[PO-3-2] 予防的作業療法のための作業バランス評価(Assessment of Occupational Balance:AOB)の開発
【背景と目的】予防的作業療法を発展させるため,コントロールや調整に焦点を当てた作業バランスの評価が必要と考えられる.作業バランスは論者によって提唱する定義が異なり,因子構造として複数の種類がある.作業バランスは生涯を通して変化し,バランスをとるためには,コントロールや調整が必要となる.しかし,これまでに様々な作業バランスの評価は存在するが,複数の因子を分析し,コントロールや調整に焦点を当てた尺度は開発されておらず,評価が困難である.本研究の目的は,複数の因子で分析する作業バランス評価(Assessment of Occupational Balance;以下,AOB)を開発することであった.
【方法】本研究は,尺度開発の国際基準であるCOSMINを参考に実施した.手順1では,試作版AOB作成するため,構成概念の操作的定義,項目プールの作成,内容的妥当性を検討した.内容的妥当性の検討はデルファイ法を実施した.手順2では,試作版AOBを用いて,医療従事者を対象にデータ収集を行い,AOBの作成のため信頼性と妥当性の検討を実施した.統計解析は,記述統計量の算出,基準関連妥当性,構造的妥当性,内的整合性,構成概念妥当性の仮説検証,信頼性の検討,カットオフ値の算出を実施した.解析ソフトは,jamovi Version 2.3.28.0,JASP version 0.18.3,RStudio Version 2023.06.1+524を使用した.なお,本研究は吉備国際大学倫理審査委員会(受理番号:22-33)の承認を得ている.
【結果】手順1では,作業バランスの定義は「複数の作業遂行や経験,結びつきが調和している状態」,各構成概念は「時間,分類,量,資源,意味,調整」となった.項目プールは204項目を作成した.内容的妥当性は計4回で終了し,38項目の試作版AOBを作成した.手順2の対象者は,318名の医療従事者であった.基準関連妥当性では,基準値に満たない項目の削除を検討した.構造的妥当性では,因子数を5(資源,時間,調整,分類,意味)と判断し,適合度指標(CFI=0.947,TLI=0.930,SRMR=0.041,RMSEA=0.082)を満たした15項目のAOBを作成した.内的整合性は基準値(α=0.903,ω=0.905)を満たした.構成概念妥当性の仮説検証では,AOBとCAOD(Classification and Assessment of Occupational Dysfunction)の間で強い正の相関(r=0.810)があり,AOBとSRS-18(Stress Response Scale)の間で中等度の相関(r=0.610)があり,AOBとBSCS-J(the Japanese translation of Brief Self-Control Scale)の間で中等度の負の相関(r=-0.471)があった.TIFは,能力スコアのピークが0付近にあり,能力の極端な低いもしくは高い部分は情報量が少なかった.IRCCCは,9項目で6段階のピークを表出できなかったが,それ以外では,反応段階の見分けが可能だった.AOBのカットオフ値は47点だった.
【考察】本研究では,医療従事者を対象に,良好な信頼性と妥当性を備えた5因子15項目からなるAOBを開発した.AOBは作業バランスを測定しており,その得点が高い場合はセルフコントロールが低下し,ストレス反応が高まり,作業機能障害に陥っている状態に関連していると考えられた.他方,AOBの得点の低さは逆の状態を反映していると考えられた.本尺度は,予防的作業療法の発展に向けて,労働者の作業バランスの理解に役立つ可能性がある.
【結論】AOBはコントロールや調整に焦点を当てた項目を備えており,複数の因子(資源,時間,調整,分類,意味)の関係性を評価することで,適切な作業バランスに向けて,対象者へ介入を実施する一指標になると考えられる.
【方法】本研究は,尺度開発の国際基準であるCOSMINを参考に実施した.手順1では,試作版AOB作成するため,構成概念の操作的定義,項目プールの作成,内容的妥当性を検討した.内容的妥当性の検討はデルファイ法を実施した.手順2では,試作版AOBを用いて,医療従事者を対象にデータ収集を行い,AOBの作成のため信頼性と妥当性の検討を実施した.統計解析は,記述統計量の算出,基準関連妥当性,構造的妥当性,内的整合性,構成概念妥当性の仮説検証,信頼性の検討,カットオフ値の算出を実施した.解析ソフトは,jamovi Version 2.3.28.0,JASP version 0.18.3,RStudio Version 2023.06.1+524を使用した.なお,本研究は吉備国際大学倫理審査委員会(受理番号:22-33)の承認を得ている.
【結果】手順1では,作業バランスの定義は「複数の作業遂行や経験,結びつきが調和している状態」,各構成概念は「時間,分類,量,資源,意味,調整」となった.項目プールは204項目を作成した.内容的妥当性は計4回で終了し,38項目の試作版AOBを作成した.手順2の対象者は,318名の医療従事者であった.基準関連妥当性では,基準値に満たない項目の削除を検討した.構造的妥当性では,因子数を5(資源,時間,調整,分類,意味)と判断し,適合度指標(CFI=0.947,TLI=0.930,SRMR=0.041,RMSEA=0.082)を満たした15項目のAOBを作成した.内的整合性は基準値(α=0.903,ω=0.905)を満たした.構成概念妥当性の仮説検証では,AOBとCAOD(Classification and Assessment of Occupational Dysfunction)の間で強い正の相関(r=0.810)があり,AOBとSRS-18(Stress Response Scale)の間で中等度の相関(r=0.610)があり,AOBとBSCS-J(the Japanese translation of Brief Self-Control Scale)の間で中等度の負の相関(r=-0.471)があった.TIFは,能力スコアのピークが0付近にあり,能力の極端な低いもしくは高い部分は情報量が少なかった.IRCCCは,9項目で6段階のピークを表出できなかったが,それ以外では,反応段階の見分けが可能だった.AOBのカットオフ値は47点だった.
【考察】本研究では,医療従事者を対象に,良好な信頼性と妥当性を備えた5因子15項目からなるAOBを開発した.AOBは作業バランスを測定しており,その得点が高い場合はセルフコントロールが低下し,ストレス反応が高まり,作業機能障害に陥っている状態に関連していると考えられた.他方,AOBの得点の低さは逆の状態を反映していると考えられた.本尺度は,予防的作業療法の発展に向けて,労働者の作業バランスの理解に役立つ可能性がある.
【結論】AOBはコントロールや調整に焦点を当てた項目を備えており,複数の因子(資源,時間,調整,分類,意味)の関係性を評価することで,適切な作業バランスに向けて,対象者へ介入を実施する一指標になると考えられる.