[PP-1-3] 練習方法の違い(VRと実動作)が動作学習効果および主観的評価に与える影響
ランダム化比較試験による検討
【背景】
Virtual Reality(以下VR)とはコンピュータにより作られた仮想世界をあたかも現実世界のように体験できる技術のことで,強い没入感やインタラクティブな体験が可能である.近年はVR機器を使用したリハビリテーションが着目されている.しかしVRを用いた動作学習の効果はまだ不明な点が多く,VRが対象者の主観に与える影響も明らかになっていない.そこで本研究では,健常者を対象とし練習方法の違いによる動作学習の効果とその際の主観的評価を比較し,VRによる短期的な動作学習の効果と主観に与える影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
本研究では,ルールが理解しやすいことやVR機器で使用可能なダーツのアプリがあることから運動課題にダーツ課題を用いた.研究参加について紙面にて同意を得た健常大学生14名を対象に,ダーツの実物を使用する実動作群とVR機器(Meta Quest2)を用いるVR群にランダムに割り付け,100投の練習を行った.ダーツ課題の評価では10投刺さった際の中心からの距離とそれまでのミスの回数を指標とし,練習前後で計測した.実施した練習方法について「楽しさ」「疲労感」「今回の練習を継続すると上達すると感じるか(上達への期待)」などの項目に対し,「強くそう感じる」「ややそう感じる」「どちらともいえない」「あまりそう感じない」「全くそう感じない」の5件法で回答させるアンケートを実施した.中心からの距離とミスの回数は2元配置分散分析(群要因と前後要因の2要因),アンケート結果はカイ二乗検定にて解析した.尚,本研究は所属施設の医倫理委員会の承認を得て実施された.
【結果】
ダーツの距離(mm)は,実動作群では練習前121.9±16.3,練習後118.4±14.9,VR群は練習前111.1±36.9,練習後108.0±15.2であり,練習方法および練習前後ともに有意差はなかった.ミスの回数は,実動作群は練習前3.0±2.2,練習後1.2±1.2,VR群は練習前4.0±3.3,練習後1.9±2.9であり,練習方法および練習前後ともに有意差はなかった.
アンケートの結果では,「楽しさ」の項目で実動作群では3名が強くそう感じる,4名がややそう感じる,VR群では3名が強くそう感じる,3名がややそう感じる,1名があまりそう感じないと回答し,両群に著明な差はなかった.「疲労感」の項目は実動作群では2名が強くそう感じる,1名がややそう感じる,1名がどちらともいえない,2名があまりそう感じない,1名が全くそう感じない,VR群では1名が強くそう感じる,6名がややそう感じると回答した.また,「上達への期待」の項目では,実動作群では5名が強くそう感じる,2名がややそう感じる,VR群では3名が強くそう感じる,1名がややそう感じる,1名がどちらともいえない,2名があまりそう感じないと回答し,有意ではないが「疲労感」や「上達への期待」の項目で両群に差があった.
【考察】
本研究では中心からの距離とミスの回数について,どちらの群でも練習後で成績の向上が認められた一方,実動作群とVR群など練習方法の違いによる有意差は認められなかった.このことから,VRを用いた短期的な動作学習の効果は,実動作による動作学習と同程度の効果がある可能性が示唆された.一方,アンケート調査ではVR群で疲労感を強く感じる傾向にあり,VR群では上達への期待が低くなる傾向が明らかとなった.従って,VRを用いた動作学習を行う際には,対象者の疲労感に配慮し,適宜フィードバックを行うなどモチベーションの維持に努める必要性が示唆された.今後はVRを用いた動作学習の効果や影響を与える要因についてさらに検討を行っていく.
Virtual Reality(以下VR)とはコンピュータにより作られた仮想世界をあたかも現実世界のように体験できる技術のことで,強い没入感やインタラクティブな体験が可能である.近年はVR機器を使用したリハビリテーションが着目されている.しかしVRを用いた動作学習の効果はまだ不明な点が多く,VRが対象者の主観に与える影響も明らかになっていない.そこで本研究では,健常者を対象とし練習方法の違いによる動作学習の効果とその際の主観的評価を比較し,VRによる短期的な動作学習の効果と主観に与える影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
本研究では,ルールが理解しやすいことやVR機器で使用可能なダーツのアプリがあることから運動課題にダーツ課題を用いた.研究参加について紙面にて同意を得た健常大学生14名を対象に,ダーツの実物を使用する実動作群とVR機器(Meta Quest2)を用いるVR群にランダムに割り付け,100投の練習を行った.ダーツ課題の評価では10投刺さった際の中心からの距離とそれまでのミスの回数を指標とし,練習前後で計測した.実施した練習方法について「楽しさ」「疲労感」「今回の練習を継続すると上達すると感じるか(上達への期待)」などの項目に対し,「強くそう感じる」「ややそう感じる」「どちらともいえない」「あまりそう感じない」「全くそう感じない」の5件法で回答させるアンケートを実施した.中心からの距離とミスの回数は2元配置分散分析(群要因と前後要因の2要因),アンケート結果はカイ二乗検定にて解析した.尚,本研究は所属施設の医倫理委員会の承認を得て実施された.
【結果】
ダーツの距離(mm)は,実動作群では練習前121.9±16.3,練習後118.4±14.9,VR群は練習前111.1±36.9,練習後108.0±15.2であり,練習方法および練習前後ともに有意差はなかった.ミスの回数は,実動作群は練習前3.0±2.2,練習後1.2±1.2,VR群は練習前4.0±3.3,練習後1.9±2.9であり,練習方法および練習前後ともに有意差はなかった.
アンケートの結果では,「楽しさ」の項目で実動作群では3名が強くそう感じる,4名がややそう感じる,VR群では3名が強くそう感じる,3名がややそう感じる,1名があまりそう感じないと回答し,両群に著明な差はなかった.「疲労感」の項目は実動作群では2名が強くそう感じる,1名がややそう感じる,1名がどちらともいえない,2名があまりそう感じない,1名が全くそう感じない,VR群では1名が強くそう感じる,6名がややそう感じると回答した.また,「上達への期待」の項目では,実動作群では5名が強くそう感じる,2名がややそう感じる,VR群では3名が強くそう感じる,1名がややそう感じる,1名がどちらともいえない,2名があまりそう感じないと回答し,有意ではないが「疲労感」や「上達への期待」の項目で両群に差があった.
【考察】
本研究では中心からの距離とミスの回数について,どちらの群でも練習後で成績の向上が認められた一方,実動作群とVR群など練習方法の違いによる有意差は認められなかった.このことから,VRを用いた短期的な動作学習の効果は,実動作による動作学習と同程度の効果がある可能性が示唆された.一方,アンケート調査ではVR群で疲労感を強く感じる傾向にあり,VR群では上達への期待が低くなる傾向が明らかとなった.従って,VRを用いた動作学習を行う際には,対象者の疲労感に配慮し,適宜フィードバックを行うなどモチベーションの維持に努める必要性が示唆された.今後はVRを用いた動作学習の効果や影響を与える要因についてさらに検討を行っていく.