[PP-1-2] 急性期病院患者のSF-8の傾向
作業療法介入の手がかりを探る
【はじめに】日本作業療法士協会では作業を「人の日常生活に関わる全ての諸活動」と定義し,鈴鴨は「作業療法は"生活の質(以下QOL)"そのものを扱っているといえる」と述べている.QOL評価は患者の理解を深めることや介入の効果判定に有用であるが,急性期病院の作業療法分野での報告は少ない.当院では2022年度より健康関連QOLの評価指標としてSF-8の使用を開始した.作業療法介入時のSF-8活用の手がかりを探るため,当院患者のSF-8の傾向を明らかにする.
【目的】急性期病院患者のSF-8の傾向とSF-8と疾患,ADLとの関連を明らかにする.
【方法】2022年~2023年までに作業療法を実施した患者のうち入院から14日以内にSF-8を評価した患者57名を対象とし,疾患による差をみるため疾患別リハビリテーション料の算定区分を基準に群を分けた.そのうち,心大血管群1名,がん群3名,呼吸器群1名は3名以下のため統計対象外とし,脳血管群31名,運動器群13名,廃用群8名の52名を統計の対象とした.SF-8は身体的健康を表す身体的サマリースコア(以下PCS)と精神的健康を表す精神的サマリースコア(以下MCS)を算出した.ADL評価には機能的自立度評価表(以下FIM)を用いた.統計は,日本国民標準値との比較には1標本t検定を行い,PCS,MCSは疾患別3群間において差があるかを確認するため差の検定を行った.PCSはKruskal-Wallisの検定を行い有意差がみられたためSteel-Dwassの多重比較法で検定し,MCSは1元配置分散分析で検定した.FIMとMCS,PCSとの関係についてはSpearmanの順位相関係数を求めた.統計ソフトはRコマンダーを使用し,全ての検定の有意水準はp=0.05とした.なお本研究は当院の倫理委員会での承認を得た.
【結果】対象の属性は,女性27名,男性25名,年齢73.7歳±14.8,入院から評価までの日数7.3日±3.6,FIM82.1±25.5,FIM運動51.6±21.9,FIM認知30.4±6.3であった.SF-8(PCS/MCS)は全体(42.4±9.4/46.0±9.1),脳血管群(44.5±8.8/48.3±7.5),運動器群(37.1±9.6/44.1±10.2),廃用群(43.2±9.2/40.1±10.8)であった.日本国民標準値(70~79歳: PCS44.78±9.18/MCS50.95±6.95)との比較ではMCSは有意に低かった(p<0.01).また,日本国民標準値との比較を疾患別3群それぞれで行うとPCSは運動器群のみ低く(p<0.05),MCSは運動器群と廃用群で低かった(p<0.05).疾患別3群間における差では,PCSにおいて脳血管群より運動器群が有意に低かった(p<0.05).MCSはp≧0.05で群間に有意な差があるとはいえず,FIMとPCS,MCSの関連はすべての組み合わせでp≧0.05となり有意な相関があるとはいえなかった.
【考察】急性期病院入院中の患者は日本国民標準値と比較しMCSが低い傾向があり,疾患別では運動器群と廃用群で低い傾向がみられた.これは病気の発症による不安感が影響している可能性があると考える.また,疾患別3群間の差はPCSで脳血管群より運動器群が低かったが,FIMとPCS,MCSの相関はあるとはいえなかった.PCSは下位項目の全体的健康感,体の痛み,日常役割機能(身体),身体機能の4つと強く関連するため,運動器疾患は他の疾患に比べて体の痛みが強いこと,病前との身体機能の変化が大きいことが影響しているのではないかと考える.MCSは下位項目の社会参加機能,日常役割機能(精神),心の健康と特に関連が強い.作業療法では患者の役割や習慣に対する支援ができるため,入院早期にSF-8の評価を行いMCSに関する下位項目に着目することでQOL向上につながるのではないか.今後は対象者数を増やし下位項目についても分析し,さらに作業療法介入時のSF-8活用について検討していきたい.
【目的】急性期病院患者のSF-8の傾向とSF-8と疾患,ADLとの関連を明らかにする.
【方法】2022年~2023年までに作業療法を実施した患者のうち入院から14日以内にSF-8を評価した患者57名を対象とし,疾患による差をみるため疾患別リハビリテーション料の算定区分を基準に群を分けた.そのうち,心大血管群1名,がん群3名,呼吸器群1名は3名以下のため統計対象外とし,脳血管群31名,運動器群13名,廃用群8名の52名を統計の対象とした.SF-8は身体的健康を表す身体的サマリースコア(以下PCS)と精神的健康を表す精神的サマリースコア(以下MCS)を算出した.ADL評価には機能的自立度評価表(以下FIM)を用いた.統計は,日本国民標準値との比較には1標本t検定を行い,PCS,MCSは疾患別3群間において差があるかを確認するため差の検定を行った.PCSはKruskal-Wallisの検定を行い有意差がみられたためSteel-Dwassの多重比較法で検定し,MCSは1元配置分散分析で検定した.FIMとMCS,PCSとの関係についてはSpearmanの順位相関係数を求めた.統計ソフトはRコマンダーを使用し,全ての検定の有意水準はp=0.05とした.なお本研究は当院の倫理委員会での承認を得た.
【結果】対象の属性は,女性27名,男性25名,年齢73.7歳±14.8,入院から評価までの日数7.3日±3.6,FIM82.1±25.5,FIM運動51.6±21.9,FIM認知30.4±6.3であった.SF-8(PCS/MCS)は全体(42.4±9.4/46.0±9.1),脳血管群(44.5±8.8/48.3±7.5),運動器群(37.1±9.6/44.1±10.2),廃用群(43.2±9.2/40.1±10.8)であった.日本国民標準値(70~79歳: PCS44.78±9.18/MCS50.95±6.95)との比較ではMCSは有意に低かった(p<0.01).また,日本国民標準値との比較を疾患別3群それぞれで行うとPCSは運動器群のみ低く(p<0.05),MCSは運動器群と廃用群で低かった(p<0.05).疾患別3群間における差では,PCSにおいて脳血管群より運動器群が有意に低かった(p<0.05).MCSはp≧0.05で群間に有意な差があるとはいえず,FIMとPCS,MCSの関連はすべての組み合わせでp≧0.05となり有意な相関があるとはいえなかった.
【考察】急性期病院入院中の患者は日本国民標準値と比較しMCSが低い傾向があり,疾患別では運動器群と廃用群で低い傾向がみられた.これは病気の発症による不安感が影響している可能性があると考える.また,疾患別3群間の差はPCSで脳血管群より運動器群が低かったが,FIMとPCS,MCSの相関はあるとはいえなかった.PCSは下位項目の全体的健康感,体の痛み,日常役割機能(身体),身体機能の4つと強く関連するため,運動器疾患は他の疾患に比べて体の痛みが強いこと,病前との身体機能の変化が大きいことが影響しているのではないかと考える.MCSは下位項目の社会参加機能,日常役割機能(精神),心の健康と特に関連が強い.作業療法では患者の役割や習慣に対する支援ができるため,入院早期にSF-8の評価を行いMCSに関する下位項目に着目することでQOL向上につながるのではないか.今後は対象者数を増やし下位項目についても分析し,さらに作業療法介入時のSF-8活用について検討していきたい.