[PP-5-4] 当院集中治療室における早期リハビリテーションの報告と今後の課題
作業療法士の目線から
【背景】
近年,重症患者の早期回復・在院日数の短縮・社会復帰に向けた取り組みとして早期リハビリテーション(早期リハ)の有効性が示されている.2018年の診療報酬改定にて,Intensive Care Unit(ICU)における多職種による早期離床の取り組みに係る評価として早期離床・リハビリテーション加算が新設された.当院は,ICU入室時に疾患別リハビリテーションが担当医より処方されるまでリハビリテーション介入していなかった.2019年からICU入室患者の早期離床目的に早期リハチーム(医師,看護師,理学療法士,作業療法士,臨床工学士,栄養士)を組織化した.一方早期リハのチーム編成には作業療法士の介入報告があまりない.当院では,専属作業療法士を配置することでせん妄予防や覚醒レベルを向上させる目的でICU-Diaryを積極的に導入した.2022年度の早期リハ実施状況・課題について報告する.
【対象・方法】
2022年度に,ICUで早期リハ介入した115例を在室日数・入室から早期リハ介入までの日数・人工呼吸器装着日数・鎮静の有無・Confusion Assessment Method for the Intensive(CAM-ICU)・ICU-Diaryの有無・ Functional Status Score for the ICU(FSS-ICU)をデータ収集した.せん妄は入室時と退室時にCAM-ICUを使用し,陽性はせん妄あり,陰性はせん妄なしと診断した.ICU-Diaryは,介入者が記録簿にやり取りを残し,書字が可能な症例には自ら記録する機会を設け,そのやりとりを記載した.入室時にせん妄を認めた18例のうち,8例にICU-Diaryを導入した.鎮静の有無については,入室から早期リハ介入前までに鎮静薬を投与したかを評価した.FSS-ICUは,入退室時と転帰先別(自宅・転院・死亡)に分けて平均点数を評価した.当院独自の早期リハプロトコルをLevel 0-5(Level 0 自動介助運動中心.Level 1 受動座位20分1回まで.Level 2 受動座位20分2回まで.Level 3 介助下にて端坐位まで.Level 4 介助立位.Level 5 歩行器歩行)まで段階的に評価し実施した.
【結果】
ICU在室日数は,3-6日以内の割合が一番多く,平均7日で中央値は4日であった.早期リハ介入までの日数は,入室日開始が22例,入室後1日目が47例,2日目が29例,3日目が11例,4日目が4例,5日目が2例,8日目が1例であった.人工呼吸器の平均装着期間は7日で中央値は4日であった.鎮静群58例と無鎮静群57例を比較検討すると,鎮静群のうち10例がせん妄ありと診断,無鎮静群のうち8例がせん妄と診断された.転室時には10例のうち5例がせん妄継続,8例のうち1例がせん妄が継続している結果となった.入室時せん妄を認めた8例にはICU-Diaryが導入でき,導入後に6例は退室時にせん妄なしと判断した.FSS-ICUでは,入室時・退室時の平均点数を比較すると,平均3点から8点と向上し,転帰先別では自宅退院が5点から11点,転院が2点から7点・死亡が1点から4点の順でそれぞれの平均点が高い結果となった.
【結語】
当院の早期リハは,約8割の症例が48時間以内に導入できた.鎮静群では,せん妄が離脱されにくいと示唆された.また,ICU-Diaryはせん妄に対し一定の効果が認められた.FSS-ICUでは平均点が向上し,ADL改善を認めた.今後は更なる症例集積に努めていきたい.
近年,重症患者の早期回復・在院日数の短縮・社会復帰に向けた取り組みとして早期リハビリテーション(早期リハ)の有効性が示されている.2018年の診療報酬改定にて,Intensive Care Unit(ICU)における多職種による早期離床の取り組みに係る評価として早期離床・リハビリテーション加算が新設された.当院は,ICU入室時に疾患別リハビリテーションが担当医より処方されるまでリハビリテーション介入していなかった.2019年からICU入室患者の早期離床目的に早期リハチーム(医師,看護師,理学療法士,作業療法士,臨床工学士,栄養士)を組織化した.一方早期リハのチーム編成には作業療法士の介入報告があまりない.当院では,専属作業療法士を配置することでせん妄予防や覚醒レベルを向上させる目的でICU-Diaryを積極的に導入した.2022年度の早期リハ実施状況・課題について報告する.
【対象・方法】
2022年度に,ICUで早期リハ介入した115例を在室日数・入室から早期リハ介入までの日数・人工呼吸器装着日数・鎮静の有無・Confusion Assessment Method for the Intensive(CAM-ICU)・ICU-Diaryの有無・ Functional Status Score for the ICU(FSS-ICU)をデータ収集した.せん妄は入室時と退室時にCAM-ICUを使用し,陽性はせん妄あり,陰性はせん妄なしと診断した.ICU-Diaryは,介入者が記録簿にやり取りを残し,書字が可能な症例には自ら記録する機会を設け,そのやりとりを記載した.入室時にせん妄を認めた18例のうち,8例にICU-Diaryを導入した.鎮静の有無については,入室から早期リハ介入前までに鎮静薬を投与したかを評価した.FSS-ICUは,入退室時と転帰先別(自宅・転院・死亡)に分けて平均点数を評価した.当院独自の早期リハプロトコルをLevel 0-5(Level 0 自動介助運動中心.Level 1 受動座位20分1回まで.Level 2 受動座位20分2回まで.Level 3 介助下にて端坐位まで.Level 4 介助立位.Level 5 歩行器歩行)まで段階的に評価し実施した.
【結果】
ICU在室日数は,3-6日以内の割合が一番多く,平均7日で中央値は4日であった.早期リハ介入までの日数は,入室日開始が22例,入室後1日目が47例,2日目が29例,3日目が11例,4日目が4例,5日目が2例,8日目が1例であった.人工呼吸器の平均装着期間は7日で中央値は4日であった.鎮静群58例と無鎮静群57例を比較検討すると,鎮静群のうち10例がせん妄ありと診断,無鎮静群のうち8例がせん妄と診断された.転室時には10例のうち5例がせん妄継続,8例のうち1例がせん妄が継続している結果となった.入室時せん妄を認めた8例にはICU-Diaryが導入でき,導入後に6例は退室時にせん妄なしと判断した.FSS-ICUでは,入室時・退室時の平均点数を比較すると,平均3点から8点と向上し,転帰先別では自宅退院が5点から11点,転院が2点から7点・死亡が1点から4点の順でそれぞれの平均点が高い結果となった.
【結語】
当院の早期リハは,約8割の症例が48時間以内に導入できた.鎮静群では,せん妄が離脱されにくいと示唆された.また,ICU-Diaryはせん妄に対し一定の効果が認められた.FSS-ICUでは平均点が向上し,ADL改善を認めた.今後は更なる症例集積に努めていきたい.