[PQ-1-1] 病棟専従療法士配置の効果について
ADL維持向上体制加算における病棟専従療法士を経験して
【はじめに】当院では2018年7月より1病棟(48床:消化器外科,泌尿器科,婦人科,腎臓内科,移植外科)でADL維持向上体制加算(以下ADL加算)を算定している.令和6年度の診療報酬改定において,ADL加算としては廃止となり,新たにリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算に置き換わる.今後の急性期リハビリテーションにおいて,入院患者にひろく日常生活機能の低下を未然に防ぐ取り組みが重要視されており,病棟専従療法士配置の効果が期待される.
【目的】今回,2023年1年間に当該病棟を退院した患者のうち,ADL低下の見られた要因について振り返り,病棟専従療法士配置の効果を検討する.
【介入方法】当院の取り組みは①入院時評価として,入院前情報の整理,入院時Barthel Index評価(以下BI),患者からの情報収集を行い,計画立案を行っている.②実際の介入として,入院日の環境調整と動作確認,術前介入,早期離床,廃用予防に向けた介入,本人への運動指導,③他職種連携業務として,カンファレンスへの参加,ADL状況の共有(リアルタイム,掲示板等),週末リハの提案,地域連携室との連携,④退院時業務として,退院時BI,退院先への情報提供,本人・家族への指導などがある.
【結果】2023年に当該病棟を退院したADL加算算定患者は1844人(男性986人,女性858人),平均年齢66.9歳(男性69.7歳,女性63.6歳),平均在院日数9.6日,入院時平均BI:73.8,退院時平均BI:84.8であった.そのうち,ADLが低下した患者は25人(1.36%)であった.低下の要因は,がん進行あり緩和ケアへの移行9人,ストマ増設7人,肺炎併発2人,症状悪化,他疾患による転科,病棟調整が各1人,廃用が4人であった.廃用による低下の要因は,重度の認知症により訓練協力が得られにくかった2人,不明熱による安静制限,術後の転倒によるADL低下が各1人であった.
【考察】近年,急性期病院での対象者は,重複障害,高齢者の増加・超高年齢化,認知症患者が増加しており,病態・リスク・もともとのADLの考慮など,患者の個別性に応じた介入が必須である.病棟専従療法士の配置はADL低下を未然に防ぐことが目的であり,先に述べた近年の状況に対して細かに対応可能であり,当院は算定要件であるADL低下の割合が3%未満であることをクリアした.算定病棟の特徴としてがん患者が多く,ストマ増設やがんの進行など予防が困難であったものもあるが,転倒など防げた要因もあり,今後,転倒予防を強化するともに,ADL低下の要因分析は継続していきたい.病棟専従療法士のメリットとして病棟とのコミュニケーションが効率的になったことが1番に挙げられる.実際にリハビリ場面を共有しながらの情報交換はもちろん,すれ違い様のひと声やリアルタイムで患者の状況を把握できることは,介入のタイミングや患者の変化を感じやすく,病棟スタッフからは誰に相談していいか迷うことや伝えるためのタイムロスがなくなるなど,お互いがコミュニケーションを図りやすい状況にあることで,できるADLを病棟ADLに反映させやすい環境となった.また,導入からの5年間を通して,可能なら自分たちで早期離床するという認識が広まり,病棟全体の風土が変容してきたとも感じる.今後,加算を算定する病棟の要件は緩和され,療法士の予防に対する業務が拡大する.入院時から退院時のADLを視野に短期間で実践していくことは,まさにOTの得意分野と言え病棟専従OTの活躍が期待される.
今回の発表は,当院の倫理規定に基づいている.また,開示すべきCOI関係にある企業はありません.
【目的】今回,2023年1年間に当該病棟を退院した患者のうち,ADL低下の見られた要因について振り返り,病棟専従療法士配置の効果を検討する.
【介入方法】当院の取り組みは①入院時評価として,入院前情報の整理,入院時Barthel Index評価(以下BI),患者からの情報収集を行い,計画立案を行っている.②実際の介入として,入院日の環境調整と動作確認,術前介入,早期離床,廃用予防に向けた介入,本人への運動指導,③他職種連携業務として,カンファレンスへの参加,ADL状況の共有(リアルタイム,掲示板等),週末リハの提案,地域連携室との連携,④退院時業務として,退院時BI,退院先への情報提供,本人・家族への指導などがある.
【結果】2023年に当該病棟を退院したADL加算算定患者は1844人(男性986人,女性858人),平均年齢66.9歳(男性69.7歳,女性63.6歳),平均在院日数9.6日,入院時平均BI:73.8,退院時平均BI:84.8であった.そのうち,ADLが低下した患者は25人(1.36%)であった.低下の要因は,がん進行あり緩和ケアへの移行9人,ストマ増設7人,肺炎併発2人,症状悪化,他疾患による転科,病棟調整が各1人,廃用が4人であった.廃用による低下の要因は,重度の認知症により訓練協力が得られにくかった2人,不明熱による安静制限,術後の転倒によるADL低下が各1人であった.
【考察】近年,急性期病院での対象者は,重複障害,高齢者の増加・超高年齢化,認知症患者が増加しており,病態・リスク・もともとのADLの考慮など,患者の個別性に応じた介入が必須である.病棟専従療法士の配置はADL低下を未然に防ぐことが目的であり,先に述べた近年の状況に対して細かに対応可能であり,当院は算定要件であるADL低下の割合が3%未満であることをクリアした.算定病棟の特徴としてがん患者が多く,ストマ増設やがんの進行など予防が困難であったものもあるが,転倒など防げた要因もあり,今後,転倒予防を強化するともに,ADL低下の要因分析は継続していきたい.病棟専従療法士のメリットとして病棟とのコミュニケーションが効率的になったことが1番に挙げられる.実際にリハビリ場面を共有しながらの情報交換はもちろん,すれ違い様のひと声やリアルタイムで患者の状況を把握できることは,介入のタイミングや患者の変化を感じやすく,病棟スタッフからは誰に相談していいか迷うことや伝えるためのタイムロスがなくなるなど,お互いがコミュニケーションを図りやすい状況にあることで,できるADLを病棟ADLに反映させやすい環境となった.また,導入からの5年間を通して,可能なら自分たちで早期離床するという認識が広まり,病棟全体の風土が変容してきたとも感じる.今後,加算を算定する病棟の要件は緩和され,療法士の予防に対する業務が拡大する.入院時から退院時のADLを視野に短期間で実践していくことは,まさにOTの得意分野と言え病棟専従OTの活躍が期待される.
今回の発表は,当院の倫理規定に基づいている.また,開示すべきCOI関係にある企業はありません.