第58回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-3] ポスター:管理運営 3 

Sat. Nov 9, 2024 2:30 PM - 3:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PQ-3-1] 急性期整形外科病棟におけるミールラウンドの取り組みと今後の展望

近重 諒, 川上 恵美, 坂田 恵, 武谷 秀一, 金澤 和貴 (社会医療法人 青洲会 福岡青洲会病院)

【序論】令和4年度の人口動態計月報年計によると,誤嚥性肺炎の死亡率は,悪性新生物,心疾患,老衰,脳血管疾患に続いて5位となっている.また,肺炎を原因とした65歳以上の死亡率が96%と非常に高く,90歳以上での死亡原因第2位となっている.その為,国としても手術やがん治療における周術期等口腔機能管理が重要視され,2024年度診療報酬改定においてはリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算が新設されることとなった.
【目的】周術期における口腔ケアは誤嚥性肺炎を予防する効果が期待できる為,急性期整形外科病棟(以下当該病棟)の入院患者における誤嚥性肺炎予防に対しミールランド(以下mr)の導入を試み現状の分析を行った.実施前後においての効果を検証し,一定の効果があった為,報告する.尚,発表に際しての個人情報の取り扱いは,当院倫理委員会規定に基づき配慮を行なった.
【方法と対象】対象患者は,当該病棟に入院した全患者とし,調査期間は,mr実施前を2022年4月1日〜同年12月31日の9ヶ月間の825名(男性337名・女性488名・平均年齢69.4歳),mr実施期間を2023年4月1日〜同年12月31日の9ヶ月間の710名(男性383名・女性428名・平均年齢66.4歳)とした.mr開始前の誤嚥性肺炎患者数は,医師より診断がついた患者件数を合計し,上記期間前後での誤嚥性肺炎発生件数の推移を調査した.また,mr実施期間の取り組み件数として,必要になった支援内容について分析検証した.mr実施職員は,病棟看護師(以下Ns)と当院常勤の歯科衛生士(以下D H)・作業療法士(以下OT)にて週2回実施した.
【結果】実施前後の誤嚥性肺炎の発生件数は,4名から2名に改善された.そして,発生患者は全例とも術後患者であることが判明した.mrが必要であった延べ患者数は147名(男性48名・女性89名・平均年齢84.4歳)で手術例は113名,保存療法例は34名,mr実施回数は50回であった.そのうち多職種で支援した内容は,食事形態調整69件,義歯確認28件,食器調整8件,安静度指示や姿勢不良に伴うポジショニング調整39件であった.また,mrにて嚥下障害が疑われた症例に対しては,主治医へ報告し,言語聴覚士の介入に繋がった.そして,必要に応じて当院連携歯科医による義歯調整の往診を行った.
【考察】誤嚥性肺炎の発生件数が減少した要因は,義歯適合や食事形態の調整しながら,経口摂取の支援を多職種で実施できた結果であると考える.DHと協働でラウンドすることで,プラークコントロール不良の症例に対して口腔ケアに関連する依頼あり,動作訓練や歯ブラシの把持調整をOTが関わることで改善した症例もある.また,Nsは食事形態やポジショニングへの意識が強まり,ケアに繋がった.O Tとして,ギャッジアップ座位や利き手の受傷例においてはポジショニングや環境調整だけでは安全な摂取が困難なため,串刺しなどに形態を変更する必要があり,OTが食事摂取だけでなくプラークコントロールのため口腔ケア動作や自助具対応に早期から関わることで誤嚥性肺炎の予防に繋がったと考える.
そして,誤嚥性肺炎の発症件数は手術後の患者が多い結果となり,周術期における口腔ケアにおける術前後の安静度や疼痛等によってポジショニング調整が必要な方への食事形態の調整などの予防に取り組むことが必要であることが再認識できた.
【結語】診療報酬改定に伴うリハビリテーション・栄養・口腔との一体化が重要視される中,今回の施行を元に多職職種での経口摂取支援に加え,栄養管理も視野に入れたmrのマニュアル化を作成し,より効果的な多職種アプローチを拡充していきたい.