第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

基礎研究

[PP-4] ポスター:基礎研究 4 

2024年11月9日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (大ホール)

[PP-4-3] わが国の作業療法領域における混合研究法の活用と課題

スコーピングレビュー

丸山 祥1,2, 廣瀬 卓哉1 (1.湘南慶育病院 リハビリテーション部, 2.東京都立大学 大学院人間健康科学研究科)

【背景】混合研究法は,研究トピックスを理解するために量的なデータと質的なデータの両方を収集し,2つを統合し,両方のデータが持つ強みを合わせたところから解釈を導き出す研究アプローチである(Creswell, 2014).作業療法で中核的概念である作業は,複雑な現象であるために包括的な解釈が必要である.そのため,作業療法の成果をよりよく解釈し,説明し,科学的根拠を蓄積していくためには,量的・質的な側面から解釈を導く混合研究法の活用が有用であると考える.しかし,わが国の作業療法領域における混合研究法の活用状況とその課題についての整理は不足している.
【目的】本研究の目的は,わが国の作業療法領域における混合研究法の活用と課題について明らかにすることである.
【方法】研究デザインは,スコーピングレビュー(Arksey & O’Malley, 2005)を用いた.検索データベースは,医学中央雑誌,J-STAGE,CiNiiを用いた.検索語は,「作業療法」AND「混合研究」とした.検索日は2023年1月24日,文献選択の包含基準として,1)作業療法の研究である,2)研究方法に混合研究法を用いている,3)日本語または英語で書かれてた文献,4)灰色論文を含むとし,除外基準は会議録とした.データの抽出は,1)著者,2)発行年,3)研究目的,4)研究対象・サンプルサイズ,5)デザインとした.研究目的は,その記述をデータにし質的帰納的に分類した.
【結果】検索データベースでの文献レコード数は97件,重複が除外された後の文献レコード数は83件,選抜された文献レコード数は83件だった.適格性が評価された文献数は11件で,最終的に採用された文献数は8件だった.発行年別では2016年が1件,2019年が1件,2020年が1件,2021年が2件,2022年が1件,2023年が2件だった.研究対象者(重複あり)は,作業療法士を含む医療・介護スタッフは5件,作業療法学生は1件,学校教諭が1件,地域高齢者1件,健常者1件だった.研究デザインは,収斂デザインが4件,探索的順次デザインが2件,説明的順次デザインが2件だった.研究目的の分類は,介入の影響の検討が4件,評価開発が2件,現象の特性理解や方略の解明が2件だった.
【考察】本研究からわが国の作業療法領域における混合研究法の活用状況としては,最近5年で利用されるようになっていることが伺えた.また,介入の影響を示す目的で利用されているものが多い一方で,その対象は,作業療法のクライエントである地域高齢者は1件のみで,医療・介護スタッフに対するものが半数以上であった.今後は,作業療法の対象であるクライエントやその作業に焦点を当てた混合研究法の活用が課題として考えられた.