契機に日本に来日.転倒し右上腕骨近位端骨折と診断され,当院にて観血的骨接合術を施行.主治医が外来通院でリハビリテーションを指導していたが,痛みが収まらず,術後2週目より上肢関節可動域を主体として作業療法を開始した.作業療法開始時と最終時にMOQを測定した.
症例2:B氏,性別:男性,年齢:50歳代,主夫.英語圏領域で育ち,妻との結婚を契機に日本に来日.右手指の伸展が困難となり当院に受診.頚椎症性筋萎縮症にて椎弓形成術を施行.術後より上肢機能改善を主体とした作業療法を開始した.作業療法開始時と最終時にMOQを測定した.
【結果】
症例1:開始時は1日の活動の構成として自分自身の世話,レジャー,何もしていない時間,休息の時間で,自分自身の世話と休息の時間が共に7時間だった.最終時は1日の構成が家事,自分自身の世話,レジャー,何もしてない時間,社交,休息の時間となり,家事が9時間を占める結果となった.
症例2:開始時は1日の活動の構成として休息,自分自身の世話,子供と遊ぶ,何もしていない時間,家事だった.特に,休息が11時間,自分自身の世話が7時間と多かった.最終時は,仕事,家事,自分自身の世話,子供と遊ぶ,何もしてない時間,休息の時間構成と変化した.特に,家事が1時間から9時間,子供と遊ぶ時間が1時間から3時間へと増加した.
【考察】
2事例のMOQの結果より,作業療法開始時点と最終時点で1日の活動の種類に変化が現れていた.また2事例ともに開始時点では自分自身の世話の時間が多く目立ったが,最終時点では減少した.MOQは活動を14種類に分類できるため,作業療法介入により対象者の1日の生活がどのように変化したかを具体的に評価することが可能であること示唆された.今後はわが国での使用に向けて日本語訳の作成や信頼性・妥当性の評価など進めていきたい.
【引用】Scanlan, Justin Newton, Anita C. Bundy:Development and validation of the modified occupational questionnaire.The American Journal of Occupational Therapy 65,2011.