第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

基礎研究

[PP-6] ポスター:基礎研究 6

2024年11月10日(日) 08:30 〜 09:30 ポスター会場 (大ホール)

[PP-6-1] リハビリスタッフが認識する介護者の介護肯定感に影響を及ぼす要因とその対応策について

島本 周治 (社会医療法人松涛会 安岡病院)

【序論】在宅生活を支援するリハビリテーションにおいて介護者の介護負担を正しく認識し,評価する必要性は高い.しかし,介護肯定感を形成することを目的とした介入の意思決定,行動について報告された先行研究は少ない.介護肯定感への介入に対する認識を明らかにすることにより,リハビリテーションの現場において介護に携わる家族への介護肯定感の形成に向けた支援の一助になることが考えられる.
【目的】本研究は,介護者の介護肯定感に関連する要因とその対応策について,リハビリスタッフの認識を把握することを目的としている.
【方法】対象は当院に所属する理学療法士(以下PT)8名,作業療法士(以下OT)4名,言語聴覚士(以下ST)3名の計15名とした.インタビューガイドを用いた半構成化面接を実施し,帰納的内容分析を行い,家族の介護負担感に関する要因とその対応策を抽出した.インタビュー内容は,ICレコーダー(Ai‐16)を用いた録音にて記録した.倫理的配慮として,当院の倫理委員会の承認を受け,対象者には書面による同意を得た.
【結果】抽出されたコードは30個,カテゴリーは要因で5個,対応策で7個であった.要因については「家族機能の成長」,「介護状況への満足感」,「介護をしていて嬉しいこと」,「介護に対する達成感」,「家族の力」,対応策については「介護方法の獲得」,「家族の自由度を増やす」,「家族に寄り添うこと」,「介護者の生活の質を担保すること」,「リハビリスタッフからの激励があること」,「家族とリハビリスタッフとの関係性を構築すること」,「一瞬でも介護を忘れる時間を作ること」が挙げられた.介護肯定感要因のカテゴリーを整理すると,①目に見える直接的な変化,②家族という2つのことに着目していることが分かった.
【考察】介護肯定感への認識は①目に見える直接的な変化,②家族の2つの視点から考察することが出来る.①について,「介護状況への満足感」,「介護をしていて嬉しいこと」,「介護に対する達成感」は介護を通じての喜びや充実感といった介護肯定感を形成する対処行動であると考える.この対処行動は介護を通じて要介護者との相互関係で築かれる介護の意味付けや,介護者自身の人生のより高い価値を見出すことに他ならない.目に見える直接的な変化を感じるためには,介護指導を通じて介護を行うペース配分を掴んでいだたくこと,家族に対する前向きな声掛け・変化点の伝達,一瞬でも介護を忘れる時間を作るといった行動が必要と考える.②について,「家族機能の成長」,「家族の力」は家族介護者の介護力を引き出し,介護を継続していくための原動力となる.家族介護者が介護を継続するために必要な介護力は問題に直面した時にすぐに発揮するものではなく,対応方法に苦労しながらも専門家へのサービスの利用,介護方法の変更などといった対処行動を取りつつ試行錯誤していくなかで要介護者への効果的なケアを実施していくことで介護に対する意味を見出し,介護を通して成長していく中で培われていくものと考える.家族機能を成長させ,家族の介護力を高めていくためには介護に対する直接的な支援のみならず家族の思いを容認する気持ちを持つこと,必要な時に必要なだけの支援が行えるようにするために家族との関係性を構築することが必要と考える.