第58回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-2] ポスター:管理運営 2 

Sat. Nov 9, 2024 12:30 PM - 1:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PQ-2-1] 業務システムへの生成AIの導入

ChatGPTの積極的活用について

大場 耕一 (総和中央病院 児童発達支援事業所 はなもも)

【はじめに】国が推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)は,多分野において不可避な存在といえる.その背景には事業運営で義務化されたCOVID-19などの新興感染症の蔓延や大規模自然災害などに対応するBCP(業務継続計画)策定が影響している.臨床業務遂行の向上には,様々なツールを活用したうえで,事務業務の効率化や生産性を高め,スタッフの意識を変えることが必要となる.デジタル技術の活用で,我々セラピストは多大な恩恵を受けている.反面,個人情報を含む情報管理の面では,厳格なルールを設定したうえで,全ユーザーが遵守していくことが必須となる.当事業所では,いくつかのツールを試用した経験を踏まえて,業務特性に対する高い親和性と作業効率性などを兼ねたビジネス・フローを構築するに至った.その概要を紹介するとともに,課題を整理したため,ここに報告する.
【事業所概要と業務課題】医療法人設立の障害福祉事業所として,主に発達障害児に対するリハビリテーションを実践している.現在OT5名,PT4名,ST5名,合計14名により,約300名の対象児への対応を行っている.児への直接的対応,保護者へのカウンセリング,通園・通学先,医療機関や行政機関等との情報共有など,業務関連の記録は多岐・膨大になる.特に到達目標や総合的な今後への指針などを集約した個別支援計画は,現状報告に留まらず,対象児の発達特性を踏まえた中・長期スパンでの将来像も想定しなければならない.経験を重ねたスタッフにあっても,かなりの業務負担となる.限られた勤務時間のなかで,業務遂行への充足感低減による心理的負担が生じることもある.そこで,従来運用してきた業務システムに,生成AIといわれるChatGPTによる情報を,積極的に活用することで,業務改善を果たすこととした.
【生成AIの業務活用】当事業所で運用している事務処理用の基幹プログラムは,データベースソフト:FileMaker(Claris International Inc.製)である.電子カルテシステムなどの専用プログラムと異なり,すべての登録内容を構築しなければならない反面,スタッフが必要とする情報や印刷様式などを,随時変更可能である利便性から採用している.情報保存は,Amazonが運営するAWS(クラウドサービス)を利用することにより,常時スタッフが情報共有可能なうえに,情報漏洩などへの保守管理への信頼性も担保されている.実際の情報入力では,既存情報同士(利用者や通園先など)を管理番号などにより紐づけすることで,新たなデータ一覧に流用することや,多項目の検索条件を設定した抽出が可能となる.反面 自動入力は未対応なため,日常業務に係る対応状況などの入力はアナログ作業となる.そこで業務負担が大きい「個別実施計画書」の作成に際して,ChatGPTを活用できるように整備した.運用にあたっては,すでに様々な分野で懸念されている情報に基づき,利用ルールをスタッフ間で十分に検討・共有した.主な留意点は1)個人情報の保護 2)情報の確認・検証 3)セキュリティ対策とした.運用により,スタッフの心理的負担の軽減に寄与させることができたが,今後も引き続き運用への監理は継続すべきと考えている.
【考察】生成AIを含むIT技術は,ChatGPTの登場により,瞬時に世界中を席巻した.こうした技術は,医療同様 日進月歩の進化を遂げていくであろう.しかし重要なのは,専門職たるユーザーの洞察・判断力は,欠かせないといった点である.「ひとが介入すべき絶対的な必然性」は,常に念頭に置くことは必須といえる.今後もこの大原則を失念することなく,臨床に活かしていくことを継続していく.