[PQ-1-3] デイケアでの介護ロボット導入による生産性向上の取り組み
【はじめに】日本は少子高齢化による介護ニーズの増大と介護人材不足が喫緊の課題となっており,その解決策の一つとしてICTの活用や介護ロボットの導入などによる生産性向上の取り組みが推奨されている.今回,当院デイケアにて現場の課題抽出および解決のための研修,業務オペレーションの変更,ロボットの試用など生産性向上に取り組んだ.通所事業所での取り組みは全国的にも少なく,取り組みの結果と今後の展望について報告する.なお本報告は令和5年度介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム事業(NTTデータ経営研究所/厚生労働省)の一環として行われた.本事業においては,対象者,法人の許可を得て参画した.
【目的】
・介護の質向上に向けた介護ロボットの円滑な導入・有効な活用方法について検証する.
・介護ロボット導入による,事業所(デイケア)の生産性向上のプロセスとその効果を検証する.
【方法】
①現状の課題を明らかにするために,多職種間でのブレインストーミングを実施し事業所の課題を抽出する.
②身体的負担軽減,生産性向上の指標として装着型移乗支援ロボット:マッスルスーツEvery(以下;Every)の試用前後で業務タイムスタディ調査(厚生労働省作成)と腰痛に関するアンケート(鹿児島県介護実習・普及支援センター作成)を行う.なお,この取組みは「介護分野における生産性向上の取組の進め方」(厚生労働省)に準拠して実施した.伴走支援では地理的課題があり対面でのやりとりは限られたが,随時Zoomやメールなどを活用し情報共有を行えた.
【結果】
①当法人は,ノーリフトケアを推進しており,今回の事業を始めるにあたり実施したアンケートでは,職員の介護ロボットについてのイメージは概ね良好であった.
②ブレインストーミングではデジタルツールを活用し,匿名で意見を書き込めるよう配慮した結果多くの課題が抽出された.抽出された課題から解決の優先順位と難易度を検討した結果,身体的負担となっている腰痛についてEveryを用い課題の解決を試みた.
③Every試用前後の腰痛アンケート結果では,座位,立ち上がりやしゃがみ込み,立位姿勢において9~14%の割合で中等度以上の腰痛があったが,試用後は0%となった.一方でEveryを使うのは面倒だと感じる職員が増加した.業務タイムスタディ調査では直接業務・間接業務の働き方に変化は見られなかった.通所事業所の特徴である送迎時に使用困難,機体が大きい,業務の流れの中でスムーズに装着できないなど,装着の機動性に欠けることに職員の負担が生じ,当事業所においては生産性の向上には至らない結果となった.
【考察】今回試用したEveryについては,操作の機動性の点やフィッティングについても体格差により個別性があり,業務オペレーションがスムーズに行えなかったことが生産性向上に至らなかった要因と考える.今回の取り組みでは,職員への介護技術の指導や管理・運営方法についても学ぶ機会となった.業務効率の改善と事業所の課題を解決できる機器の選定が生産性向上には不可欠であり,質の高いケアを提供する手段の一つとして介護ロボットの選定のみでなく,業務オペレーションがスムーズにいくかの視点を持って導入することが重要である.
【展望】 今回の伴走支援事業を通し,事業所の強み・弱みを共有し,課題の抽出,ロボット導入で解決可能なことを検証していく一連の流れを知ることができた.今後ロボットの普及の為には,現場と開発者との協働が必須でありより良い機器の開発や普及活動が広がることを期待したい.
【目的】
・介護の質向上に向けた介護ロボットの円滑な導入・有効な活用方法について検証する.
・介護ロボット導入による,事業所(デイケア)の生産性向上のプロセスとその効果を検証する.
【方法】
①現状の課題を明らかにするために,多職種間でのブレインストーミングを実施し事業所の課題を抽出する.
②身体的負担軽減,生産性向上の指標として装着型移乗支援ロボット:マッスルスーツEvery(以下;Every)の試用前後で業務タイムスタディ調査(厚生労働省作成)と腰痛に関するアンケート(鹿児島県介護実習・普及支援センター作成)を行う.なお,この取組みは「介護分野における生産性向上の取組の進め方」(厚生労働省)に準拠して実施した.伴走支援では地理的課題があり対面でのやりとりは限られたが,随時Zoomやメールなどを活用し情報共有を行えた.
【結果】
①当法人は,ノーリフトケアを推進しており,今回の事業を始めるにあたり実施したアンケートでは,職員の介護ロボットについてのイメージは概ね良好であった.
②ブレインストーミングではデジタルツールを活用し,匿名で意見を書き込めるよう配慮した結果多くの課題が抽出された.抽出された課題から解決の優先順位と難易度を検討した結果,身体的負担となっている腰痛についてEveryを用い課題の解決を試みた.
③Every試用前後の腰痛アンケート結果では,座位,立ち上がりやしゃがみ込み,立位姿勢において9~14%の割合で中等度以上の腰痛があったが,試用後は0%となった.一方でEveryを使うのは面倒だと感じる職員が増加した.業務タイムスタディ調査では直接業務・間接業務の働き方に変化は見られなかった.通所事業所の特徴である送迎時に使用困難,機体が大きい,業務の流れの中でスムーズに装着できないなど,装着の機動性に欠けることに職員の負担が生じ,当事業所においては生産性の向上には至らない結果となった.
【考察】今回試用したEveryについては,操作の機動性の点やフィッティングについても体格差により個別性があり,業務オペレーションがスムーズに行えなかったことが生産性向上に至らなかった要因と考える.今回の取り組みでは,職員への介護技術の指導や管理・運営方法についても学ぶ機会となった.業務効率の改善と事業所の課題を解決できる機器の選定が生産性向上には不可欠であり,質の高いケアを提供する手段の一つとして介護ロボットの選定のみでなく,業務オペレーションがスムーズにいくかの視点を持って導入することが重要である.
【展望】 今回の伴走支援事業を通し,事業所の強み・弱みを共有し,課題の抽出,ロボット導入で解決可能なことを検証していく一連の流れを知ることができた.今後ロボットの普及の為には,現場と開発者との協働が必須でありより良い機器の開発や普及活動が広がることを期待したい.