第58回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-2] ポスター:基礎研究 2 

Sat. Nov 9, 2024 11:30 AM - 12:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PP-2-3] 成人前期の興味のある活動に関する調査

木村 夏実1, 小林 法一2, 川又 寛徳1 (1.福島県立医科大学保健科学部作業療法学科, 2.東京都立大学健康福祉学部作業療法学科)

【はじめに】作業療法の対象者の興味を探る評価法の1つにNPI興味チェックリストがある.興味チェックリストの利用においては,時代的・社会文化的影響を考慮に入れる必要があるなどの指摘があり,対象者の時代や文化に対応させた様々な改訂版が作成されている.日本では日本版高齢者版興味チェックリストが開発された.ところで,わが国は若年性認知症の有病率や成人期・壮年期における精神疾患の有病者数,30歳代の脳血管疾患の発症数などが増加傾向にある.必然的に作業療法士が成人期の対象者に関わる機会も増えてきていることから,彼らに適した独自のツールの開発が必要であると考えられる.そこで筆者らは,ターゲットを成人前期(20歳代・30歳代)として評価ツールの開発に着手し,成人前期版興味チェックツール・予備版(以下,予備版)を作成した.予備版は,作業療法士8名によるフォーカスグループインタビューならびにデルファイ法を通して成人前期向きと想定される120の活動をリスト化したものであるが,完成に向けては妥当性や有用性の検討を進める必要がある.そこで今回はまず30歳代を対象に予備版による調査を実施した.
【目的】本研究の目的は,予備版を用いて30歳代の興味のある活動に関する調査を実施し,30歳代の興味を捉えられたか検討することである.
【方法】Webアンケート(アイブリッジ株式会社:Freeasy)を使用して実施した.対象者はWebアンケート会社に登録されている30歳以上40歳未満の男女各300名の計600名とした.対象者に告知文を提示し,同意の得られた対象者に対して予備版をWebアンケート形式で実施した.予備版は,成人前期向きと想定される120項目の活動に対し,「強い興味:2点」,「少しの興味:1点」,「興味なし:0点」として採点を求めた.最後に,提示されている活動項目以外に興味を示す活動について自由記載欄に記入を求めた.各活動の興味の比率として合計可能最大得点(人数×2点)に対するその活動の総得点の割合を求めた.本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得ている(承認番号:REC2023-130).また日本作業行動学会の研究助成制度を受けて行った.
【結果】最も興味があった活動は安眠であった.興味の比率が50%以上の項目は安眠の他に,ポイ活,何もせずにのんびりする,身だしなみ,買い物,インターネットやソーシャルメディアの利用,外食・食べ歩き・カフェ巡り,お出かけ,コーヒー・紅茶・お酒などの嗜好,国内旅行・海外旅行,入浴,であった.興味の比率が10%以下の項目は俳句・短歌・川柳のみであった.男女間で大きな差(20%以上の差)が見られた項目は3つであり,女性が高いのは服装や髪型・化粧やネイルなどのファッションであり,男性が高いのはスポーツ観戦,野球・サッカー・バスケットボールなどの球技であった.自由記載欄への記入数は男性32,女性21の計53(9%)であり,内容は映画製作,特撮視聴,親孝行,投資活動,食べ放題,切手収集,香水等であった.
【考察】男女ともに最も興味があった活動は安眠であった.厚生労働省や内閣府における30歳代~50歳代の睡眠時間が短いこと,行いたい余暇の中で睡眠・休養を挙げた30歳代の割合が高いという調査結果を支持している.自由記載に記入された53項目のうち,市民活動,親孝行,住宅を調べる,婚活,カジノディーラー,食べ放題,香水,生活便利術以外の項目は予備版の項目に含まれる内容であった.また,多くの対象者が未記入であったことから,予備版の120項目は概ね30歳代の幅広い興味を捉えきれている可能性があると思われる.今後は20歳代に予備版を実施し彼らの興味を捉えているか検討する必要がある.