第58回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-6] ポスター:基礎研究 6

2024年11月10日(日) 08:30 〜 09:30 ポスター会場 (大ホール)

[PP-6-3] BPSDに対する困難感尺度開発における信頼性の検証

黒川 喬介1, 久保田 智洋2 (1.帝京科学大学 医療科学部作業療法学科, 2.アール医療専門職大学 作業療法学科)

【序論】認知症は作業療法学生(以下,学生)が臨床実習で対象となりうる可能性の高い疾患である.そんな中,学生は認知症患者に対して表面的な交流に終始して双方向の関係を築くことが難しく,適切な態度をとることが叶わない場合がある.これまでの研究から認知症患者への態度がネガティブに働く要因にはBPSEが関与していると言われており,BPSDに対する画一的な対応方法はない.以上より,学生が認知症患者に対して表面的な交流に留まってしまう背景には,BPSDの対応における困難感が一因しているものと考えられる.しかし実際に学生が対応困難と考える具体的なBPSDについて明らかにしたものはなく,またこれらを測定する尺度は見当たらない.【目的】学生における認知症患者のBPSDへの対応に関する困難感を測定するために,既存の尺度を改変した調査票の信頼性を検証した.【方法】A大学もしくはB専門学校の作業療法学科に所属する学生(228名)を対象に質問紙法による集団調査を行った.調査票は,BPSDの頻度を評価する尺度である朝田らの痴呆患者の問題行動評価票(Troublesome Behavior Scale:以下,TBS)の尺度を改変した.TBSの各BPSDの項目に関して,対応を避けたいと思う程度を「そう思う:4点」「ややそう思う:3点」「あまりそう思わない:2点」「そう思わない:1点」の4段階で評価する尺度に改変し,「BPSDに対する困難感尺度(BPSD Difficulty Scale;以下,BDS)」とした.得られたデータに対して,内的整合性の指標であるCronbachのα値を算出した.また,テスト再現性(テスト・再テストを原則的に21日後に施行)として,質問項目ごとに得点の一致率とquadratic weighted kappa係数(以下,κ係数)を算出した.さらに,学校間の差の有無を確認するため,学校A(118人)と学校B(110人)の全体および各群で質問項目ごとにMann-WhitneyのU検定を行った.倫理的配慮については国際医療福祉大学研究倫理審査委員会において承認を得た(承認番号20-Ig-78).【結果】Cronbachのα係数は,0.845であり,対象者全体およびすべての群で各項目における一致率は66.7~80.3%,κ係数は0.685~0.764であった.学校間の比較をした結果,すべての質問項目で学校間に有意差はみられなかった.【考察】Cronbachのα係数の値から,今回改変した尺度にかかわる内的一貫性は保たれているものと考える.また,テスト・再テスト信頼性に関して,一致率およびκ係数ともに,値は十分な信頼性を示しているものと考える.さらに,すべての質問項目で学校間に有意差はみられなかったことから,消極的ではあるが学校間に差がないとみなせると考える.以上より,今回作業療法学生における認知症患者のBPSDへの対応に関する困難感を検討するために用いた尺度は一応の信頼性をもつものと考える.