[PP-3-2] 非利き手のゆっくりしたフィンガータッピングの成績は前頭前野の活動とワーキングメモリ能力に関係する
【はじめに】
感覚運動同期は外部環境刺激と自己運動を同期させる能力であり,認知能力や社会的能力と関連があるとされる(A.V. Schnehen 2022, Repp 2006).本研究はフィンガータッピング(以下FT)を用いた感覚運動同期課題時の外部音のリズムやテンポの違い,音の有無がワーキングメモリ(以下WM)に関連する認知機能検査の成績と相関を示すかどうかの検討を行うことを目的とした.さらに,前頭前野(以下PFC)の酸素化ヘモグロビン濃度(以下Oxy-Hb)の変化を測定して,その際の前頭前野の活性の特徴についても検討することとした.
【方法】
本研究は倫理審査委員会の承認と参加者への十分な説明と同意を得て実施した.参加者は右利きの若年健常者15名(20.7±0.4歳)であり,一定リズムと一定リズムでない2種類のメトロノーム音を使用して,同期-継続パラダイムを用いたFTを1分間行わせた.タップは直径1センチの固定された円形のロードセル(A&D社製)の上で行わせた.同期期間ではメトロノーム音に合わせて30秒間のタッピングを行い,残りの継続期間の30秒間は音が消えた状態でタッピングを再現させた.一定リズムのFTでは,20BPMおよび120BPMの2種類のテンポで,左示指のみのタップと両手示指の同時タップの2パターンを計測した.一定リズムでないFTは両手示指の同時タップと交互タップの2パターンの動作で,1拍目と3拍目にアクセントを持つ5/8拍子のリズムのテンポ60BPMのメトロノーム音にて実施した.タップフォースのデータはA/Dコンバーター(ADinstrument社製)を介して,サンプリング周波数1kHzでPCに記録された,得られたデータからオンセット時刻でのタップ間隔とそのばらつき(標準偏差)も計算した.FT時にはPFCのOxy-Hbをヘアバンド式の2chのNIRS計測機器(アステム社製)を用いて計測した.測定箇所は国際10-20法のFp1とFp2とし,サンプリング周波数は10Hzとした.NIRS機器での測定とタップフォースの測定開始時間は同期した.さらに,N-back (2-back) taskと Trail Making Test(TMT-J)を実施し,FTのフォースとタップ間隔,Oxy-Hb変化量との相関を検討した.NIRSの増減はFT開始前の10秒間の平均値をベースラインとして,FT課題中の平均値との差を算定した.本研究での相関係数rはピアソンの相関係数とし,p値は5%未満とした.
【結果】
FTのフォースとWM検査との間で強い相関は発見できなかった.しかし,タップ間隔とOxy-Hbの変化については強い相関が発見された.一定ペースのテンポ20BPMの(左)片手のFTにおいて,継続期間中のタップ間隔のばらつきがN-back taskの成績と強い正の相関を示した(r=0.75).また,5/8 拍子の60BPMのテンポの両指同時タップのFTにおいて,同期期間のタップ間隔とと継続期間のタップ間隔の差がTMT-Bと強い正の相関を示した(r=0.84).一定ペースのテンポ20BPMでの(左)片手FTの同期期間のOxy-Hbの変化はTMT-Bの成績と強い正の相関を示した(右PFC:r=0.76, ,左PFC:r=0.74).N-backタスクの成績とも負の相関も示した(r=-0.62).つまり,この課題で前頭前野の活動が高まる人の方がWM課題の成績が低いことが示された.
【考察】
本研究の結果では,個人のWM能力の差がFT時の力よりもタップ間隔(タイミング)に反映することが示唆された.特に,ゆっくりしたペースでの非利き手のFTが有用な条件である可能性が示された.
感覚運動同期は外部環境刺激と自己運動を同期させる能力であり,認知能力や社会的能力と関連があるとされる(A.V. Schnehen 2022, Repp 2006).本研究はフィンガータッピング(以下FT)を用いた感覚運動同期課題時の外部音のリズムやテンポの違い,音の有無がワーキングメモリ(以下WM)に関連する認知機能検査の成績と相関を示すかどうかの検討を行うことを目的とした.さらに,前頭前野(以下PFC)の酸素化ヘモグロビン濃度(以下Oxy-Hb)の変化を測定して,その際の前頭前野の活性の特徴についても検討することとした.
【方法】
本研究は倫理審査委員会の承認と参加者への十分な説明と同意を得て実施した.参加者は右利きの若年健常者15名(20.7±0.4歳)であり,一定リズムと一定リズムでない2種類のメトロノーム音を使用して,同期-継続パラダイムを用いたFTを1分間行わせた.タップは直径1センチの固定された円形のロードセル(A&D社製)の上で行わせた.同期期間ではメトロノーム音に合わせて30秒間のタッピングを行い,残りの継続期間の30秒間は音が消えた状態でタッピングを再現させた.一定リズムのFTでは,20BPMおよび120BPMの2種類のテンポで,左示指のみのタップと両手示指の同時タップの2パターンを計測した.一定リズムでないFTは両手示指の同時タップと交互タップの2パターンの動作で,1拍目と3拍目にアクセントを持つ5/8拍子のリズムのテンポ60BPMのメトロノーム音にて実施した.タップフォースのデータはA/Dコンバーター(ADinstrument社製)を介して,サンプリング周波数1kHzでPCに記録された,得られたデータからオンセット時刻でのタップ間隔とそのばらつき(標準偏差)も計算した.FT時にはPFCのOxy-Hbをヘアバンド式の2chのNIRS計測機器(アステム社製)を用いて計測した.測定箇所は国際10-20法のFp1とFp2とし,サンプリング周波数は10Hzとした.NIRS機器での測定とタップフォースの測定開始時間は同期した.さらに,N-back (2-back) taskと Trail Making Test(TMT-J)を実施し,FTのフォースとタップ間隔,Oxy-Hb変化量との相関を検討した.NIRSの増減はFT開始前の10秒間の平均値をベースラインとして,FT課題中の平均値との差を算定した.本研究での相関係数rはピアソンの相関係数とし,p値は5%未満とした.
【結果】
FTのフォースとWM検査との間で強い相関は発見できなかった.しかし,タップ間隔とOxy-Hbの変化については強い相関が発見された.一定ペースのテンポ20BPMの(左)片手のFTにおいて,継続期間中のタップ間隔のばらつきがN-back taskの成績と強い正の相関を示した(r=0.75).また,5/8 拍子の60BPMのテンポの両指同時タップのFTにおいて,同期期間のタップ間隔とと継続期間のタップ間隔の差がTMT-Bと強い正の相関を示した(r=0.84).一定ペースのテンポ20BPMでの(左)片手FTの同期期間のOxy-Hbの変化はTMT-Bの成績と強い正の相関を示した(右PFC:r=0.76, ,左PFC:r=0.74).N-backタスクの成績とも負の相関も示した(r=-0.62).つまり,この課題で前頭前野の活動が高まる人の方がWM課題の成績が低いことが示された.
【考察】
本研究の結果では,個人のWM能力の差がFT時の力よりもタップ間隔(タイミング)に反映することが示唆された.特に,ゆっくりしたペースでの非利き手のFTが有用な条件である可能性が示された.