第58回日本作業療法学会

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ポスター

基礎研究

[PP-7] ポスター:基礎研究 7

Sun. Nov 10, 2024 9:30 AM - 10:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PP-7-3] 脳卒中患者のAwarenessに対する作業療法に関するスコーピングレビュー

川田 佳央1,2, 宮本 礼子2, 丸山 祥2,3 (1.医療法人社団メドビュー 東京ちどり病院, 2.東京都立大学大学院 人間健康科学研究科, 3.湘南慶育病院 リハビリテーション部)

【はじめに】
自身の障害に対する気づきや自己認識はAwarenessと言われ,脳卒中患者の70%に障害が生じる(Hartman MA,2002).Awarenessは脳卒中患者の心身機能やADLの改善,治療への抵抗感などとの関連性が報告されており(Leung DP,2011),脳卒中患者の作業療法においてもAwarenessへの対応が必要と考えられる.しかし,本邦において,脳卒中患者のAwarenessについての評価や介入方法などは集約されていない.そこで,本邦における脳卒中患者のAwarenessに対する作業療法支援の現状と課題を明らかとすることを目的に,スコーピングレビューを実施した.
【方法】
スコーピングレビューの報告ガイドラインであるPRISMA-ScRに基づき実施した.文献検索は,2023年10月14日に実施した.検索データベースは,「医中誌Web」「CiNii Articles」を使用した.キーワードは,「(脳卒中 OR 脳血管障害)AND(作業療法)AND(Awareness OR アウェアネス OR 意識性)」とした.文献は重複を削除した後,タイトルと要旨からスクリーニングを行い,次に全文を読み適格基準と除外基準に準じて分析対象となる文献を抽出した.なお,適格基準は,対象者が脳卒中患者である日本語論文とし,総説・解説,レビュー論文,Awarenessについての記載がない論文は除外した.抽出するデータは,基本情報(発表年,国,研究デザイン等),Awarenessの評価,Awarenessへの介入方法,Awareness向上による影響とした.
【結果】
171文献が抽出され,適格基準に従い1次・2次スクリーニングを行い,最終的に19件の文献が抽出された.論文の内訳は,事例報告15件,介入研究1,観察研究3件であった.Awarenessの評価は,言動の観察7件,既存の評価5件,施設・著者の独自評価4件,半構造的面接3件,既存の評価の応用2件であった.Awarenessへの介入方法は,問題解決技法5件,課題のフィードバック4件,作業結果の外在化3件,失敗体験の経験2件,自己教示法1件,障害についての説明1件,ナラティブアプローチ1件であった.18件の文献でAwareness改善がみられ,Awareness向上による影響は,認知課題の失敗減少6件,IADLの向上5件,代償手段の受け入れ4件,社会参加への前向きな言動4件,問題解決技法の獲得3件,麻痺手の使用量増加2件,家族関係の向上1件,不安感の出現1件であった.
【考察】
Awarenessの評価は言動の観察が多く,報告によって種類が異なった.Awarenessを指す用語は著者によって異なり(岡野陽子,2021),また,その評価方法もまだ十分に研究されているとは言い難い状態にある(長野友里,2012).今後,Awarenessを指す用語や評価方法が統一されることで,対象者のAwarenessがより正確に評価され,介入研究や観察研究などの報告も増加すると考えられる.Awarenessの介入方法としてみられたナラティブアプローチ以外のものは,高次脳機能障害による病識低下への介入方法と同様である(渡邊修,2021).高次脳機能障害がない脳卒中患者への介入方法の結果の蓄積が必要である.Awareness向上による影響として,不安感の出現がみられた.認知症や統合失調症では,Awarenessが正常に近いと抑うつ傾向にあることが報告されている(牧陽子ら,2021.Mints AR et al,2003).脳卒中患者に対してAwareness向上を目的に作業療法を行う際にも,Awarenessの変化だけでなく,心理状態を把握する必要性が考えられる.また,Awarenessが心理状態に与える影響の観点から,脳卒中患者の作業療法支援において,対象者のAwarenessの状態を確認することは有用と思われる.